第19話 VSゴスロリ少女・褐色シャーマン戦 精神陵辱!白熱のおっぱいバトル!!

「私。人が死ぬ物語って、読めないんですよ」



 感受性豊かな女性は、ストローをいじりながらそう告げた。

 グラスの中の氷がくるくると回る。



「ああ、だから書店で失神を」



 工口は道を跨いだ先の本屋を見た。

 工口と女性がいる喫茶店テラスからは、歩いて一分ほどの距離にある。



「だって、児童書にそんな描写があるとは思いませんもの」



 ぷぅと、頬を膨らませる女性。

 恥ずかしさを隠すように、ストローの動きを早める。



「……それで、何の用で来たんだよ」



 しばらく、氷の動きを眺めていたが。

 耐えきれなくなって、本題を切り出す工口。



「話の流れでわかりませんの? 工口さん。減点ですよ」



 かちゃりと、氷同士がぶつかった。

 回していたストローの動きを止める女性。



「洞窟での話か? でもあれは――」



 向けられたストローで発言は遮られた。

 白いテーブルに水滴が垂れる。



「人殺し」



 垂れた水滴が意思を持ったように、テーブル上を伝い始め。

 何か模様を描き始める。



「人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。」

「!?」



 壊れたステレオのように、同じ言葉を吐き続ける女性。

 工口は慌てて、席を立つ。



「贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。贖罪しろ。」



 工口は後ろを振り向く事なく、席を後にする。

 テーブルの水滴は円形の魔方陣を描いていた。



「……」



 下を向いて、ひたすら歩き続ける。

 心境的には走って逃げたい気分だが、何故か体がそうさせてくれなかった。

 右。左。右。左。

 石畳の漆喰の線を目で追う。



「……」



 まるで、単調な迷路に迷い込んでしまったようだった。

 離れても声のボリュームは落ちる事はなく。

 それでいて、向き合って話した人の顔が思い出せなかった。



「……」



 漆喰の迷路を通り過ぎ。

 ジャリジャリとした、土と石の擦れる音を感じた時。

 工口は右手に軽い重みを感じた。



「ゴスロリ天国……」



 古書店で購入した、厚めのエロ漫画だった。

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