2.

 

 ホームルームのあと、帰る支度をしている間に佳菜子は他のクラスメイトと楽しそうに教室を出て行って、気がつかないうちに瀬川君も姿を消していた。


 なんとなくゆっくりと荷物をまとめている間に、教室にはいつの間にか自分だけになっていて、私は大きく息を吐く。鞄を肩にかけて教室を出ようとした手前、上履きの先へカサリと何かが当たる感触があって足元を見た。

 落ちていたのは丸めたプリントだった。中身も見ずにごみ箱へ投げたけれど、それはごみ箱の縁に当たってころころと再び床に落ちてしまう。


 ふと、帰ってしまおうかと思った。


 数秒だけ迷ってから、肩に鞄をかけ直し、プリントを拾い上げる。開いてみると、今朝返された現代文の小テストだった。名前の欄は空白で、私は近くの机でくしゃくしゃのそれを出来るだけ広げてから、マグネットで黒板に貼り付ける。

 隣には、三日前同じように貼り付けた数学の小テストがまだ残っていて、チョークの落書きで汚れていた。


 私は黒板に背を向け、付けっぱなしの暖房のスイッチを切って、化学室へ向かった。


 

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