第21話 怒り

 「ふー。」

手を合わせて聞いて見た。龍神が自分の存在を表した。

 龍神がいる家で、如来や不動、菩薩に聞いて見ると手で蛇を表すようになる。例えば腕がくねくねしたり、手でとぐろを巻いている蛇の首を立てたりしている様子を形を表す。こうした家には、大なり小なり龍神が関係している家である。


『この家には10メートルほどの龍が住まっているな。それもかなり長い期間だ。その間この家には恩恵を授かっている。そして、この龍神は力を蓄えて来た。後、数年でこの家の人間は一人残らず命を取られるだろう。その実、ここの家には後継や子孫が残されていない。これも龍神の影響だろう。』


そうか。この家に人が少ない理由がわかった。

さてこれを伝えなきゃならないとは……。厳しいな。

「堀さん。今から言うことは事実なんで率直に伝えます。よろしいですか?」

「ああ。構わないよ。」

「この家の根幹には、龍神がいます。それも10メートルクラスです。このクラスになるとそこそこデカイと言えます。感覚としてはその池にとぐろを巻いていると思ってくれて構いません。その龍神の影響として、後継が生まれてなかったりします。加えて、この家の繁栄の仕方は、異常だった気がしませんか?」

堀さんは驚いていた。そりゃそうだろう。初対面の人にここまで言われてしまっているのだから。

「初対面の人にここまで言われてやっと気づくのか。俺の人生は恵まれ過ぎていたと心のどこかで思っていた。その結果、76になるまで独り身だ。」

堀さんの姿が少し小さく見える。柿原さんが怒声混じりで来た。

「そんなことないだろう!!堀さんは努力してここまで来たんだ!それなのに、それを龍神のおかげだと言って不安を煽るようなこと、、」

「煽ってどうするんだ?そこでお金を搾取するとでも?馬鹿らしい。」

俺は被せて、静かに言った。俺の中ではものすごくハラワタ煮えくり返っている。なぜかはまだわからない。

「堀さん。実際に体験して見ませんか?」

社長がいきなり口を開いた。

「そんなことができるのか?」

「はい。こいつはそういう目に見えないものを表に出すことができます。明日その体験をしてみませんか?」

「みてみたい。実は最近少し不安になっていた。このままでいいのか。何かよくわからないが死への恐怖みたいなものが迫って来ている。」

「何を言っているんですか!?堀さんはまだまだ長生きできるって菩薩が言ってますのに!」

俺はここでハラワタ煮えくりっているものぶちまけてしまいたい。


「柿原くん。君も一緒に来てくれて構わないよ。今までに体験してないことができると思うし、君の答え合わせもできる。」

社長はにこやかに言う。

「じゃあ、お供させてもらいます。」

なんだか腑に落ちてはいないようだが、納得した。


そして明日の日程を決め俺たちは堀さん宅を後にする。

「社長。どうしてあんなことを言ったんですか?」

俺は素直に聞いてみた。

「僕はね、祓い屋に憧れてたんだよ。でも、その才能がなく諦めた。そんな中、正しい力を使えない贋作が我が物顔でああ言うことをしているのが許せないだけさ。」

俺は社長の顔お見れなかった。普段は、ニコニコしていて感じのいい青年だが、そんなことを感じさせないようなドスの効いた声だった。

俺は、帰りの車の中黙っていた。社長が俺に少しだけ昔話をしてくれた。



『さて、お前への始めの試練だな。しっかりと励みなさい。』

そう車内で如来に言われた。

 俺は、明日精一杯の力を発揮しよう。そう固く決めた。


社長の昔話についてはまた別の機会に語るとしよう。

 

家で、自分に何ができるか考えていた。俺ができるのは、人々の暮らしを平凡にすることか?俺自身は非日常に恋い焦がれているが、他人の平凡な暮らしをして欲しいと思っている。ただ、俺はこうあって欲しい。

 

 表と裏世界の共存

 

そうだ。神は人々が願い作り出したモノだ。その神を人間の都合で消すのは、なんだか納得ができない。

 そんなことを思いながら、眠りにつく。

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