41th ZEN.

俺は広間で座禅を組んで目を瞑っていた。


坊主の声が聴こえる。

「君はなぜ戦っているんだい?」


俺は答えた。

「マリア様が戦うよう仰ったからです。」

「それは嘘だね。」

坊主はすぐに言葉を返した。


俺はムッとした。

「町の人達を守るためです。」

「それも嘘だね。」

また坊主は言葉を返した。しばらくするとまるであざ笑うかのように坊主は去っていった。トン、トン、トンと坊主が遠くに歩いていく音が聞こえる。


俺ははらの底にいかりがこみ上げてくるのを感じた。


一体この坊主に俺の何が分かるというんだ。

俺はこれまで命をかけて戦い続けてきたんだ。

友をたすけ

敵をたおして

町をすくったんだ。

周りのみんなが俺をたたえ応援した。

お金も増えた。


目頭が熱くなるのを感じた。しばらくして目を開けると広いお堂はますます広く見えた。明るい陽射しが差し込んでいる。ふと壁に大きなうしの絵が掲げてあるのが目に入った。うしはこう言っているように聴こえた。


「それで


 それが




 いったいなんになる?」

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