やるせない報いの結末

神条さん、頑張って下さい。僕は貴方の様な強い人間になりたいです。罪と向き合える、気高くて強い人間になります。絶対に逃げません。

「神条さんの更生も完了したし次に行こうか~」

次はどんなゲームに参加させられるんだろうか。僕は罪を自覚できていない。もし問題の解答権を得られたとしても正解できるのか?どうして僕は罪を自覚していない。日常的にしている事が罪になる事なら僕の生活から何か罪のヒントがあるはずだ。僕は一体何をしているんだ。誰かに咎められる様な行為。きっと僕が生活していくうえでしていく事が罪に該当するんだ。僕が普段している事の中にある悪事って覚醒剤…?そうだ、僕の悪事は薬物乱用だ。何度も何度も使った。お金も酷く覚醒剤に落とした。何でだろう薬物なんかに手を出したのは。僕が覚醒剤を使いだした理由は分からない。

「次のゲームはテトリスだよ。モニターにゲーム画面が表示されるからね。最後までゲームオーバーにならなかった人がクイズの解答権を得られるよ。」

テトリスか…パズル系は苦手なんだよな。てか頭使う事全般苦手。テトリスの開始ボタンを押すと、他の人の準備が完了するまでお待ちくださいという文面。周りを見てみると、余裕そうな顔をしている絵馬さんと真田君。やっぱ二人はゲーム得意だろうしな。

「皆準備完了したみたいだね。では開始!」

何やら楽し気な音楽が聴こえてくる。集中しなければ。どんどん落ちてくる欠片を一直線に揃えると他の人を攻撃できる。中々揃わないな。うわっ攻撃三連発食らった。全然消せないや。

「なによこれ!もう負けたしうざい。」

桜木さんが何やら喚き散らしている。もうゲームオーバーになっちゃったみたいだ。悪いけど五月蠅いな。上の方に表示されてる数字が減ってる。9/11になってる。桜木さん以外にもゲームオーバーになっちゃった人がいるのか。僕はやっと起死回生出来た。人数は少しずつ減っていっている。一位にはなれ無さそうだ。早く揃えないと、うわ、攻撃4連発。もう無理だ。どんどん積み重なっていく。無理だ、無理だ。ゲームオーバーの文字が画面に表示されてしまった。負けちゃった。三人一気にやられてしまった。後は絵馬さんと真田君だ。二人の一騎打ち。どんな結果になるかな?絵馬さんも真田君も強いから見当つかない。中央モニターに二人の状況が表示されてる。えーっと、若干絵馬さんが優勢っぽい?どっちも全然攻撃されたのが溜まって無いし。

「中々長い一騎打ちだね~」

ピエロが皮肉っぽく言う。確かに長い。一体いつまでかかるんだろうか。攻撃が直ぐに消化されるから鼬ごっこになっている。絵馬さんの盤面の方に攻撃が少しずつ溜まっているぐらいしか変化が無い。二人の緊迫した様子がひしひしと伝わってくる。二人共本気だ。僕まで胸が騒めく様な対戦。

「あ、やべ。俺これ負けるわ。」

絵馬さんが言った瞬間にゲームオーバーになった。勝者は真田君。絵馬さんは惜敗と言ったところだろうか。真田君は凄くうれしそうな表情をしている。でも僕は最初に出された問題の時真田君の見せた反応が心に引っかかっている。

「今回解答権を得たのは真田 曉壱君!では問題、人を精神的に追い詰め、間接的に命を奪った事はあるか?」

また人の罪を詮索する問題。真田君は認めるのか認めないのか。神条さんの姿を見て、自分の罪を否定するのは愚行でしかない。真田君はどうするんだろう。

「俺は…人殺しなんてしてない。」

否定した。真田君は神条さんの姿を見て何も思わなかったのだろうか。どうして罪から逃げようとするんだ。ピエロが言っている事は信ぴょう性が高い。今までの三人を見てたら分かる事だ。ピエロの言う罪は本当だ。否定しても、処刑されるだけだ。

「俺は殺してなんかない。ちょっと煽ってやったぐらいで首吊るような弱いメンタルの奴が悪いんだ。」

酷い。ちょっと煽ったって言ってるけど、本当は執拗に叩いたりしてるんじゃないかな。ネット記事に載ってた、自分に負けた相手を罵倒して執拗に叩く害悪プレイヤーって真田君の事だったんだ。罵詈雑言をひたすら浴びせられて気を病むなと言う方がおかしい。ネットとは言え相手を思いやる行動を心掛けるべきだと道徳の授業で習った。

「大体さ、雑魚のくせに全国の野良部屋に出しゃばってんじゃねーよ。うざいんだよ。全国の野良に出しゃばって何がしたいの?倒されて興奮するマゾかよ。気持ちわりーな。」

嘲笑する様な声色と見下すような顔で語る真田君。酷くゆがんだ真田君の人間性を目の当たりにして軽蔑の眼差しを向ける。絵馬さんも例外ではなかった。ピエロも黙って真田君の発言を聞いている。醜い真田君の生き様。人を陥れて、侮辱して何が楽しいのか。炎上した人間を特定する輩よりタチが悪い。

「才能無いからやめろって言ってやったんだよ。それで心身病んで病院行って訴えられたんだぜ?馬鹿みたいだよな。大体さ、顔も見えない相手に悪口言われたから何?弱いお前らが悪いんだよ。」

普通の感覚を持った人間からは絶対に出てこないであろう他人を謗る言葉。ゲームのし過ぎで感覚が狂ったのか?自分より下の立場に居る人間に対して何してもいいと思っているの?

