第23話 戸惑い

 俺は、人間が神を作り出したものだと思っている。人間の祈りや願望、妬みに悪意が髪を生み出したと思っている。そんな中、人間の都合で作り出し、人間の都合で消そうとする。そんなことをやっているのは、傲慢だ。悪霊や仏、神もいるこの世の中で、両者の良き所で折り合いをつけるべきだと思う。それを人間が十三仏の力を使って、一方的にそういうモノたちを悪と決めつけ排除していくことは納得できない。どこかで人間側も報いを受けるべきだ。


俺は、如来に話しかけてみることにする。

『如来よ。この龍神は人間の願いで生み出された。そんななか、人間の勝手で無に帰してもよいものだろうか?』


『ほお。人間の都合で無に帰すのが嫌か。では、どうする?このモノを許し、このまま野に放てばまた同じことが繰り返させれるぞ?』


 俺は考えた。共存するのであればそれなりにリスクが伴う。

 ただ、俺はその共存を選択したい。一番難しいことを選択する。それが人生の中で最も楽しいことだと言える。そう誰かが言っていた気がする。


『この龍神を我らの使いとしてこの地を治めてもらうのはだめかい?俺とこいつを対等のものとしていけるのでは??』


『良いのか?こいつが二度と人間に牙を剥かないとはわからないぞ。腐っても神。それなりに力は持っている。その決断、後悔せんのか?』


『俺は、後悔する人生など歩んできていない。こんな選択もいずれ綺麗な思い出となるだろう。ならば、その道を進む。』


『あい、わかった。では龍神と話してみよ。ただ、説得できるかは御主の力量だ。御主に危険が迫れば、我は躊躇なくヤルぞ。』


ふー。さてやろうか。リシボン振るのをやめ、経も唱えず話しかけた。

「龍神よ。俺の言い分を聞き入れれば、お前を無に帰すのをやめようぞ。その代わりお前には観音か不動に仕え、この家を守ってもらいたい。」

「うるせーーー!!われの望みは、、、この世で忌、恐れられる存在になるんだ。。。それ以外は興味ないんだよーーー!」

「そこまでして何になる?その道の先に何があるというのか?お前の形を変わったとしても、お前はこの地で、崇め祀られる存在になる。今までは無理に力を大きくしたが、これからは十三仏に仕えることにより龍神から龍王に成れるかもしれない。」

「我は、、、人の望みにより作られた。。。。ならば、その人間を利用し、、、力を大きくしてきたことを、、、責められる筋合いもない。」


筋は通っている。どうすればいいんだ。俯いてしまう。


わからない。。。悔しい。。。


「南無一大聖不動明王、南無一大聖不動明王。さあ、龍神を滅して行くぞ。」

そんな声がした。顔を上げ、奥を見てみると先生がいた。

先生が九字を切り、お経を読む。その姿は、まるで不動そのものだった。

「御主は、無に帰す。不動の言葉じゃ。この世に一片たりとも止まることはない。」

そう言いながら、ろうそくに火をつける。そして堀さんの全身に新聞紙を被せ、その上からロウをかけて行く。

「おじさんや、少し熱いが耐えてくれ。」

そう言いながら全身に余すところなくかけていく。

「熱いーーーーーー。。。やめろ。。焼けてしまう。。。。」

そう言いながら、静かになっていった。


「これで大丈夫だ。この家は、この不動が守ってくれる。心配はいらない。毎日水を変えて、この不動に手を合わせてください。」

先生が話を進めていく。

 あの後、挨拶をし、この家の屋敷払いをし、池の地鎮祭、そして不動をこの家に鎮座させた。


「柿原くんといったか。この一件これで終いだ。二度とこの世界に関わるな。いいな。」

「………はい。」

先生は威圧していた。それに逆らいもせず、素直に返事をしていた。今回の一件はそもそも柿原が招いてしまったことだ。


堀さん宅を後にした。堀さんは、近いうちに先生のところに行く予定だそうだ。

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