62th ENTRY.

 レナードは機兵ヴィダルディアをエネルギープラントを背にして、砂漠に降り立たせた。その姿はまさに大事なものを守る鋼鉄の騎士だった。

 もう一度敵機を撃退すること。それがレナードに与えられた任務だった。敗れた折にはアルカディアは地元ダルク共和国へ賠償を支払う。それが上が取り決めた決闘だった。もし負けた場合にはエネルギープラントはアルカディアの手に渡ることになる。

 十分な準備はしたつもりだ。しかしこちらの機体とあちらの機体では持っている性能が違うため練習にもならない。シミュレーションは100戦100勝の有様だった。


「アルカディアは引くに引けなくなっている。ここで引導を渡してやるのが優しさだ。」


 そう呟く《つぶやく》と正面を向き直した。遠方の山間やまあいから米粒ほどの影がみるみる近づいてくるのが分かった。


「性懲りもなく、やつが来た。」


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