第12話:だって住む世界が違うから。 side 吹雪 舞
「ねぇ、舞の新しい家行ってみたい。」
唐突にそんなことを言い出すのは私の数少ない友人、鈴本 理夏。
「え、どうしたの?急に。」
「だって〜最近の舞って講義が終わったらすーぐ帰っちゃうし〜!つまんないつまんないつまんなーい!!」
困った。駄々っ子モードに入った理夏はめんどくさくなるのだ。
(……桜君は大丈夫かな――――)
✿
「―――くしゅんっ!!」
(霊体でもくしゃみってでるのか、存外不便だな。)
✿
「ん〜明日でもいい?」
「え〜…ハッ!!まさか今家に男が……!!」
「ち、違うわよ!!ほ、ほら、家がまだダンボールとかで散らかってるからね?ちょっと掃除したくて…」
我ながら名演技だと思う。
将来役者になろうかしら。
「ふーん?まぁそこまで言うならそういうことにしておこうかな?」
あ、言い訳がバレた。
「舞はさ〜顔に出すぎなんだよね〜、まぁそこがまた可愛いんだけど…じゃあ分かった、明日でいいよ―――」
「そっか!じゃあまた明日ね!!」
「え!?あ、ちょ………えぇ……」
―――――――――帰宅―――――――――
「―――ってことがありまして……」
チラッ
(大丈夫だったかな……?)
シーン
「!?…あの、桜君?どうしたのかな?」
呆れられてるっっ!!こんな顔してるの見たことないよ……!!
「……いいんじゃない?」
え?
「だから、いいよって。ていうかわざわざ俺に許可取らなくても"友達なら"別にいつでも連れてくればいいじゃん。」
怒られてなかった!!
よかった!!
……ん?
「友達なら……?」
ビクッ
「……な、なんだよ。」
(……ふ〜ん?)ニマニマ
「友達以外はダメなんだ? 例えば〜、彼氏連れてきちゃダメってこと?」
(桜君はこういうところあるよね〜、少し揶揄っちゃおうかな〜)
ゴゴゴゴゴ……
「ヒッ!!」
(調子乗りすぎちゃった!?怒ってるよね?)
「……別に、良いけど、そうなったらほんの少し心がキリキリする。」
(か、か、可愛い〜〜〜〜〜〜〜〜!!)
(え?なに?顔真っ赤にしちゃって!キリキリする?キリキリするの!!言葉選びあざとすぎませんか!?―――)
最近、私は桜君と話してる時になるこの感情はペットに飼い主が向けてるものに似ているという認識をするようになった。
…だってほわほわするし桜君がたまに見せてくれる顔とか見るとすごく可愛いって思うし。
…………まぁ、実際ペットなんて飼ったことがないからこんなに幸せな気持ちになれるのかは知らないけど…
「な、なんだよ……」
「い、いや!?なんでもないよ!!じゃ、じゃあ明日はよろしくね?」
「うん。」
―――もしかしたらこの時、私はこの気持ちが何かを知った上で、自分を騙そうとしていたのかもしれない。
私は生きた人間。彼は地縛霊。
住む世界が違うのだから―――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます