クイズ大会始まるよ~

ありふれた毎日、新鮮味に欠ける日常。何の才能も無く、他人からの期待の眼差しを一つも感じる事がない凡人にとってはそれが当たり前。自己紹介が遅れたね、 僕の名前は綴 廬 (つづら いおり)特徴の一つも無い凡人だ。でも一つだけ  僕のありきたりな日常を変えるものに出会えている。友達にも勧めているけど  皆拒否する。どうしてだろう凡人の目新しさのない日々を変えられるものなのに。これさえ有れば世界の中心になった様な気分になれるのに。これが無ければ夢さえも見れない。有名なゲーム実況者、大人気の声優、彼らに憧れたとしても凡人の僕らには到底彼らに及ぶ力をつける事は不可能だ。色々考え事をしている間に時間が無くなっている。早くしないと遅刻だ。留年は御免だからね、遅刻はできないよ。荷物は全部入ってるね、忘れ物も無さそうだし早く家から出ないと。家出て直ぐに曲がり角あるから気を付けないと。急いでるときいつも曲がり角曲がり損ねるし。 「うわわっ」

痛い…車にぶつかった‥?車から人が出てきた。謝らなきゃ。何か手に持ってる。何だあれ。手に持ってる筒状の物、まさか請求書とかか?段々近づいてくる、これ賠償金とかヤバい感じ?

「こいつが一番だな。おい人目に付く前に眠らせろ!」

人の声が頭で反響する。その瞬間僕は目の前が煙に包まれ意識を失った。

「…の…あの…」

暗闇の中で誰かが僕に語り掛ける。誰だ、接触事故を起こしてしまった車の話でもするのか?ゆっくり目を開くと優しそうな女性が僕の隣に居た。そこには僕とその女性以外にも何人かの男女がおり、一人で危機感の一つも無さそうに物思いに耽っている人もいれば切羽詰まった様な顔をして話し合っている人もいる。何が、どうなっているのやら。周りにいる男女の中には僕が一生一言会話を交わす事すら不可能だろうと思っていた人が何人か立っている。

「大丈夫かしら?君は最後まで寝ていたんだよ。頭が痛かったりはしない?」

隣に居た女性はとても親切そうに僕を気遣う言葉をかけてくれる。いまいち状況が理解できていないからか、簡単な質問なのにも関わらず中々答えられない。何故見たことも無いような場所に居るのか、ここに居る人は何故集められたのか、疑問が脳を覆いつくすように被さってくる。一旦頭を整理して質問にしっかり答えよう。

「頭が痛かったりは無いです。お気遣いありがとうございます。」

何でここに居るんだろう。学校に行かないといけないのに、遅刻してしまえば留年が足音をたてて僕に近付いてくる。成績でカバー出来たら気持ちも楽なのにな。

「やあ!皆お目覚めのようだね。」

奥の方から声が段々と近付いてくる。陽気な感じを纏わせている。見た目は…

「いや!ピエロは嫌だ!近づいてこないで。」

あの女の子はピエロ恐怖症なのかな。確かに不気味な見た目のピエロだ。目も合わせたくはない。

「そんなに怖がらないでほしいな☆早速だが君達、クイズをして貰うよ☆」

クイズ…これは何かの番組なのか?でもそれなら一般人を誘拐紛いの方法で攫って参加させることは無いよな。

「クイズは参加できない。大事な仕事があるからバックレるなんて出来ないよ。」

あの男の子の声って声優の零宮さんに似てるな。心地よく感じる声の抑揚とか全部そっくり。同一人物‥な訳ないと思うけど気になる。

「まあ落ち着いてよ。君達には折角ビッグチャンスを作ってあげたのにさ。」

ビッグチャンス?クイズに参加して正解していったら賞金貰えるよ的なのか?それとも賞品があるのか?それとも…駄目だ全く予想が付かない。

「早速クイズのルール説明するよ、参加に対する拒否権は無いからね。」

ここにいる時点で強制参加って事になるんだ。僕達にとって参加は不可抗力って事か。誰だって訳の分からないクイズに参加してる暇あれば仕事や学校に行きたいよね。僕だってそうだから。

