第6話:根元 桜の苦悩

「何時でもしゃべりかけてくれていいからね。」


彼女はそういうが……


(喋りかけていいって言ったってなぁ……)


そう。俺は学校ではいつも教室の隅で本を読むか机に突っ伏して寝ているかのどちらかしかしていないような根っからの人見知り(コミュ障)なのである。


「な、なぁ」


「ん?どうしたの?桜君。」


「お前は――」


「舞。」


「え…?」


「せっかく自己紹介もしたんだから名前で呼んでよ。」


「……ま、舞は今まで俺みたいなのとあったことがあるのか?」


純粋に気になった。

今まで不動産屋に連れられて内見に来る人は大勢いた。

しかしどいつもこいつも事故物件だと知るとすぐに身を引くのだ。


……それなのにこいつは俺みたいな幽霊が見える特異体質にも関わらず俺の存在を受け入れて、ここに住んでいる。



「……うん。沢山見てきたよ。」


「怖くないの――」


「怖くないわけないじゃん。」


食い気味に答えたこいつの目は、酷く悲しそうな色をしていた。

それを見た俺は、何も声をかけることが出来なかった。


ただ……


なぜかは知らないが、俺はこいつに母さんの影を重ねていた。


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