第6話

 崩れ落ちる瞬間、勇者はナイフに映る自身の死に顔を見た。

 そんな自分を見て驚愕する二人の仲間も。



「勇者様ぁ!」

「嘘っ、何で……」



 動揺する、魔法使いと女盗賊。

 工口は人差し指から親指を離し、ナイフを二人に向ける。



「今のタイミングでも殺せた」

「!」

「だが、殺さない。今回の件は魔王軍からの警告と受け取ってもらっていい。我が主は寛大だ」



 目配せする工口。



「え」



 一通りわたわたした後、無い胸を張るペド。



「ふんす。」

「……」



 思わず、ジト目になる工口。



「……だったら」



 魔法使いが口を挟む。



「勇者様の遺体だけでも返してもらえませんか……」



 凛とした表情は既になく、すがるような悲痛な表情だった。



「う……」



 その姿に、本能的な同情をする工口。

 頭の中で彼女を説得する言葉を選ぶ。



「だめです」



 しかし、ペドが一呼吸早く口を開いた。



「あなたの王国には復活の秘術がありますよね。低確率とは聞きますが。しかし、万に一つでもあるなら渡せません」

「違います!」



 魔法使いが訴える。



「王国は関係ないんです……私の個人的な……」



 息を呑み。



「お願い……」



 言葉を選び、搾り出しながら懇願する。



「うあッぁ!?」



 その時、女盗賊が声を上げた。



「ならば、ご友人の臓を潰してやろうかな」



 工口は心臓の近くに圧力をかける。



「くぅぅ……っ。ナトレッ! 諦めてっ!」



 女盗賊が叫ぶ。



「だめ……諦め――」



ゴッ

 女盗賊は、魔法使いのこめかみをタガーの柄でど突いた。



「あたしが死ぬって言ってんでしょうが!」

「あがッ……」



 勇者に伸ばした手は、虚空だけを掴んで地面に叩きつけられ。

 魔法使いは失神した。

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