この気持ちの名前

第10話:不思議な気持ち(モヤモヤ)

舞の過去を知ってから数日―――


最近、身体の調子がおかしい。

いや、霊体なのだから具合の悪さとかはないのだ。

なぜか心の中がモヤモヤするのだ。

それは決まって舞が誰かと電話をしたりオシャレをして出かけた時になる。


(なんだろう……気持ち悪いわけでもない、むしろ心地いい。だけど、舞が誰かと電話をして嬉しそうに笑ってると心が締め付けられるような感覚になる。)


生きている頃にはなかった新しい感覚。


(幽霊特有のものなのかな……?)


俺はそう思うことにした。


「……どうしたの?」


今日も舞は慈愛の満ちた顔で話しかけてくる。

あれからはだいぶ距離も縮まった。


「なんだか…モヤモヤするんだ。」


相談してみることにした。もしかしたら舞ならこれがなにか知ってるかもしれない。

こんなでも舞は大学で首席らしく頭もいいらしい。


「モヤモヤ?どういうこと?」


「分からない。だけど舞が誰かと話してたりオシャレして出かけたりしてるのを見ると心がモヤモヤする。」


「ふ〜ん?」


舞はニヤニヤとしながらこちらを見ていた。

腹の立つ顔だ。


「なにか知ってるのか?」


「それはね『嫉妬』って言う気持ちなんだよ。」


(嫉妬、シット、しっと……)

「嫉妬!?」


本で読んだことがある。人間の独占欲を元にした感情の一つである。


(俺は舞を独占したいと思っているのか……?)


分からない。


幼い頃に母さんが殴られているのを見て見ぬふりした時以来俺は自分の感情について一切考えないようにしてきた。


「そうだよ!嫉妬!桜君は私にヤキモチを妬いてくれてたんだね〜」



………………ないな。

俺がこんなヤツに対して独占欲なんか示すわけが無い。


「〜♪」


まぁ嬉しそうだしいいとするか。

舞が嬉しいと俺も嬉しいくなれるしな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る