第3話 行き着いた先にいた1人の老人
晴れた初夏の夏を法定速度ギリギリの速度で走って行く。体を包み込むような風と風切り音と自分の横を走る車のエンジン音などが混ざって聞こえてくる。
バイクは、危険な乗り物だがこのスリルと風が楽しめる非日常な乗り物とも言える。車が社会で一般的な乗り物が日常だと俺は考える。 手軽に味わえるこの感覚はたまらない。
『そこの道に逸れて、山に登って行け。そうすれば開けた場所が見えてくる。』
アメリカンのバイクは、山を登るのには適していない。そんなこと考えてないだろうと思えるこの道を登って行く。
5分ほど登ると開けた場所がある。そこにバイクを止めてヘルメットを取る。
「気持ちいいな、山の中は。俺の家の周辺とは大違いだな。」
そんなことを言っていると、一本横道が見える。普段なら見過ごしそうな道だ。雑草が生えていてそこそこ大きめな気が並んでいる。
『そこをまっすぐ行け。そこに我が望む土地がある。』
ほんとかよ!?ここら辺の目的地なら絶対修行僧ぐらいしか住まんぞ!!
文句を言いながらも進んで行く。
でも不思議だ、雑草などが生えてはいるが、定期的に何かが通っている感じがする。 ただし、動物ではなく人が手入れしている感じだ。
『ここだ。ここが今日の目的の場所だ。 良い眺めだろう。』
なんだここは!なんでこんなところにからぶき屋根の平屋が立っているんだ!!それも人が住んでいる形跡がある。ただ、ついさっきまでここにいたような感じだ。
「珍しいのぉ〜。何年振りかに私の知らない人がここを訪れるとは。」
びっくりして、声にならないような叫び声をあげた。なんだ!?人の気配が全くしなかった。
いくら老人が落ち着いているからと言っても、ある程度はわかる。
「突然ここに来て、大きい声をあげてしまってすいません。ここに住んでいる人ですか?」
軽く頭を下げながら聞いて見た。
「その通りじゃ。わしは、この場所で暮らしながらここにくる人の悩みなどを聞いている、吾郷
というものだ。」
なんでだろう。この吾郷という爺さんと話していると心が落ち着く。なんだか不動明王と話している感覚に近い。しかし、少し違う。年老いた人の落ち着きもある。
「お前さん、ここに来たには理由があるだろう。しかし、ここにくる人間にはないモノを持
っているの。」
再度驚く。この人何故わかるんだ!俺が訳ありできた人だって!!
「ここには、ある方に言われて来ました。教えてください。何故わかるのですか!!」
爺さんはヨホホと笑いながら微笑む。
「何故って、ここは不動明王を祀り続けている場所だからな。お前さん、不動に導かれてやって
きたのだろう?』
そんな土地だったのか。しかし、それがわかってもこの爺さんの正体がわからん。
『この老人はお前と同じ人だ。しかし不動明王ではなく、我の横に鎮座する矜羯羅童子と制咜
迦童子を宿すものだ。いわば、おまえの補佐をしてくれる者だ。』
いやいやいやいや!いきなり補佐とか言われても意味わかんないですよ!
「まあ、立ち話もなんですし、この先は家に上がってから話しましょうか。」
そう言って、爺さんに誘われ家の中に入って行く。
何かに導かれるようにきたのだが、もしかしたら来るべきしてきた場所なのかもしれない。そんな感じがしてきた。
森の木々が風に揺られ、家の後ろに立つひときわ大きい樹木が、僕のことを歓迎したように優しく揺れる。
初めて何かに見入ってしまった。
自分の見たことのないものを見るのがこれほどまでに心の奥が熱くなり、鼓動が早くなるのを感じる。
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