第18話

伝授を終えると共に、走り出すペド。



「……!」



 ペドは工口に第二秘術を授けると直ぐに、全力でその場を離れなければならなかった。

 伝授の工程をいくら密かにやったとしても、ペドの手から工口の頭に能力が移る瞬間。

 暖かな光を放つからである。

 それは、この洞窟内ではあまりにも目立ち過ぎた。



「何やってるんですかぁ?」



 白磁の少女がそれを見逃すはずはない。

 邪神復活の詠唱に集中したいとは言え。

 奇怪過ぎるペドの行動を無視するわけにもいかない。



「ふぇぇっ!! ぴぎゃぁぁ!!」



 戦うことのできないペドは逃げるしかない。



「はぁ……。詠唱の邪魔は――」

「ステータス・フラッシュ!!」



 工口はステータスを表示し、その明かりで突然周りを照らす。



「……はい?」



 工口の謎の行動。

 少女との距離が遠すぎて、フラッシュバンの目潰しにもなっていない。

 ステータス・フラッシュの無駄打ち。



(だが、これでいい! 目を引かせられれば……。俺と白磁の少女の距離は、おおよそ10m。ペドには11m走らせないと……)



「……」



 だが、白磁の少女の意識を引けたのは、せいぜい半分強の距離。

 残りは5m。



(口に出さずとも、邪神子を仕向けられるのは先ほどの戦いで分かっている。ペドに敵意を向けられたらお終いだ!)



 工口は指を構え。



(乳頭クリクリ……ッ!!)

「つっ……///」



 追加で乳頭クリクリを繰り出す工口。

 乳首への突然の刺激で、一瞬意識が奪われる白磁の少女。

 残り2m。



「ぴぎゃぁあ!!」

「……」



 しかし、連続して自身に奇妙な出来事が起こるわけである。

 白磁の少女は、隠れた意図を疑いだす。

 その場合、目星となるのは現在進行で変な事をしているペドである。

 白磁の少女の意識が敵意に変わる1コンマ。



「ウォーターゲームッ!!」

「!?」



 工口は隠し玉を用意していた。



(遊技場で、『ボタンを押して水中の中の輪っかを棒に入れるゲーム』の事を、『ウォーターゲーム』だと白磁の少女は言っていた。その名称を知っている人間は少ない……。何故かは分からないが、重要なキーワードであるはずだ……!)



 0m。



「工口さんっ!!」



 11m走ったペドが叫ぶ。



「え……?」



 白磁の少女は状況が飲み込めていない。



(頭の中に湧いてきたメッセージによると、もっとも近い人間に発動する……。ターゲットは性的対象者……!)

「スケベ第二秘術発動!! ……!?」



 秘術を唱えると、工口の肉体は強力な引力で上に引っ張られる。



「ジャシンッ!?」



 驚いたのは工口を取り押える、邪神子たちである。

 棺の上で山盛りご飯のように、工口を押さえ込んでいた邪神子の塊は。

 今にも爆発しそうな勢いで膨れ上がっていた。



「なっ……なにが起こっているの!?」



 気が気じゃないのは、邪神復活の儀を執り行っていた白磁の少女である。



(工口さん……っ!)



 ペドはその隙を突いて、円形広場の入り口まで逃げ切った。

 そのタイミングで邪神子の塊が爆発する。



「!?」

「な……///」



 そこからは素早かった。

 飛び上がった工口の肉体は、最短距離でターゲットに向かう。

 対象者がもっとも隠したい秘部――

 白磁の少女のワンピースの中である。



「いやぁぁーー!! 児童性愛者ぁぁー!!」

「モゴ! モゴゴ!!」



 工口はワンピースの中に頭から突っ込んだ。

 白磁の少女はジタバタ暴れている。



(これぞスケベ第二秘術。HHハプニングの術!!)



