ベンガルちゃんの覚醒

 《いや、君はしなくていい。俺が祈って、君に力を与えるよ。……ジャパリパークにどんな影響があるが分からないから、使いたくはなかったけど、ね。》

 「?!」

 しようとしたら、僕は止められて。 

 どうやら、虎猫が何か、力を与えると。そのために祈る。

 「!」

 《……大いなる星々の輝きよ。我が祈りと共に、彼の者に力を与えよ。彼の者に、祝福あらんことを。》

 祝詞か。

 やがて虎猫は呟きだし。合わせて、僕の手首に熱い物を感じたと思い、見れば。

 手首に、ミサンガのような模様が浮かび上がる。

 何だろうと、思うものの。

 《……〝コネクト〟。》

 僕が、言葉を導き出すよりも先に、虎猫が呟いて。

 「?!」

 途端、僕の体中を、電撃が駆け巡る感覚がして。

 また、手にしている剣も、その刀身を強く発光させる。

 「……な、何?!こ、これ?!」

 僕は、驚きつつも、状況把握したく、聞く。 

 《ちょっとした、おまじないさ。ああ、これは秘密な。》

 「?!」

 答えてくれるものの、おまじないだと。

 なお、その先は秘密だと、笑顔で隠されてしまい、どうしようもない。 

 でも、虎猫が僕に力を与えたのは事実。

 ならと、僕はきっと、セルリアンたちを睨み付けて。

 地面を蹴り、跳躍する。

 「?!」

 その跳躍、大きくあり。素早くあり。

 また、落雷の音のような響きも伴う。

 何てことだと思うものの、次の思考が辿り着く前に僕は、既に相手の前にあった。

 相手は、反応が遅れているようで。 

 「……!」 

 隙を捉えたと思い、僕は剣を振るった。

 光に触れたその先に、セルリアンは消滅する。

 「えっ?えぇっ?!あ、あなたどこの子?!」

 「?!さ、サーバル!!それよりも……。」

 凪いだ先に、サーバルと、もう一人のネコ科のフレンズがいて。

 先ほどの悲壮どこへかキョトンともしている。 

 「?!な、何てフレンズなのです?!」

 「こ、この状況下でも、動けるなんて。やはり、只者じゃありませんね。」

 「!」

 離れた所からは。

 アフリカオオコノハズクとワシミミズクが驚きの声を上げている。

 「……。」

 説明したくもあるけれど、何よりも状況を打開しないといけないし。

 そのために、僕は目配せもせずに、周りを見渡して。

 セルリアンを見付けたら、また、地面を蹴り、向かう。

 落雷の音、響かせて。あっという間に接近するなら、セルリアンを消滅させる。

 そうしたなら、もちろん近くにいるフレンズに驚かれ。

 なお、僕は目配せするよりもまた。

 獲物を求める獣のように、セルリアンを探した。 

 「……!」

 探していると、セルリアンたちの動きに変化が。

 分散していたようだが、今度は集合して、徒党を組むようで。 

 おまけに、狙いは僕ときた。現に、僕を見据えるかのように。

 《!……好都合だね。今の君なら、あれぐらい余裕だ。それに、フレンズたちへの被害を減らせる!》

 「!……うん。」

 一見すれば、不利かな。

 でも虎猫は、逆に有利な状況かも、と。

 他のフレンズが、被害に遭わずに、思う存分に戦えるからか。

 願ってもいないか。僕は、理解したように頷いて。 

 「……っ!!」 

 小さく息を吐いて、また地面を蹴った。

 落雷の音を響かせて、突撃して。

 阻むように、セルリアンたちは壁となっていくが。

 今の僕には、問題ない。躊躇なく、手にした剣を振るった。 

 振れただけで、消滅し。

 なおも、抗うか。

 僕の見えていない場所から攻撃しようとしたが。

 反応よく動く僕の身体は、素早く反転して、相手を殲滅して見せた。

 群がっていたであろう。

 セルリアンたちは、僕が動きを止めた時には、全て、消滅していて。  

 つまりは、巨大なセルリアン以外を、僕一人で倒してしまったのだ。

 「……ふぅ。」

 一息つき、軽く汗を拭い、巨大セルリアンを見据える。 

 巨大セルリアンは、自分一人だけになると思い知るなら、また蠢きだし。

 ドロドロした黒い液体をまた、吐き出してくる。

 「!……ぬぅ。」

 このままじゃ、また繰り返されるだけだ。困ったものだと、唸ってもしまう。

