第2話
「あくまで現代に持ち帰る学術的意味合いだからな!」
工口は3回は同じことを言っている。
「いいからしゃがんで頭を下げてください。ほら……」
工口はぶつぶつ言いながら膝をつき、頭を下げる。
下げた頭にペドが手をかざす。
すると、ペドの手のひらを中心に暖かな光が輝いた。
「……どうです?」
「……! よくわからないけど、こうかな」
工口は頭の中に浮かんだ動作、人差し指と親指を擦る動作をしてみせる。
「!」
自身の人差し指では感じようのない違和感。
まるで、戯れにグミを指でもて遊ぶような……。クリリとした感触を指に感じる。
「ひゃんっ……///」
「へ?」
なんて懐かしさが鼻腔をくすぐった今際、ペドが恥ずかしそうに胸を両手で抑えていた。
「……やっぱり」
その肩がわなわなと震え、しだいに涙目になる。
「やっぱりロリコン強◯魔ですぅーーっ!!!!」
「ちょっ!?」
ペドは胸を抑えたまま全力で走りだした。
「待て! 誤解だ! 俺は何もしていない!! というか、これはどういうスケベなんだ!」
工口はそれを全力で追いかける。
「ふぐぅ……。よるなーっ変態っ! 死ねっ! 捕まれっ!」
ペドは逃げながら物を投げつけてくる。
「待て! 冷静になって落ち着け!」
(今のはどういうスケベなんだ……? まさか俺が考えつかない高尚なスケベなのか……?)
工口は走りながら考察していた。
「あっ」
その時、後ろに向かって物を投げていたペドがコンマ1秒しまったという顔をした。
階段の三段目に足を乗せた瞬間である。
(!? 空間が中心に向かって渦を巻いている……っ!?)
工口の視点からはペドの顔前に収縮する黄色い球が見えた。
「ファイヤラ!」
それは、何者かの掛け声とともに外側へ膨張し一気に拡散した。
ペドの視界は全てホワイトで覆われ、強烈な勢いで吹き飛ばされる。
「みぎゃーーっ!?」
「おぉ!?」
爆音と断末魔が工口の鼓膜を震わせ、遅れて熱波が肌を突き刺した。
そして、放った絶叫を回収するように、弧を描いて黒焦げのペドが飛んできた。
「あッ! 魔王死んだ!」
工口は器用にそれを避け、ペドが壁に張り付く。
「死んでない……死んでないです……」
恨み言を言いながら黒いシミはずり落ちていった。
「魔族はタフだな」
ふむふむと工口は感心し、ペドを引きずって身を隠す。
「……今のはファイヤボールだろ。RPGはやらないが、それくらいは知ってるぜ」
詠唱が聞こえた方向に対して挑発を投げかけた。
「……」
詠唱者はしばらく、無言で間を稼ぎ。
「……キミ人間? もしそうならそれをこっちに渡してくれない?」
算段をつけ、姿を現した。
「おっ……!」
挑発に答え、現れた女性は身長180㎝。溢れそうなおっぱいをピッチピチの魔術師衣装でパッケージングした、理想的なくそエロ魔法使いだった。
例えるなら、お肉屋さんコーナー……。ラップを突き破らんばかりのギッチギチの鶏胸肉とでも言おうか。思わず、指でつき破りたくなるような妙な好奇心を煽る。
「? どうしたの?」
「ぼっ、ぼくは……」
「ハァ……。何でもいいから早くそれを渡しなさい。……それともあなた魔物?」
杖に手をかける魔法使い。棒を握る様すら艶かしい。
「ぼ、ぼ、ぼ」
「魔物でもあなたの命は助けてあげる。だから、早く、渡しなさい!」
「ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ!!!! おわぁーーー!」
「ちょっ!」
工口はペドを抱えて、一目散に逃げ出した。
「ちょっと待ってよ……」
後には魔法使いだけが残され、乳房だけが空しく弾んだ。
「今の音は火炎魔法の音か」
魔法使いの背後に、全身を鎧で固めた甲冑の騎士が現れる。
「勇者様……。はい、魔王が突然結界の外に現れたのでとっさに火炎魔法を放ってしまったんです。……拘束するのが正解でしたよね」
落ち込み肩を落とす魔法使い。
「いや、先の行動で正解だ。いずれは向こうが痺れを切らす。今は焦らず、ただ待ち続けるんだ」
勇者は下がった肩を軽く叩いた。
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