第8話:俺TUEEEより俺の推しTUEEEがしたい!


 最推しパーティーでセラフィムに快勝できたのは、正直めちゃくちゃ嬉しい。

 でもそれはそれとして、異常事態には変わりなかった。

 急ぎ《神鏡》で三人のステータスを確認した結果、俺は顎が外れそうになる。


「三人のスキルが別物クラスに強化されてる!? それにステータスも!」


 ミラージュは一人につき、三つのスキルを有している。


=============

《【九尾くノ一】ハクメン》

【鬼火の術】:味方全体に【攻撃力強化】、自身に【状態異常攻撃:呪詛】を付与。

【結界の術】:味方一体に【弱体耐性強化】【防御力強化】を付与。

【妖狐の呪符】:敵一体に【防御力低下】を付与。


《【彷徨う首なし騎士】デュラン》

【死霊の盾】:自身に【ターゲット集中】を付与。

【晴れない恨み】:自身に【被弾時のSP上昇率強化】を付与。

【呪いの宣告】:敵一体に【「状態異常の解除」無効】を付与。


《【可憐な狂戦士】ベル》

【黒狼の衣】:自身に【闇属性強化】【光耐性低下】を付与。

【痛覚喪失】:自身に【一回限りの蘇生】を付与。

【狂化】:自身に【攻撃力強化】【防御力低下】を付与。

=============


 これが俺の知る、以前のスキル構成。

 それが、今はこうだ。


=============

《【九尾くノ一】ハクメン》

【黒き呪炎】:味方全体に【攻撃力強化】【状態異常攻撃:呪詛】を付与。

【妖狐の変幻術】:味方一体に回数制の【弱体無効】【無敵】を付与。

【千年尽きぬ憎悪】:敵全体に【防御力低下】【呪怨(「呪詛によるステータス低下」倍化)】を付与。


《【彷徨う首なし騎士】デュラン》

【幽騎の守護】:自身に【ターゲット集中】、味方に【闇属性強化】を付与。

【怨念の鎧】:被弾時、自身に【SPチャージ】、敵に【状態異常:呪詛】を付与。

【逃れられぬ死】:敵全体に【「状態異常の解除」無効】【回避・無敵・蘇生の解除】を付与。


《【可憐な狂戦士】ベル》

【狼王の獣威】:自身に【闇属性超強化】【光耐性超低下】を付与。

【狂える力】:自身に【一回限りの蘇生】【蘇生時、一回だけ闇属性と攻撃力超強化】を付与。

【狂暴化】:自身に【攻撃力超強化】【防御力超低下】を付与。攻撃のヒット数を三倍に。

=============


 いや、どういうこと!?

 とても一言じゃ説明し切れないレベルでパワーアップしてるのだが!?


 特にデュランとベルは、SSRでも通用する性能に変貌を遂げていた。ハクメンと互いを補い合うシナジーも一層向上している。ステータスにも上方修正が入り、これなら高難易度でも十二分に戦えるだろう。なんという俺得強化か!


 しかし、なんでこんなことに?

 頭が疑問符で埋め尽くされた俺に、ハクメンが「一つ、心当たりが」と言う。


「主を召喚した城にいた、眼帯の魔女。彼女が我々を転移させる間際、声は発さず唇の動きだけでこう告げていました。――『』と」


 そうだそうだ。確かにあの魔女、口パクでなにか伝えようとしていたのだ。

 しかし、バージョン? バージョンって、まさかゲームのバージョンか?


《シャドウミラージュ》はリリースから二年が経過しており、メインストーリーの第一部が終了したばかり。第二部の開始を楽しみに待っていたところを俺は召喚された。その二年間に何度かアップデートが入って、バージョンは確か1.7だったか。


 つまり、三人の謎強化はアップデートによるもの?

 アップデートのお知らせなんてなかったはず。召喚された瞬間にアップデート入ったとか、なんというタイミングか。というか、一回のアップデートでこの強化は些かやりすぎじゃあるまいか。


 そう苦笑しながら《神鏡》の画面を操作し、現バージョンを確認。

 ……そして、俺は今度こそ顎がカクンと落ちた。


「ば、バージョン3.2だとぉぉぉぉ!?」


 記憶違いではありえない。明らかにバージョンが進みすぎてる。誤表記じゃない証拠に《神鏡》の画面を探れば、出てくる出てくる新項目に新要素。


 それらが意味するところは一つだ。――どうやら俺が召喚されたこの地は、俺が知る《シャドウミラージュ》より遥か未来。アップデートにアップデートを重ね、最早別ゲーと化した《シャドウミラージュ》の世界らしい。


「ふふ、くっ、クフフフフ」

「リーダー、変な笑い出てるよ? 大丈夫? おっぱい揉む? ハクメンの」

「私ですか!? いえ、主が御望みとあらば、つまらぬ胸ですが」

「あー、うん。今はそっとしといてやれ。あと、ハクメンは上目遣い+胸持ち上げとか、二人きりのときにやってやろうな? 大将、たぶん鼻血噴いて喜ぶから。……待てベル、浮気じゃないし凝視もしてないから俺のファイヤーヘッド齧っちゃイヤァァァァ!」


 俺は三人のことが大好きだ。たとえ弱くたって構わない。

 だが、可能なら推しキャラを最大限活躍させたいのがミカガミ心!

 そして、バージョンアップされたこの世界なら叶う!

 最弱と嗤われてきた俺の最推しパーティーを、最強へと進化させられる!

 やってやるぞ! 「俺TUEEE」ならぬ「俺の推しTUEEE」のために!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る