「大人しく聞いてね。まず賞金について話すよ。賞金は何と2000万円!一人に 対していくつかクイズを用意してるからそれに全問正解出来たら賞金が貰えるよ」

2000万?!そんな大金、僕が何年かけて働いたら手に入るんだろ。10年? 20年はかかるか?まさかこんなチャンスが僕に恵まれるなんて。でもクイズがめっちゃ難しいとかあるかも。

「回答者は僕が指名するよ。指名された人にとっては凄く簡単な問題だからね」

僕が指名された問題はきっと皆分かるような問題なんだろうな。逆にあそこで静かに話を聞いている医者っぽい人が指名された問題は難しそう。

「何問か用意してあるから全問正解で2000万円プレゼント!」

これは確かにビッグチャンスだね。指名された人にとって凄く簡単な問題なら全問正解は余裕だしわざわざ間違えるはずもない。

「参加する人は参加表明してね。まあゆうて強制参加なんだけど。」

この条件で飲まない人がいるはずも無く全員が参加表明した。参加者全員契約書にサインを促され、全員がサインした後でピエロがとんでもないことを言い出す。

「一問でも不正解になった時点で処刑だから頑張ってね。契約書へのサインはもう皆したからガタガタ言わないでくれよ。」

処刑?何でそんな言葉が出てくる。この国は、というよりこの世界では死刑以外の殺人は認められていない。そりゃ認められるはず無いけどね。処刑なんて言葉はただの脅し文句で、何かのドッキリだよね。

「今からのクイズ、全国に地上波で中継されるからね。君たちの死顔をテレビに晒されない様に精一杯頑張ってね。」

声のトーンが本気だ。地上波…クイズ…処刑…僕も見た事がある。以前に2度放送されたヤツだ。これはドッキリじゃない。僕はこの狂ったクイズを知っている。ネットでも話題になっていて首謀者はまだ捕まっていない。僕はテレビで見た、世界に影響を与えるほどの画家がこの番組で罪を反省しなかったからと処刑されたのを。

「一人ずつ会場に入って行ってね。僕の指示に従って入場してよね。」

僕らは声が出ない。この場の者は殆ど知っているのだろう。でなければ誰かが嘘だろとか抗議するはずだ。てことは皆知ってるのか?

「こっちで付けた順番で呼ぶよ。男子の一番は綴 廬君だね。」

僕はピエロに促されるがままついてゆく。扉の先には普通のクイズ番組の様なセットがあった。テレビで見た奴と同じだ。間違えたら死ぬとか本当じゃないよね。テレビで見たのも本当はCGなんじゃないかな。画家の人もどこかでこっそり生きてるかも。

「綴 廬君、君はここに座ってね。」

指示された場所に腰掛ければ、座り心地の良さが身にしみる。ふかふかだ。良質そう。セットは一体いくらかかるんだろう。席は箱の様な物の中にあり、座席の前にはモニターがある。こんな席が幾つも用意されていた。僕が指定された席に座ったのを確認するとピエロは次の人を呼んだ。呼ばれた人はチャラそうな僕より少し年上位の男性だ。それから次々と案内されてきた。参加者は男女7人ずつだった。全員が席に着いた瞬間、スポットライトが点灯する。何事かと思った瞬間、座席が上昇する。吃驚したのも束の間、一度見たことあるからか直ぐに落ち着いた。

「それではクイズを始めます!楽しみだね、誰がどんな罪を抱えているのか。では最初に参加者たちの紹介をするよ!」

ピエロが声高らかに開始を宣言すると僕ら参加者の紹介を始めた。

「男子一番目は綴 廬君。普通の高校生っぽい彼には何があるんでしょう。」

普通か。まあ僕は何の取り柄も凄みも無い人間。一般人の究極版だね。でもそんな自分だからこそ罪を抱えているとは到底思えない。僕は過去も含めて何かしたかな。心当たりは全くない。まさか人違いで参加させられたのか。それならいい迷惑だ。クイズは簡単だって言うし別に案ずるほどでもないと思うけど…

