卑劣な者と克服する者
「もう三人か。ゲームするのも人数がな~」
絵馬さんが処刑されて残りは僕と有馬君、空羽ちゃんだけになった。最後の一人が問題に答えるまでクイズは続くのだろうか。僕らは次に何をするのかな。ゲームをするにも人数が足りない的なこと言ってるし、ゲームはせずに決めるっぽい。
「くじ引きをしよう。僕が今から君達三人の名前が書かれた紙が入った箱に手を突っ込んで紙を一枚とる。取った紙に名前が書かれた人が答えるんだよ。」
最後はくじ引きか。くじ引きで一人ずつ当てていく、当たる確率はピエロが何も仕込んでいなかったら1/3だ。僕も当たる確率は十分にある。僕も罪を懺悔して真っ当に生きていかないと駄目なんだ。僕は問われたら必ず心の底から誠意を持って罪と向き合う。
「早速引くね」
ピエロが箱に手を突っ込む。ガサゴソと箱の中を引っ搔き回している。誰が当たるんだろうか、三人の中で解放されるのは誰だろう。有馬君は解放されそうだけど、空羽ちゃんはな。
「取ったよ!名前は西塔 空羽ちゃんだね。」
あっさり解答者が決まったな。空羽ちゃんが犯した罪って何だろうか。最初の問題から考えてミスコン絡みの事だと思うけど、ミスコンで犯す罪って不正とか買収ぐらいしか思いつかないな。でも空羽ちゃんの容姿なら不正とか買収せずとも優勝できるだろうけどな。
「じゃあ問題。卑劣な行為によって名誉ある賞賜を得た事はあるか?」
ミスコンの優勝を不正によって得たという事かな。ミスコンの不正か、彼女より美しい容姿をしていた人を陥れたとかかな。陥れるってのは卑劣なことだから問題には合ってるよね。
「私が卑劣。そんなわけないでしょ、ミスコンの座は自分の努力で手に入れた。」
冷たい言葉だな。愛想が全く無いんだよね空羽ちゃん。どんな育ち方したら愛想の欠片も無い子が出来るんだろう。空羽ちゃんは家庭に難ありっていうタイプだよね。
「君は、ミスコンのライバルが大道具で顔を怪我して再起不能になった事故に関係してないって言うの?」
相手を陥れたのか。ライバルがいなくなったから二位と大きく差をあけて優勝したんだな。大道具って劇に使う道具かな。大道具で再起不能って重量どれだけあったんだ?
「してないって言ってるでしょ。」
認めないのか。何で罪から逃げるんだろう、向き合うのは辛いけど後々楽なのは今苦しんで罪と向き合う事だよ。僕も逃げ癖あるから偉そうには決して言えないけれど。
「君は自分のした事を認めないの?」
ピエロに尋ねられて一言で答える空羽ちゃん。
「うん。」
空羽ちゃんは処刑されるのか、結局空羽ちゃん含めて何人処刑されたんだろうか。ここに居ない人殆どが処刑されている。九人だな、処刑されたのは。
「手段を選ばない卑劣な人間だね。西塔 空羽を処刑する。」
スタッフが空羽ちゃんを連れて行き、空羽ちゃんは無愛想な顔で不貞腐れている。二人が残っており、中央モニターに向けられる目線も、紗和恵さんの時と比べて非常に少なくなった。たった二つの視線が中央モニターに集まる。そろそろだろうか。中央モニターを見つめていると空羽ちゃんが映る。空羽ちゃんは何やらキャバ嬢のような派手な服を着ている。
「西塔 空羽ちゃんはお客さんから4.5以上の評価が貰えるのか?接待スタート!」
空羽ちゃんは端正な容姿のおかげか直ぐに指名が入る。席に着いた彼女はお客さんに話し掛けられる。しかし笑みを溢したりする訳でも無く無愛想な表情で相槌を打っているだけ。仕舞にはお客さんに怒鳴られてしまう。冷水を浴びせられて全身がびしゃびしゃ。店長らしき人に引っ込むよう指示されて控え室らしき場所で叱られている。空羽ちゃんは控室で待機させられる。店長はさっきの客に空羽ちゃんの評価を聞きに行くと、客は不機嫌そうに零と答えた。店長はすぐに空羽ちゃんの元へ戻ると怒り狂って空羽ちゃんを叩く。逆上する彼女を押えて頭に何かつけてる店長。何だろうか、漫画で見た事ありそうな機械だ。店長がスイッチらしきものを入れると空羽ちゃんの体が飛び跳ねた。僕は状況が読み込めず、呆然とモニターを見ているだけだった。空羽ちゃんの体は彼女の意に反して動いているようだった。身体が真っ赤に染まっていく空羽ちゃん。感電しているのかな。水が体中に浴びせられていたし、電気が伝わっていきやすい。真っ赤になった皮膚が痛ましい。何分かして空羽ちゃんの体はただの固形物に様変わりした。
