46th At My Garage.

 早朝に寺を出た。太陽はまぶしく田園と山々を照らしている。俺は車に乗り込むと自分のガレージへと向かった。帰りの道を通るのも久しぶりだった。


山中にあるガレージに着くと車から降りて大きく背伸びをした。

「ここは空気が気持ちいい。」


二羽の鳥が木々の間を空戦している。

「さぁ。やるか。」


 そういって自分に気合をいれるとガレージに入った。真っ暗なガレージに入り、電気のスイッチをいれた。バッと光がガレージの中に満ちる。巨大な機兵が中央に立っていた。それをしばらく見上げた。いつものことのようでなにか妙に懐かしい感じがした。


 ガレージの脇から高圧洗浄用のパイプを引き出すと設定をマニュアルにセットした。稼働式の昇降台にパイプを据え付けた。昇降台に乗りこむとコンソールをよびだして操作し、機兵の顔前かおのまえまでいった。

 車ほどもある大きな顔面だ。わずかに下を向き、目は真っ黒で、まるで静かに主人の命令を待っているようだった。

 俺は昇降機を操作して頭のてっぺんまでいくと、洗浄剤を勢いよく吐き出した。泡と液体が勢いよく飛び出して機体の汚れを洗い流していく。くもっていた機体の表面がすこしずつピカピカに輝いていくのが分かった。


 よく見るとところどころに装甲の継ぎ目が見えた。左耳の後ろ辺りから首筋に向かって境目がある。同じ装甲だが、同じではない。


「後ろの装甲が古いやつだな。新しい方の装甲は前回やられた時交換したぶん。」

 そして身体全体を見ていくと、ところどころに継ぎ目があるのが見えた。左腰の後ろ側、左腕はまるっと新しくなっている。

 古い方の装甲には小さなキズや汚れが残っている。足の裏側に回ると左脚の付け根の部分には、人一人分ひとひとりぶんくらいの大きさで細かい引っかき傷のようなものがついていた。俺は洗浄パイプを向けると念入りに掃除した。細かい汚れもだいぶ取れた。それでも全部は取れなかったので、俺は昇降機をギリギリまで近づけるとブラシでゴシゴシと磨いた。


外でカラスが鳴いている。

もう日が暮れようとしていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る