第9話 観音菩薩との出会い
田上さん家族は、みんな元気に迎えてくれた。この前みたいに何か問題のある人はいないようだ。
しかし、この家の周りにはびこっている。悪しき空気をなんとかしなければこの人たちの生活は変わらないだろう。
『こんなところにわざわざ住まなくてもいいのにな。ここはこの辺りの龍神を束ねる親玉のねぐらだな。』
なんだって!!そんなところに住んでいたのか。というかこの手前にいくらでも住むところがあるだろうに。
『何か訳があってここに住んでいたのだろう。手前の土地に住めない理由が。』
そんなことを、あっさりとは教えてくれないだろう。そんなことを考えながら、爺さんと道具を運ぶ。今回の屋敷払いでこの家に不動明王を御神体として入れる。そのためにいろんなサイズの不動明王を車に積んで来ている。
「さて、まずは家族5人揃っているからお経をあげながら見て行ってくれ。その間わしは、忘れ物を取りにいいてくるよ。」
そう行って、颯爽と車を走らせた。俺は唖然とした。ひとりでどうにかしろってか!!
とは行っていても始まらないため、不動に聞きながら進めて行く。
最初に取り掛かったのは、池の掃除と鎮魂だ。ここにあった剣を回収して、池を掃除して、身代わり不動を埋める。なぜなら、この池にも龍神が住み着いていた。ならばその龍神を祓うためにこの池を清める必要があったからだ。
そもそも池などを家に作るのはオススメしないらしい。その池に何かが住み着く可能性があるからだ。しっかりと地鎮祭をして作って、手入れをするならいいが、それを怠れば龍神やカッパなどの水神が住み着くそうだ。その神に対してしっかりと祀るならいいが、そういう神は大概見返りを要求される。カッパ程度なら大怪我程度で済むが、龍神にまでもなると人の命を奪って行く。そうして死んだ人間の死に方は目も向けられないほど酷い死に方をするらしい。しかし、それが一人で済めばいいが、龍神の大きさや力の強さによっては一家丸ごと死んで行くらしい。
「よし、こんな感じでいいです。今からここの地鎮祭をするためお酒を持って来てください。」
そういうと用意してくれていたお酒を持って来てくれた。それを池にまき、お経を唱える。これにより地鎮祭は終了だ。水は張らないままにしておく。水がなければ、龍神たちは住まないからだ。
そんなことをしていて2時間弱はたったか、爺さんが帰ってきた。しかし、忘れ物と言っていたが、一人の女性を連れてきていた。ショートカットの女性だ。なんとなく、男子を勘違いさせてしまいそうな服装と甘い香りの香水をしている。
『あの女、観音菩薩が降りている。この前話しておった奴じゃろう。』
なんで連れてきたかは大体予想できた。あの子は全てが見える。なら、あの子が見て、俺が祓えばそれが一番いい方法なのだろう。
「初めまして、八雲先生。わたし、木ノ本美鈴と言います。今日はよろしくお願いします。」
先生!?なんでそんな呼び方!?
「この職に就いたものは、そう呼ばれるのじゃ。慣れろ。」
そう爺さんに心を読まれたように言われた。こちらも自己紹介をして、次の行動に移る。
次は、この家にすがってきている仏の問題だ。仏とは二種類の意味がある。一つが、仏陀のことを指し、もう一つが死んだ人々のことを指す。俺らのいう仏は後者にあたる。
仏が成仏できてないために生きているものたちにすがってきている。その仏の問題を解決するためには仏たちの願いや悩みを解決せねばならない。
不動を置く予定の部屋に全員で行き、一番問題があると言われていた長男を俺の前に座らせて不動に聞いて見た。と同時に美鈴さんにも見てもらっていた。
『この家には、成仏できてない仏が8人いる。この仏は、全てがこの家のものらしい。』
8人も成仏していないって・・・それだけこの世に未練があるのやら・・・
「先生、この家のはこの仏たちは処刑されています。むか何かあったのでしょう。」
小声で言われた。処刑されたってどういうことだよ。
と思っているといきなり隣から叫び声が聞こえた。ここにいたみんながびっくりした。
「大きな龍がいます!」
そんなことを言われ、みんなが怖がる。ただ、俺は何かおかしいと思った。この感じ前にもあったような・・・
『怖がるな人間たちよ。わしは、龍王だ。その男に用があってきている。』
やっぱり、あの時に酒を飲んだ龍王だ。そのことを説明して、何の用かと聞いて見た。
『この辺りにある龍神たちはわしが話をつけてくる。」
そう行って、龍神はどこへ行ってしまった。美鈴さんはホッとしていた。
「すごいですね。龍神ではなく龍王を従えているなんて。私、龍王を始めて見ました。」
なんか、すごく熱いまなざしを感じる。これが高校時代なら、俺は間違えなく勘違いしていただろう。
しかし、ここでそろそろ本題だ。
「この家の人で処刑された人いますか?」
このまま、問題を切り出さずやんわりと聞いて探るには性に合わない。
『龍王が帰ってくるまでに片付けろ』
不動から急かされる。しかし、俺は、答えてくれないだろうなと思っていた。
しかし、旦那さんが葛藤しながらも口を開いてくれた。
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