第16話

「……!」



 黒いフード・黒いコートで全身を隠した、転生者殺しは。

 瞬時に移動し、三人目の殺害に取り掛かる。



「やめ……っ!」



 白磁の少女が行動に気づくが、その距離では間に合わない。

 転生者殺しはナイフを構え。

 躊躇なく、振り下ろす。



「!?」



 しかし、ナイフはターゲットの顔を掠めるに終わった。



(俺の眼の前で、人殺しはさせるかよ……)



 工口は転生者殺しに乳頭クリクリを放ち、ナイフの軌道を逸らさせた。

 邪神子かたまりの中。

 一発逆転のために、右手の空間は残しておいたのである。



「……」



 自身の失態が信じられず、周りの様子を伺う転生者殺し。

 邪神子塊の中の工口の技だとは、夢にも思っていない。



「……ふーん。わたしの大切なバッテリーたちを壊していた、連続殺人犯……。あなたが転生者殺しなんだぁ……」



 白磁の少女が、邪神子二人を仕えさせ転生者殺しに近づく。



「……現実逃避者が、報われることがあってはいけないよ。それは現代人に対する侮辱なんだ」



 右手にナイフを構える、転生者殺し。



「……」

「……」



 二人は祭壇を中心に向かい合った。



「…………行って」



 先に仕掛けたのは、白磁の少女だった。

 邪神子二人が右と左から、転生者殺しを挟撃する。

 意識は、構えられた右手のナイフに集中する。



「……っ」



 が、それは仕掛けられたブラフである。

 本命の隠した左……。

 人差し指と中指、中指と薬指の間。

 指と指のに挟まれる。

 二本のスペツナズ・ナイフが牙を剥いた。



「ジャ……!?」

「ジャシ……ッ!?」



 柄に内蔵されたスプリングが刀身を射出し。

 邪神子、それぞれの喉元に突き刺さる。



「!」



 そして、倒れ行く邪神子の死体は。

 白磁の少女への直接的な殺意のカムフラージュとなった。

 今度の殺陣では。

 右手に構えたナイフが本命となる。



「ジャヒッヒッ……」

「!?」



 しかし、白磁の少女も戦いの才が無いわけではない。

 自分の体を三人目の邪神子に守らせた。

 転生者殺しの右手のナイフは、三人目に突き刺さる。



「……っ」



 バックステップで元の位置に戻る、転生者殺し。

 最初に周りにいた邪神子二人は、白磁の少女が仕掛けたブラフで。

 少女にとっても、三つ目が本命であった。



「……」

「……」



 また、膠着状態に戻る二人。



「……」

「……」



 無限とも思える時間が過ぎる。



「……」

「……」

「!」



 この緊張の終える瞬間を一番先に確信したのは工口だった。

 邪神子に囲まれた隙間から、見覚えのある光景に気づく。



(あれは……っ!)



 空間が中心に向かって渦を巻く現象。

 収縮する黄色い球が見える現象。



「!?」



 ターゲットにされた転生者殺しがその場から退く。

 だが、一歩遅く。

 火炎魔法は確実に――



「ファイヤラッ!」



 転生者殺しを爆炎で包み込んだ。



「グッ……!」



 工口と戦った、くそエロ魔法使いほどの威力でないとは言え。

 転生者殺しが、直撃を回避したとは言え。

 大ダメージであることには間違いない。



「……!」



 もちろん、この好機を逃す白磁の少女ではない。

 直ぐにでも邪神子でトドメを刺したい所だが――



(あはは。ラッキーかもっ♪)



 他に優先ターゲットが見つかれば話は別である。



「フッ……」

「……死ぬぞ」



 転生者BARで殺されたはずの。

 パコパコ慢太郎とイキリーマン死ぞ江が立っていた。

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