贈り物



 彼女と会ってから1ヶ月が過ぎようとしていた。

 世間は少しずつ、クリスマスの色に包まれ始めている。

 偶然の出会いだったけれど彼女にも、もちろんその絵にも惹かれていた。

 だから彼女に「プレゼント」を贈りたい。俺は、いつの間にか決意していた。

 

 画材道具はやはりわからない。そういう物はその手のプロがベストな物をすでに持っているだろう。百均の筆、というのもどこの店の物なのかも聞いていなかった。

 俺はふらりと雑貨店に入ってみた。そこには古着やオブジェ、小物類など様々な物が所狭しと置かれている。アクセサリー売り場の前で、足を止めた。

 女の子が喜びそうなアクセサリーはわからない。

 あまりキラキラしていると、俺の気持ちがものすごく露呈されるようで恥ずかしい。

 そこに並ぶアクセサリーはアンティーク調で、それらは小さいのに重厚で洒落ている。

 ふと、リングを手にした。それはインフィニティ∞をデザインしたものだった。

 彼女の指のサイズなんてわからない。その前に図々しく指輪を贈ろうなんて、俺はどうかしている。

 ペンダントはどうだろうか。

 作業する時にあの黒いパーカーの上からでもつけてくれたら・・・。

 様々な物が並んでいた。

 目に止まったデザインがあった。それは馬のモチーフだった。3㎝くらいだけれど、馬のたてがみがとても繊細で流れるように美しい。


 「チェスの駒で騎士を表すシルバーのペンダントトップになります」

 突然後ろから店員さんに話しかけられた。

 

 「プレゼントですか?」 

 「はいっ、これって女の子でも・・・?」

 「ありあり、です。むしろ素敵だと思います」

 かっこいい。俺が欲しいくらいだ。

 オシャレなイケメン店員さんも勧めてくれる。


 「さり気なく贈るなら、ぴったりだと思うな」


 見抜かれたのか?!

 耳が熱くなっていくのを感じた。

 

 「チェーンでもいいですけど、革紐の方が女の子はいいかな」

 店員さんはニコニコしながら、そうアドバイスをしてくれた。


 確かに芸術家の彼女に、似合うと思う。

 クロスや羽、鍵などのモチーフもあるけれど、そこをあえて『チェス』の駒、それもナイト。

 黒のパーカーにさり気なく映えるだろう。

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