 HH(えちえち)ハプニングの術とは。

 その名の通り。偶然に起こるアクシデントによって、ムフフなことになる技である。

 ターゲットは一番距離の短い性的対象者――つまり、近くの女性となる。



「異空のっ、神々の、召喚はぁっ/// 途中で、中断するとぉぉ/// コントろぉるがぁあ/// だからぁ! 股で息するのをやめてぇっ///」

「ムフー、ムフー」



 白磁の少女は履いていないし、生えていなかった。



(もう一度、HHハプニングの術を発動させ、次に近い女性のペドの所まで跳ぶ……これぞ、女体八艘飛び!!)

「ワンモア! HHハプニングっ!!」

「あんっ///」



 工口は、またエロ引力に引かれ、ワンピースの中から飛び出す。



(着地点になるペドには申し訳ないが、計画通りこのまま脱出を……っ!?)



 しかし、完全に予測外のことが起こる。



「!?」

「……!」



 工口が飛び込んだ先は、ペドの平たい胸の上ではなく――

 転生者殺しの豊満な胸の上だった。



「お……女っ!?」

「……」



むにゅむにゅう

 勢いで、転生者殺しのおっぱいを揉む工口。

 工口は驚いたリアクションをしているが、これはオーバーな嘘である。



(先の時に、転生者殺しに乳頭クリクリを放った時に、乳首の感触から女ではないかと確かに疑念は持った)



 慌てて、手を離す工口。



(だが、本当に女だったとは!?)

「何を、しているんだ?」



 ナイフを構える、転生者殺し。



「ぼぼぼぼぼぼぼぼ!! すいませぇぇんっっ!?!?」



 だが、工口の童貞特有の発作の方が早かった。

 転生者殺しのムチムチボインから、反射的に慌てて逃げ出す。

 しかし――



(ハッ! えちハプを発動し遅れたっ!!)



 童貞特有の発作によって、判断が遅れる工口。



(詰め寄るには十分な隙を与えたな……)



 隙を作った工口に瞬時に追いつく、転生者殺し。

 移動には音も鳴らさず、喉笛に刃物を近づける。



「……! 乳頭クリクリッ!!」

「!?」



 工口の右手の乳頭クリクリで一瞬、動きが遅れる転生者殺し。

 そして、左手の乳頭クリクリは――



「オオオオ!! 私に工口を殺させろぉおッッ!!!!」

「!?」



 絶叫する勇者。

 左手の乳頭クリクリは勇者の乳首を刺激していた。

 ショッピングカートから飛び起きる。



(後は頼んだ! 勇者さん!!)



 密かに勇者の横を通り過ぎる工口。



「誰なんだ、お前はァァァァァァァァ!!」

「貴方こそ誰なんだ!!」



 わちゃわちゃする、勇者と転生者殺し。



(HHハプニングっ!)



 その隙に、転生者殺しと距離を置き。

 秘術を発動する工口。



「工口さんっ!! ……あぐっ///」



 エロ引力でペドの股ぐらまで吹っ飛び。

 股に顔をつけたまま、ダッシュで逃げる工口。



「モガモガ……今は逃げるぞペド!」



 工口はペドに逆肩車した体勢である。



「ぐうぅ……/// 息しないで……/// こっ工口さん! 邪神はそれでどうなったんです!?」

「あれは……保留」

「え」



 工口は走りながら答える。



「あれは、見なかった事にしよう……」

「えぇ……」



 工口とペドは肩車のまま、洞窟の外へ走り去った。




                 第三部   VS転生者殺し戦 おわり。




*************************************

主人公・工口 現在習得済みの技



『乳頭クリクリ』

遠距離技。遠くから乳首を弄れる。イク寸前で止め、一気に放出で失神可能。


『ステータス・フラッシュ』

近距離技。突然ステータスを表示し、相手を驚かせる。暗所だと威力アップ。


『フィンガー・デード・W・ディギトゥス』

近距離技。クリクリと同時に直接乳首を弄る。16倍のエネルギーがあるという。


NEW『HHハプニング』

移動技。エロ引力で近くの性的対象者に突っ込む。別名ラッキースケベ。


NEW『女体八艘飛び』

移動技。HHハプニングを繰り返し使用し、性的対象者を跳び歩き高速移動する。


NEW『童貞特有の発作』

持病。ムチムチボインから反射で退避する。一定時間、思考・コントロール不可。

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