2.
ホームルームのあと、帰る支度をしている間に佳菜子は他のクラスメイトと楽しそうに教室を出て行って、気がつかないうちに瀬川君も姿を消していた。
なんとなくゆっくりと荷物をまとめている間に、教室にはいつの間にか自分だけになっていて、私は大きく息を吐く。鞄を肩にかけて教室を出ようとした手前、上履きの先へカサリと何かが当たる感触があって足元を見た。
落ちていたのは丸めたプリントだった。中身も見ずにごみ箱へ投げたけれど、それはごみ箱の縁に当たってころころと再び床に落ちてしまう。
ふと、帰ってしまおうかと思った。
数秒だけ迷ってから、肩に鞄をかけ直し、プリントを拾い上げる。開いてみると、今朝返された現代文の小テストだった。名前の欄は空白で、私は近くの机でくしゃくしゃのそれを出来るだけ広げてから、マグネットで黒板に貼り付ける。
隣には、三日前同じように貼り付けた数学の小テストがまだ残っていて、チョークの落書きで汚れていた。
私は黒板に背を向け、付けっぱなしの暖房のスイッチを切って、化学室へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます