第7話 龍王との出会い
一晩明け、今日もあの場所へ向かう。
バイクで45分近くかかるというのはそこそこ遠いです。
朝8時ぐらいに着いたとはいえ、これは・・・
人が溢れかえるぐらい多い・・・なんで??
「おーい!八雲くんや〜。こっちに来て〜。」
そう言われ家に上がり、昨日の仏間に座らせられる。
なにするんやろ?そう思いながら、辺りを見渡す。
笑いながら喜んで入り人が多い。昨日見た有吉さん達と同じ反応だ。
「え〜、長らく不在だった当主がやって来てくれました。今日はその祝いの席として、お楽しみください。」
そういうとテーブルに乗り切れない料理が運ばれて来た。美味しそうだ。しかし、俺は挨拶をしなければならないということをさっき聞いた。
みんなの目線が料理から俺に向けられる。
何にも考えてないが、変なこと言うわけにもいかない。
どうしようかな。
「え〜。本日はお集まりいただいてありがとうございます。え〜・・・」
挨拶が止まってしまう。何を言っていいかわからない。
俺は、ここのことについて何も知らない。というか、つい3日前に不動明王というものについて知った。そんな俺が、何年も前からここに来ている人たちに俺がいうことなんて・・・
『お前が思っていることを言うのがいいんじゃないか?変に取り繕うな。』
俺は、そう言われた瞬間何かが吹っ切れた気がした。
「え〜。俺は不動明王と出会ってまだ3日しか経っていません。まだ右も左もわかりません。しかし、俺は、自分にできることは精一杯やろうと思うので、これからよろしくお願いします。」
頑張った。俺は頑張ったぞ!
みんなが俺に対して色々な反応をする。拍手する人でも、笑いながらであったり、不安そうな人もいる。
しかし、みんな期待という感情を持っているみたいだ。
そうして、みんな食事に手をつけ始めた。俺も料理に手をつける。美味しい。とにかくどの料理もうまい!!
この料理は、全部爺さんが作ってくれたらしい。
爺さん、あんた何者だよ・・・
『このような光景は、何度も見たが良いものだな。』
不動が言っている。そうか、俺は・・・いや、俺たちはこんな光景を見れるように頑張らなくてはならないのかもしれない。そう思うとやる気が出て来た。
そんなこんなで宴も終わり、すっかり夕方も過ぎようとしていた。その時だった。
何か人ならざるものがこちらに来ている気がする。数は少ないが、力が大きい。
『心配ない。今くるもの達は挨拶をしに来たもの達だな。』
そうしていると、いろいろな形で挨拶が来ていた。一番多かったのは玄関口に手紙が投げ込まれていた。差出人は書いてなかったが。誰のものかは不動が教えてくれた。
この山に住み着く付喪神やこの山を納めているヌシなどからだ。
その夜俺は爺さんの家に泊まることにした。バイトも休みの連絡を入れ、晩飯を食べ、裏の縁側で爺さんと酒を飲んでいた。
「ここでまた酒を飲むことができるとは・・・人生何があるかわからんの〜。」
そう言いながら爺さんが酒を仰ぐ。俺は爺さんからいろいろな話を聞いた。先代のことやこれからの俺がしなければならないこと。そして、爺さんがトイレに行っていた時のことだ。
『わしも混ぜてくれぬかのう?』
そんなことを言いながら縁側の真ん中にあるここいらで一番大きい木の上から一人の老人が降りて来た。その老人は、薄紫色の和服を羽織っていた。
「いいですよ。酒は大勢で飲むほうが楽しい。」
そう行って俺は、グラスを渡し、酒を注ぐ。乾杯をし、飲む。ふたりともいい飲みっぷりだ。
『やはり、酒はうまいの。特に人と飲む酒は格別にうまい。』
そう言いながら、一升瓶に半分以上あった日本酒を飲み干しいた。俺は、よく飲む爺さんだと思った。
しばらくして、トイレに一行っていた爺さんがこちらに向かってきている足音がした。
その足跡を聞いて、老人が立ち上がった。
『さてそろそろ帰らねばならぬ。若いのこれは酒の礼だ。今度はわしのところで飲もう。』
そういうときていた羽織と懐から水晶を渡して、風とともに消えて行った。
「いや〜。歳をとると、トイレが近くていやになるの・・・おい!一人で酒を飲み干すものがあるか!!ってその羽織と水晶は・・・」
爺さんがボヤキ、怒ろうとするがそんなことはどうでもいいかのように、渡された羽織と水晶を手に取りよく見る。
「これは、龍王の羽織と御霊石じゃ。なぜお主が・・・」
「知らない爺さんが現れて、いきなり酒を飲ませてくれと言い、飲みながら話していたら最後にこれをくれた。そんなにすごいものなのか?」
俺が、何食わぬ顔で聞くと、爺さんはやれやれという顔で説明してくれた。
なんでも龍神とは神とは言われるが人間に仇なす龍の方が多いらしい。しかしそんな中でも、徳を積み、しっかりと人間を守護していく龍神は龍王となり、不動明王や観音菩薩に仕えるものもいる。不動明王であれば倶利伽羅龍王と呼ばれ不動明王の剣に巻きつき、いかなる魔にも恐れられる龍になり。観音菩薩に使えるならば、観音菩薩をしっかりと支えていく龍になる。
その龍王の御霊や羽織を貰うということは、今後は龍王も従えるということらしい。
『お主は人ならざるものから好かれるのかもな。』
そう不動明王から言われた。
確かに昔から神社や仏閣に興味があったがそんなこと・・・
そんなことを思いながら、爺さんとの酒も飲み終わり寝室で寝ようとする。
不動明王だけではなく龍王にも出会い、俺の日常は変わった。
龍王という神さえも俺に対して敬意を払ってくれた。
しかし、俺の中には不安がある。
いろいろな方たちが俺を助けてくれているが、自分はそれだけの価値がある存在なのかどうか。
そんなことを考えながら眠りについた。
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