嗚呼無情
@suteneko1600
第1話wish note
《wish note》
叶えたい願いの箇条書き。
眠れない夜に何となくノートを開き、最初に書いた願い。
・純白のウエディングドレスが着たい
書いた自分にショックだった。
どうやら40を迎えた私の頭の中は、声に出したら痛々しい程まるで幼い女の子の様な夢で溢れているようだ。
こんなはずじゃなかったんだけどね。
あいつと出会わなければ。。
今から20年前、私は就職を機に東京に出てきた。いや、正しくは就職先で出会ってしまった男とよく知り合いもせずに一緒に住む事になり東京に出て来た。かな。
当時、渋谷の英会話学校で生徒を勧誘する仕事をしていた。まだブラック企業と言う呼び名が一般的ではなく、手取り13万で朝から終電まで働き、日々ノルマと闘う事を割りに合わないなーと思いながらもなんだか頑張れてしまう時代だった。
後で知ったのだが、私達は就職氷河期という世代だったらしい。専門学校を卒業する年に、実家の母が見つけた新聞折り込みの求人にその英会話学校が載っていて、何となく受けたら入社出来てしまったのだ。だから就職氷河期などとは露ほども知らず、晴れてすんなり社会人となった。
私の最初の仕事は、提携先の書店で行き交うお客に「英会話にご興味ありませんかー」とチラシを配りながら勧誘する事だった。確か1人入会させればお給料が1万円上がる。そんなシステムだったからやたらと声をかけまくっていた。たまたま立ち止まった男が、私のその後の人生を闇の色に染めるとは考えもしなかったけどね。
今思えば奴は、どう考えても英会話に興味なんて微塵も無かったと思う。
つづく
嗚呼無情 @suteneko1600
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