【西塔 空羽 脱落 処刑完了】
空羽ちゃんまでもが死んだ。後は僕と有馬君だ。
「処刑完了だね。次の解答者を早く決めよう。」
もう何でもいいよ。勝手にしてくれ、僕は参加したくないから。逃げ出したくて仕方がない自分を堪えるので精一杯だ。ピエロは憔悴する僕ら二人を気にもせず箱の中に手を突っ込んでいる。
「次の解答者は有馬 絺晃君だね」
有馬君が選ばれたか。なら、最後は僕だな。ピエロが有馬君に向かって問題を出題する。
「人のたった一つの命を身勝手な行動で奪った事はありますか?」
彼も殺人を犯したのか。でも有馬君なら神条さんや東さん、柳さんのように自分の罪と向き合って、解放されると思う。理由は分からないけれど。
「ああ、そうだよ。俺は中学生の時人を殴り殺した。同じクラスの奴だった、真面目で素直だったから、俺の万引きを警察に言おうとした。正しい行為をしようとした奴を俺は殴り殺した。」
殴殺…曉壱君の時みたいだね。人を殺してしまった罪は重いけれど、彼は逃げたりせずに、自分の非を認めている。ピエロも許して解放するよね。
「俺は少年法で守られていた歳だった。人を殺したのに、たった一年で少年院から出てきた。」
中学生には刑事責任を問えないんだっけ?詳しくないから分からないな。
「俺は人を殺したのに、高校、大学と進学して、周りからは満ち足りた生活と言われるなんて。」
有馬君は大きな十字架を背負って生きている。彼が反省してないなんて言えないだろう。ピエロも流石に更生の余地無しなんて言わないだろう。
「有馬 絺晃君、君は十分反省した。君を解放する。綴 廬君の問題が終わってからだけどね。」
僕の問題が終わってからか。僕に出される問題は薬物乱用に関する事だろう。
「綴 廬君に問題だ。貴方は、違法薬物を使用し、親からお金を盗みましたか。」
僕は親から金を盗んだんだ。薬物乱用を続けるために。いくら盗んだか分からないほど僕は親から金を盗った。僕の罪は薬物乱用と窃盗だ。
「そうだよ。僕は薬物を買うために親から金を盗った。」
自分の罪を告白した。もう逃げちゃダメなんだ。逃げずに罪と向き合うんだ。逃げるが勝ちという考えで生きていくのは、自分の過ちを正当化するだけだ。
「僕は薬物乱用を繰り返した。親から盗った金額も膨大だ。何度もやめようと思った。でも止められなかった。なんて物に手を出してしまったのか痛感した。逃げ癖がついたダメな人間だ。」
僕が懺悔すべき瞬間、逃げずに恐怖を堪えて罪を省みる。
「綴 廬君、君もよくわかってくれているみたいだ。綴 廬君と有馬 絺晃君の解放を開始する。」
僕らは数人のスタッフに手を引かれてスタジオから出て行く。僕らは歩いていく度に外へ近づいているんだと体感する。やっとあ解放されるんだ。僕らはおもむろに足を動かす。安心したからか、今まで心が緊迫していた事による疲れがどっと出る。歩くスピードが遅い僕らに合わせてスタッフの人達は歩いてくれる。僕らはゆっくりだけれど歩き続けて、扉をいくつも潜り抜けて外へと近づく。スタッフの人達が、
「この扉が最後だよ。」
と言ってくれた扉を開くと、外の世界が視界に飛び込んでくる。まだ昼間で多くの人が行き交う。僕らはやっと解放されたんだ。外の世界に戻ってこられたんだ。僕は親に謝って警察にも自首しよう。罪を償ってからやり直すんだ。
【綴 廬 有馬 絺晃 更生 解放完了】
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