「俺が何をした?弱い奴を再教育してやっただけ。誹謗中傷、名誉毀損、脅迫なんて言われる筋合いねーよ。下らねえことで訴えやがって、暇なのかよ。ニートですか~?社会不適合の堕落者ですか~?」

真田君の外れてしまった頭のねじは巻き直されないんだろうと思う。自分を偉いとでも思いあがっているのか。人を蔑んでいい程の人間では無いだろ、醜い人間だ。真田君、君は無就職者以上の社会不適合者だよ。何のために生きているか分からないほど君は醜い。

「一回健気に頑張る雑魚ガキに遭ったんだよ。可哀想に、虚しい努力してさ。だから優しい俺は言ってあげたんだよ。どうせお前が上手くなる事なんて無い。時間の無駄、死んで生まれ変わればうまくなるかもね。お前の親も頭悪いんだろ?馬鹿は遺伝子単位で馬鹿なんだな。マジで死んだ方が身のためだよってさ。」

言葉に詰まる。健気に上手くなろうと努力する子供を侮蔑する真田君。彼の行動を非難する気にもなれない。彼は、死んで当然の人間だ。この世界に生きていちゃダメな人間だ。紗和恵さんや皇さんとは全く違う。処刑されても一言も文句を言えない。

「絵馬さんに憧れてゲームの練習するって言ってたんだよ。お前如きが絵馬さんに憧れる資格ねーよ。そしたらガキは消えたんだよ。愉快痛快って感じ。まあ親に訴えられたときは困ったよ。お前のせいで娘が自殺したって言いがかりつけやがる。ガキが勝手に死んだだけじゃん。俺のせいじゃない。」

自慢する様に自らの悪事の過去を公言する。人の命の重さを身をもって知れ。人の命を踏みにじる君に生きていく資格は無い。ネットで調子に乗って人の命を奪い去った罪は重い。

「真田君、君は自分のした事をわかっているの?」

唐突に聞こえる絵馬さんの声。誰も真田君の発言を咎める事はしなかった。注意して咎めたところで#糠__ぬか__#に釘と分かっていたから。でも彼の慕う絵馬さんからの言葉なら聞くかもしれない。

「絵馬さん、どうしたんすか?俺はバカな奴らに再教育してあげただけっすよ?」

悪びれる様子もなく絵馬さんの質問に答える真田君。絵馬さんでも糠に釘なのか?

「君は一番間違ったネットの使い方をしている。恥を知るんだ。人の命の重みを知るんだ。君がした事は取り返しのつかない悪事だ。」

真田君はショックを受けたのか黙り込む。尊敬していた人に自らの行いを否定され、𠮟責されたのだから当たり前だろう。何とも言えぬ空気になっているとピエロが口を開く。

「黙って聞いてたけど酷く醜い有様だ。更生の余地なしとみなして真田 曉壱君を今すぐ処刑。」

ピエロが処刑を宣言するとスタッフが数人やってきて、真田君を連れて行く。この光景を見るのは四回目だな。処刑場へ連れていかれる間際でも皆の目は厳しく彼をとらえていた。皆も思っているのだろうか。真田君は処刑されても文句を言えない人間だと。真田君が連れていかれ、程なくして中央モニターに真田君の姿が映る。ゲームセンターにあるアーケードゲームの前に居る真田君。

「真田 曉壱のゲームの腕前は?!AIと格闘ゲームで対戦スタート!」

モニターに映った真田君。アーケードゲームを必死に操作する。最初は全くダメージを入れられなかった真田君だが油断してしまったのかダメージを食らってしまう。相手に殴られてダメージを受けたと思った瞬間、隣の壁から何かが飛び出してきてゲームで殴られた回数と同じ分真田君を殴る。痛みで手元が狂った彼は対戦相手に何度も攻撃を当てられダメージを食らう。それに比例して現実の真田君も飛び出してくる機械に殴られる。アーケードゲーム内の真田君が瀕死状態になった時、現実で操作する真田君も暴行死する寸前だった。やっとの思いで操作して敵に攻撃を繰り出す真田君。しかし彼の単調な攻撃は難無く躱されてしまう。防御も間に合わぬまま必殺技でKOされるゲーム内の真田君。ゲームで必殺技を受けたと同時に現実の真田君も壁から飛び出してきた機械に何十発も殴られて息絶えた。有り得ない方向に曲がった腕と、飛び出した目玉。リンチに遭った被害者の様な醜形となった真田君がモニターに映しだされる。吐き気がこみ上げてくる。体の端から端まで人としての形を失っている彼を見て、何も思わない人は感覚が狂っているとしか言えない。並々ならぬ量の吐瀉物を吐き散らす者が普通に見えるほど酷い物だ。いくら彼がクズだとしても身体が原形を留めなくなるまで殴って殺すのは惨すぎる。紗和恵さんや皇さんと違ってじわじわと死んでいく。痛くても痛くても命を落とせぬ患苦。目も向けられない…

【真田 曉壱  脱落  処刑完了】

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