神条 緋音 過去編
自分の事を他人に知られたくない。そう思う私は内向的なのだろうか。しかし
自分の事を他人に教えるのは、他人に自分の手の内を明かすことと同じ。本心を
悟られたり、知られたりする事はあってはならないのだ。逆だって駄目。他人の
本心を悟ったり、知ってはいけない。だって見たくない部分まで見えてしまって
たったそれだけで相手の事が嫌だと感じる様になってしまうから。随分と
捻くれた考え方をしているのは重々承知しているよ。捻くれているから私には
友達がいない。初めて出来た友達も、もう私を友達とは思ってくれていない。
本人から直接聞いたわけでは無い。だって死人に口なしでしょ。死んだ人間が
口を開くことは決してない。霊媒とかのオカルト類の事は信じないしさ。
何も聞けないまま彼女は死んだ。私を恨んでいるに違いない。命を賭けて助けた
人に見捨てられたんだから。よく考えてみれば私って孤独な人間だな。家族は
いない。私は孤児院で育った。家族という、一番身近で頼れる存在が私には存在
しない。孤児院の人達が家族と言うべきかな。でも私は他の子達や職員と上手く
関わることは出来なかった。高校に行ったのだって奨学金だ。奨学金で賄えない
制服などのお金はアルバイトで稼いだ。1人で生きてきたのだ。誰の助けも
得ずに生きてきたとは言えないけれど、幼い頃から自立していた。頼れる人が
いず、高校生になるまで馴れ合える人間が1人もいなかった。高校生になって
初めて出来た友達。唯月 灯という名の子だ。灯は私に話し掛けてくれた。
私は容姿が整っていて勉強も出来たからか、高嶺の花の様に周りに扱われて
いたからか、誰も話しかけない。遠巻きに見てくるだけ。たまに男の子に告白を
されるけど想いに応えることは出来ないから悪いけど断っている。そんな私の
態度から高嶺の花扱いされているのだろう。それに嫌だとか嬉しいとか感じない。
誰かにベタベタされるのは嫌いだから敬遠されるのも別に構わない。私は自ら
孤独を望んでいる。いつから私はこんなにも哀しい人間になってしまったのか。
産まれたときから孤独だったからそれに順応してしまっただけなのかもしれない。
もういいや。過去は変えられない。親に捨てられた過去も、孤児院で誰とも
相容れなかった過去も変えることは出来ない。何より、親友を見捨てた過去は
消えずに一生私に付きまとう。逃げずに生き続けろと私に暗示するかの様に
付きまとう親友を見捨てた過去。逃げずに生き続けることが出来るのだろうか。
1人で抱え込むのは辛い。しかし他人となれ合う事は苦手以外の何物でもない。
今までも、これからも、私はずっと1人で辛さと戦っていく。私に残される道は
それだけなのだから。目の前の自らの弱さから逃げずに立ち向かうんだ。
たった1人だったとしても。私は1人であることを恐れない。世間からの批判も
恐れない。自らの心に巣食う弱さを恐れるんだ。灯、私は貴方を見捨てた罪を
【懺悔】する。許されずとも懺悔し続ける。灯は天国で穏やかに
過ごしていて。私は皆に責められながら戦っていく。私は今問われた罪を
自分の口から懺悔する。
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