『赤』
『もうすぐ隊長たちと合流だな、色煙が近い』
空にたゆたう青の色煙
竜を捜索中の4班は合流の為、色煙の下を目指していた。
『まいったぜ、俺たちのルートときたらひときわ山道が険しいんだもんよ』
『ぼやくなよ。ほらもうすぐ到着だ』
岩場に手をかけよじ登る兵士たち。
『ほいっと、到着到着―』
顔を上げた兵士は絶句した。
鼻を衝く―異臭。
小雨の中で
不自然に燃え上がる『紅蓮』の火柱―
すでに合流していたであろう兵士たちが
燃えていた―
『…なん…な、なに…が…?』
言葉を失う4班。
『た、隊長は―』
一人の兵士が振り返ると
今さっきまで一緒に山を登っていた仲間たちは
燃えていた―
―うガァアアアアアアアア!!??—
突然の悲鳴。
今まさに黒竜の首に
大剣を振り下ろそうとした
アーバインの手が止まる。
「———」
一瞬目を疑うアーバイン。
部隊後方で銃を構えていた一人の狙撃兵が
『紅蓮』の火柱を上げて燃えていた。
空は黒く濁り
横殴りの雨を持ってしても
火の勢いは増すばかり―
その様子に周りの兵士
そしてアルメイダも釘付けだった。
「な、なんなの―!?」
さっきまで物静かだったアーバインの表情が曇る
―赤竜か―
アーバインの脳裏をよぎる最悪。
12種が一匹。名を赤竜。
火山を根城にする全身紅の竜。
吐く息は瞬く間に豊かな大地を焦土と化し
その攻撃性は12種で1、2を争う凶暴さ。
過去幾度となく人と竜の争いが繰り広げられているが
その戦の歴史を紐解くと
赤竜との戦いが大半を占めている―
「ど、どこにいやがる!?」
「くそったれ!!黒に続いて赤もかよ!?」
「固まるな!まとめて食われるぞ!!」
「いやだ、し、死にたくない―」
兵士達は混乱する。
まさかこんな事態になるなんて…!
下にいるはずの3~5班も気付けば来ていない
もう合流してもいい頃合いなのに上がってこない
今自分たちは
―竜の餌場にいるに等しい―
「落ち着きなさいよみっともない!!」
喝を入れるアルメイダ。
「死にたい方は勝手にど~ぞ?
生きたいなら顔を上げろ!気配を探れ!!死ぬ気で探れ!!
竜に滅せられるのが滅竜隊か!?違うだろ!!
私たちが竜を滅するのだ!!
勘違いをしてんじゃないわよ馬鹿どもが!!」
その一声に正気を取り戻す兵士達
瞬時に陣形を整え
迫る竜の気配に全神経を使う―!
―おかしい―
しかし、アーバインは違った。
それは違和感。
ただ一人燃える狙撃兵。
もしも赤竜が部隊めがけて火を吹いたとしたら
こんなものでは済まない―
赤竜の高火力の炎をもってすれば
一瞬でアーバインの部隊は消し炭となるだろう。
しかし燃えているのは狙撃兵ただ一人。
その一人だけ狙った?ありえない。
だが、アーバインは見抜いた。
その答えは狙撃兵の背中にあった。
轟々と燃える狙撃兵。
その背中には剣が突き刺さっていた―
すると業火の中に人影—
燃え盛る兵士から刺さった剣を雑に抜き取ると
その人物が前に出る―
「——人!?」
竜でなく、人の仕業とようやく悟ったアルメイダ。
不気味な金属音を立てながら歩く
全身紅蓮の鎧に身を包む「ソレ」に
皆の視線が釘付けになる。
片手には火炎を吹き出しながら
まるで獣の牙を並べたような刀身の
いびつな形をした紅蓮の剣。
紅鎧の人物は気怠そうに剣を肩に乗せたかと思うと
一気にアルメイダめがけて斬りかかる―!
「——な―」
片足を踏み込んでこの跳躍―
あっという間に距離を詰められるアルメイダ―!
あまりの一瞬に体の反応が付いていかない!!
雷が落ちたかのような爆音
吹き付ける身を焦がすような熱風と炎
あたりにすさまじい爆炎が舞い狂う
しかし、その炎の壁を瞬時に切り払う宝剣銀凪
アルメイダは豪快に尻餅をつく。
「さっさと立ち上がれ」
相変わらず一言冷たい隊長殿に
手の一つでも差し伸べたらどうなの?
なんて軽口を言えるほど余裕はなかったアルメイダ。
紅鎧は微動だにせず。
またそれを冷ややかに見つめるアーバイン。
「—そうか、お前が」
アーバインには心当たりがあった。
「マンイーター、というやつか―」
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