32th At a Cafe.

地元政府の庁舎、1階のカフェのテラスでコーヒーを飲んでいた。暑い陽射しに青々とした空が広がっていた。


「エレドア。」

俺は知った姿を見つけて声をかけた。隙きのないオフィス服に女性然とした曲線と気品がある。彼女はこちらに気付くと近づいてきた。


「あら?機兵隊の英雄さんじゃない?」

茶化ちゃかすなよ。」


そういうと彼女も席についた。

「大層な活躍だったみたいね。みんな、貴方のことをヒーロー、ヒーローって言ってるわよ。」

「やめてくれ君まで。背中がかゆくなる。」

彼女はふふっと優しい笑みを浮かべた。

俺は言った。

「まさか金庫番の君がこんなところまで来るとはね。」

「そうね。私も来るとは思わなかったわ。誰かさんのお陰で大統領に会うのが早まったからよ。」


なんとなく全体がつかめてきた。

「なるほど。俺が今回、総理からの感謝状を受け取る段で、もう予算の話を突っ込むつもりか。少し性急過ぎないか。」

「まぁね。でも上はどちらにしろしなきゃいけない話だから早く進めたいみたいよ。ちょっとした恫喝の意味もあるんじゃないのかしら。」


おーこわいこわい。こいつだけは敵に回したくないな。

じっと見ているとルージュをひいた横顔にそよ風が彼女の柔らかい髪をなでた。


「なによ。なんか文句あるわけ?」

彼女はこっちを向くとふくれっつらをした。


「いやなにもないさ。頼りにしてるよ。」

そういうと彼女はニッと笑った。


「そうでしょう。頼りにしなさい。」

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