第26話
だが、スクリーンには解説映像は流れることはなく。
YEYAN創業者の自伝PVが流される。
スクリーン使用時には、社員は毎回これを見ることになるのだ。
「……」
謎のおっさんの人生哲学を永遠と聞かされる、会議室9人。
「……火星人さん。火星人さん」
しばらくして、退屈した魔王ペドが火星人に話しかける。
「……なんなのよ」
小声で答える火星人。
赤ワンピースを着て、タコさん帽子を被った幼女は。
タコ型星人たちを率いる首領である。
葉巻型UFOで異世界侵略に来たのだ。
「……魔王城結界からどうやって出たんです?」
火星人が、工口・ペドと敵対時に。
工口の策略によって魔王城にタコ型星人ともども、魔王城結界に封印されたのである。
「……YEYANの魔術部署のおかげなのよ。だけど救出代のローン組まされちゃって、宇宙船も借金のかたに取られちゃったのよ」
はぁ、とため息をつき、顔を下げる火星人。
そしてすぐさま、ハッと顔を上げる。
「……そうだ! あんたの城の結界のせいで借金漬けになったんだから、あんたが払いなさいよっ! これは渾然とした理屈なのよ!」
「!? それを言うなら破壊した魔王城を何とかしてくださいよっ!」
声を荒げ、言い返すペド。
「まーおうぅじょー? あのぼろぼろ魔王城で金取るって言うのよぉ? 当たり屋みたいな思考なのよ」
「あー!! コイツ、魔王城バカにしましたぁぁー!!」
ぎゃーぎゃーと喚き散らすペドと火星人。
「あーもう! 静かになさい!!」
「!?」
いつまでも騒ぎ続ける二人に対して、支店長が怒鳴る。
「す……すみません……」
「ごめんなさい……なのよ」
支店長に対して、立場の弱いペドと火星人は素直に謝った。
「ハァー……」
創業者PVを見ていた、転生者殺しがため息をついた。
「こんなお遊戯会を見せるために僕らは呼ばれたのかい? 支店長。お遊びなら僕は帰るよ。不愉快な奴もいるしね」
「!」
転生者殺しは工口を睨みつける。
転生者殺しは黒いフードを頭まで被った巨乳の女である。
その名と通り、転生者を殺して回っている。
無論、工口もそのターゲットである。
「……俺も人殺しとは同席したくないね」
睨み返す、工口。
「ちょっと、ちょっと、ちょっと!」
褐色シャーマンが二人の目線の間に入る。
「あんた達こそ、落ち着きなよ! 諍いなら他所でやっておくれよ!」
「……フン」
転生者殺しは目線を外した。
工口も目線を外しながら。
「……シャーマンさんはどうしてここにいるんです? 王国に帰ったんじゃないんですか?」
シャーマンに向かって問いかける。
褐色シャーマンは前に、人間の王国に肉体を置いた状態で、幽体離脱し。
魂のみで魔王城城下町に向かい。
工口に憑依し、洗脳し、コントロール下に置き。
魔王ペドを殺させようとしたことがあった。
「アンタが無理やり、アタシの憑依を引き剥がしたから肉体に帰れなくなっちまったのさ。証拠にホラ」
「!」
シャーマンが工口の手に己の手を重ねるが。
触れ合うこと無く、するりと通過した。
本当に霊体であるらしい。
「まーこの状態じゃ、王国に帰れないから。世界の平和と安全とやらに協力してやろうと思ってね。勇者様もそうだろ?」
「その通り」
食い気味に返答し、立ち上がる勇者。
「王国民たるもの国家と公共の福祉。即ち世界の平和が為、その身を尽くすべきである! 今回の支店長の判断も城下町のことを考えればこそだ!!」
「!? えぇ……そうね……」
引き気味に答える支店長。
「えー……こほん。でも確かに大げさな話でもないのよ。事の始まりは『処女にエロ漫画を描かせる会』からの犯行声明があったのだけど……」
「処女に……? うッ」
頭を手で押さえる、工口。
(何だ……何か思い出しそうな……)
薄ぼんやりした白い部屋の記憶が蘇るが、詳細は思い出せない。
思い出そうとすると、頭痛に打ち消されてしまう。
(処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。処女。
……工口さん、処女に異常に反応してますわね……)
ゴスロリ天国という中古のエロ漫画は、中の挿絵を開いた状態で机に置かれている。
(工口さんは、処女が好みなのでしょうか……)
そして、挿絵の中に描かれたゴスロリ少女は、物憂げな表情で工口を見ていた。
この漫画は魂を持つ。
中の絵は動き、挿絵のゴスロリ少女は物質世界に実態化する。
ゴスロリ挿絵は、自分(本)を拾った工口をとり憑き、自分だけのものにしようとしたが、あえなく失敗。
今も密かにチャンスを狙っているのである。
「それで、犯行声明には……」
説明を続ける、支店長。
「町地下の邪神イヤラを渡せ。渡さなくば、町民を皆殺しにすると……そして、この邪神というのが――」
「それは、わたしが説明するわー」
白いワンピース、白い肌、白い髪の白磁の少女が声を上げた。
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