共に生きる
ドルアーノ王国で行われた滅竜会議
王宮から出てきたのはミカドル教国からきた三人の守り人。
『………』
教国代表のダズは頭痛でもするかのような表情
教国が殺人鬼を匿っているなどと根も葉もない疑惑をかけられ憤っていた。
『帝国の連中は嫌いだ』
隣を歩く白い法衣の青年ハォは呟く。
ダズの後ろを歩くスゥも俯いたまま。
『これからその帝国に行くのだ。気を引き締めよハォ』
『…はい』
三人はこれから帝国へ向かう。
目的は帝国内の視察と帝国の王との謁見
そして、マンイーターの調査——
『…マンイーターは何者なのでしょうか』
『それをこれから調べに行くのだ』
殺人鬼マンイーターの素性。
会議で与えられた情報をもとに調査をするが――
『…ドラグーンであるはずがない。いや、あってはならない』
ダズの歩みが早まる。一刻も早く正体を突き止めなくては。
もしも、それがあの伝説のドラグーンだとしたら――
『ハォ』
『はい、ダズ様』
ピタリと足を止めるダズ。
『ここから別行動だ。打合せ通り合流地点で待つ』
『はい』
小声で話すとダズとスゥは二人で歩き出し
ハォは反対方向に歩き出す。
その様子を物陰からうかがう黒い影があった――
コルたちの前に現れたのは白い法衣に白い髪――
「おまえ――」
「あなたはもしかして、教国の人ですか?」
ミッカとコルは教国の人間とフォウドルの村であっていた。
その時あった二人とは違う青年。
しかし、ミッカとコルの問いかけにかまわず血まみれの男に近づく。
「——紫竜の毒か」
「—!」
一目で紫竜の毒と見抜いた青年。
腰のポーチから薬品瓶を取り出すと
血まみれの男の傷口と口に薬を流しかける。
「あとは任せたぞ」
「え!?あの――」
ミッカが声をかける間もなく
青年は足早にその場を去る。
「み、見てください!」
シグが男を指さすと
さっきまで青紫に変色していた肌は元の色に戻りつつあり
出血も止まっていた。
「す、すごい…いったいどんな薬を…」
「………」
驚くミッカと、じっと様子を見ていたコル。
(…これなら助かる)
コルは二人にこの場で野宿することを提案した。
日も暮れ始めていたため男の看病をしながら
そのまま夜を迎えた――
「…う、ぅううぅ…」
「あ!気が付いたよ!」
夜鳥がなく静まり返った森の中
瀕死だった男が目を覚ました。
「…き、みは…」
「安心して!私たちはあなたの傷の手当てをしていたの。
あ、まだ起きないほうがいいわ。水は飲めますか?」
横になった男に水を含ませた布を口につける。
「ねてろ。まだ毒が残ってる」
「…あり、が…と――」
男は礼を言うと静かに目を閉じた。
呼吸も落ち着いている。
「よ、よかったあ!きっとあの人の薬が効いたんですね!」
シグもほっと一安心。
お礼をしたかったが法衣の青年はもういない。
ミッカもとてもうれしそう。
コルは駄目だと思っていたが、一息ついて――
「このまま明日の朝まで様子を見よ」
「そうね、シグ君。王都まで途中に村はないの?」
「いいえ、このあたりに人の住むような集落はなかったはずです。
地図にもこの先は王都まで一直線に森を抜けるだけですし
馬車で急いでも1日はかかります」
「い、一日掛かるんだ…」
王都につけば医者もいる。
後は明日、男の容態を見ながら向かうしかない。
ミッカとシグは眠りにつき
コルは一晩中、火の番と周囲の警戒をしていた――
翌朝――
「起き上がれんのか」
「あ、あ」
男は上体を起こせるまで回復していた。
ミッカとシグはまだすやすやと寝ている。
その様子を見た男が
「なんと、礼、したら、いいか」
「いーよ、そんなの」
本当に助けたのは教国のあいつの薬があってのことだから。
もし、あいつがあの時表れてクスリを使わなかったら――
「それ、でも、礼、いう」
「あっそ」
大あくびをするコル。
そしてミッカとシグがまだ寝ていることを確認してから
「お前さ。あの時の――」
コルの話声で目が覚めるミッカ。
「コル…?」
「おう、おはよ」
ミッカが起きると元気になった男と目が合う。
「元気になったんですね!よかったあ!」
「あり、がと、う」
満面の笑みを浮かべるミッカ。
男はぎこちない笑みでそれに答える。
「ふぁあ~…皆さん、おはようございま…あ!」
シグも起きる。
そしてミッカ同様に男の回復を喜んだ。
しかし男はまだ立って歩くには体力が戻っておらず
馬車に乗せて移動することになったのだが
「なあ」
「なあに?コル」
出発の準備をしているとコルが話しかけてきた。
「あいつが言ってたんだけどよ」
「けがをしていた男の人?」
「近くに集落があるんだとよ」
「え!?」
コルが言うにはこの先の道を行くと川があり
川に沿って少し下ったところに集落があるという。
「あいつがさ。そこまで連れて行ってほしいんだとよ」
地図にはない集落。
ミッカ達は男をそこまで送ることに決めたのであった。
竜人記伝 —過ぎ去りし記憶― ガリュー @garyu946
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