「二人目は有馬 絺晃君!ピアスを開けた金髪の男の子。何をしたか想像ついちゃうかな?」

僕の隣にいる金髪の人は有馬 絺晃か。僕があんまり関わりたくないタイプの人だな。お金とか取られそうだし。僕は穏便に何事も無く暮らしたいんだ。

「三人目は真田 曉壱君!よくいるゲーム大好き人間のオタク君。」

絶対今の紹介適当だっただろ。ただの勘だけど、今面倒臭かった感あったぞ。話変わるけどゲーム好きならYゲーム実況のYouTuberとか知ってるのかな。それなら少しは話が合いそうだ。

「四人目は優しそうだが陰のある東 迅都君!職業を頑なに教えない理由とは?!」

保育士してそうな雰囲気がここまで漂ってくる。子供に好かれそうで、母親たちにも好かれそうな包容力を体全体で感じる。

「五人目は神の手を持つ医者。皇 咲!失敗しない医者の名誉は真実なのか。」

皇 咲、本を出したりもしてる医者だよな。成功例のない手術を何度も成功させて、医者の世界に革命が起きそうな論文を幾つも発表してる。僕は本を読んだときさっぱり理解できなかった。

「六人目はゲーム好きは誰もが知るYouTuber、岸田 絵馬!優しい笑顔に隠された秘密とは…」

絵馬居るの?!ついつい体を箱から乗り出してしまう。僕が毎日動画を見てるYouTuberじゃないか。身を乗り出しているのは僕だけでは無く、真田君もだった。そりゃ驚くよ、いるとは思わない。

「男子最後七人目は零宮 清都。一番人気の声優が何故ここにいるのか?」

何だか僕場違い?凄い人多すぎないか。売れっ子声優、大人気YouTuber、天才医者、うーん自分の無力さにさいなまれる…

「次は女子だよ。一番目は神条 緋音ちゃん、無口さがミステリアス!」

ピエロは神条さんの事がタイプだったんだろうな。煽り文句に近い紹介が無い。

「二人目は母性溢れる奥田 紗和恵さん。家庭科教師の料理を一度は食べてみたい。」

私情混ざってるね。僕も食べてみたいよ、美味しそうだし。ちゃっかり私情出してるのは何か面白い。

「三人目は綾瀬 紡ちゃん。口達者で語彙力に優れた才女だ。」

ピエロは女好きなのかと思うほどコメントがいちいち擁護気味だな。僕には関係ないけれど、聞いてて吹き出しそうになる。

「四人目は桜木 萌百子ちゃん。売れない地下アイドル。頑張ってね」

何しれっと応援してるの。やっぱり女好きだろ司会のピエロ。いちいち女に媚び売るのは一体何のためだよ。

「マスクで顔を隠した五人目の子は柳 真入ちゃん。マスク取った時の顔はきっと美しい。」

僕はもう何も突っ込まない。

「七人目はミスコンに2位と大きな差を開けて優勝!美しさは武器。西塔 空羽ちゃん。」

確かに凄く綺麗な顔立ちの女の子だ。ミスコン優勝も当たり前だろうな。

「最後は花園 魁街。花魁の再来と呼ばれる少女だ!」

14人全ての紹介が終わった。分かったことは凄い人が多数いる事とピエロが女好きって事だけか。自己紹介に時間使ったけど、メインのクイズはいつになったらはじまるんだ?

「クイズどこいった?って思ってる人いるでしょ。大丈夫今からクイズするよ」

僕は分かりやすい人間なのかな。思ってる事分かられた。

「じゃあ一問目の回答者の指名をするよ!あ、先にクイズ出題しなきゃ。それでは第一問!」

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