爆発

 その後、日本で爆発的に感染が広がるまで数日とかからなかった。

 米国と同じように、重篤な肺炎の患者が続出した。


 まず数日で数百人が高熱と呼吸困難で救急搬送されるようになった。大半が首都圏や大都市圏に集中していたが、地方にもかなりの数の患者が続出した。患者は数日で2倍になり、10日で13倍、1ヶ月で2000倍を超えた。


 各病院の感染症病棟の設置は間に合わなかった。急ごしらえのICUはまるで野戦病院のようだった。院内感染も多発し、診療体制は崩壊していった。死者は1日1000人単位で増えていった。ベッドに載せるまもなくなくなっていく患者も多かった。


 それどころか、医療者の肺炎も多かった。初期は感染源を辿れない例がほとんどで、院内感染を疑われたが不明だった。そのうちに、崩壊していく医療の中で実際の院内感染も増えていった。


 ここにきて、日本政府や疾病予防管理センター、医療者は悟った。日本がCOVID-19からいくつもの試練から学んだ感染症対策・SARS-CoV-2対策、水際防御は全く役に立たなかったのだ。


 これをみて、アメリカ政府はロックダウンを解除した。州境の検問は継続したが、世論からの突き上げもあり、もはやロックダウンに強い効果はないと判断したからだった。


 日本の疾病予防管理センター、アメリカCDCは、ようやく病原体を突き止めていた。今までわからなかったのもさもあらん、SARS-CoV-2の亜種が主に気管支で増殖していたのだ。既存の検査では気管支まではサンプルを採らない。故に今までわからなかったのだ。死者の病理解剖と、内視鏡によるサンプル採取によって、ようやく原因が判明した。

 既存の抗体は効かず、ワクチンは無意味だった。COVID-19の後開発された特効薬も効かなかった。


米国と、日英をはじめ、主要国はこのCOVID-19の最悪のケースのときのようだ、と悪夢を思い出し、現実に慄いた。

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