正体
新型感染症の正体の全貌が掴めるには、更に半年を要した。
その間に、国によっては感染のピークを迎えていたが、大規模な国ほど、ピークは遅れた。
この頃、日本の疾病予防管理センターとアメリカCDC、中国の衛生当局がほぼ同時期に明らかにしたところによると、ウィルスは非常に厄介な性質を持っていた。潜伏期間は平均で3–5週間、主に上下気道に感染し、気管支を中心に増殖し、肺炎を起こした。感染能は感染後平均7–10日で自覚症状が現れないことも多かった。自覚症状がなくとも、喉の違和感が多少ある程度でも、多くのウィルスを放出した。
そして、接触感染の他に、これまでSARS-CoV-2ではみられなかった飛沫核感染をした。屋内環境下では長い時間不活化されなかった。
抗体はなかなかつかず、複数回の感染で憎悪しやすいという特徴もわかってきた。
感染後の症状として最も多いのが気管支炎を含む風邪症状だったが、特になにも訴えず、急に重篤な肺炎を来す場合が極めて多かった。この場合も気管支でウィルスが増殖し、何らかの機序で免疫の暴走をもたらし、SARS-CoV-2特有の肺炎を齎すらしかった。
医療は対策に苦慮した。N95マスクでも不十分であり、既に崩壊していた医療の中で医師は絶望し、それでも医療者として決死の努力をした。
それは21世紀の医療のあり方では、到底、あるべきものではなかった。
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