 「ベンガル!」

 「!」

 「そのまま、巨大セルリアンをやるのです!」

 そんな折、空から声が掛かれば、あのかばんさんの付き人のフレンズ。

 言うことには、このままじゃ、埒が明かないと。

 そのまま、あの巨大セルリアンを倒してしまえと。

 聞き、また、見れば。

 確かにと、頷けよう。 

 「我々では、まともに動けないですけど。」

 「ですが、応援を送ることはできます。」

 「!」

 さらに、言われることには。

 この状況において、動けるのは僕だけであるが。

 だが、自分たちもまた、動きたくある。

 そう、心を僕に託すと。

 耳にして僕は、振り返り、フレンズたちを見据えるなら。

 僕は、つい腕を突き出した。

 それが、何を意味するか、互いによく分からない。でも、そうしたい。 

 フレンズたちは、首を傾げるが。僕の方は、そっと目を瞑り。

 ふと耳元に、多数の声援を、加えて、歓声も耳にする。

 まるで、英雄として讃えるかのよう。

 ……もちろん、それは、僕の記憶じゃない気がする。まさか、虎猫の……。

 ……どうであれ、僕は今、その英雄のようなものだ。

 分からないなら分からないままでいいと、僕は目を見開いて、頷いて。

 「……行ってくるよ。」

 そう言って、また、巨大セルリアンを見据えた。

 光の剣を掲げ、構え。

 僕は、無意識に目を瞑る。静けさが、辺りに立ち込めて。

 「……!」

 しかし耳元は、相変わらず声援が響く。

 なお、フレンズたちではない、もっと別の。大多数の人たちの。

 英雄を称える、声。 

 英雄になれと、背中を押す声。

 力へと、変わるか。背中の、記念楯が熱く。

 ―うー!がおー!!

 「!」

 声援に、やがてその、フレンズたちの掛け声が混じり、僕は目を見開いた。

 かっと開いた時に合わせ、風が凪ぎ。身体は、異様に熱を持ち。

 また、僕の手にする光の剣は、太陽にも負けない輝きを発していて。

 最早これは、これには、どんなセルリアンも勝てない。

 言わしめるほどの、力の奔流である。

 「っいっけぇえええええええ!!」

 僕は叫ぶなら、光の剣を振り下ろした。

 またも、風が凪ぐ。 

 伴って、光の刃は、突き進んで。

 「!」

 巨大セルリアンを、一撃で両断、また、その向こうの海まで、両断してしまう。

 そうであっても、セルリアンは再生しようと蠢きだす。

 僕は見逃すまいと、振り下ろした剣を、水平に持ち。

 横に凪ぐ。

 光の剣は、またも衝撃を伴って突き進み。一撃で横に両断した。 

 その衝撃が大きいか、切り口は大きく開いていき。

 「!」

 その際、体内にある、光の球体がどろりと開いた空間に、出そうになっていた。

 それは、吸収されたかばんさんと、キュルルである。

 このままだと、そのまま海に落ちてしまいそう。 

 早く助けないと。

 「……。」 

 できるだろうか?僕は、自分に問う。 

 できるだろう。自分の中が、そう答える。 

 頷くなら、僕はまた、地面を蹴り、駆け出した。

 跳躍も、鳥のフレンズに負けず劣らず高く。 

 開いた空間を容易に目指せよう。

 僕は、開いた空間に突入するなら、光の剣を口に咥えて、両手を広げ。

 出てきた球体二つを、僕は受け止め抱えた。救出に成功したのだ。

 「……!」

 そのタイミングで。

  開けた身体を、もう一度閉じたく、セルリアンが蠢きだしたなら。

 僕は、口に咥えていた光の剣を離して。

 「……!行けっ!」 

 宙に放られた剣にて、念じる。

 すると光の剣は、さも、僕が持っているかのように浮遊して。

 「……!」 

 念じれば、僕が振るうように、宙に浮いた剣は縦横無尽に振るいだした。

 詳しくは知らないけれど、そのような使い方もできるみたい。

 なるほど、これなら、今のように両手が塞がっていても、戦えるね。 

 また、おかげか、風が凪いでいて。

 僕は、戻るのにそれを利用しようと閃いては。 

 思い切って、凪いだ瞬間に風を蹴るように足を動かした。

 「……!!」

 予想通りで、風に乗るかのよう、僕は思いっきり跳躍して。

 あっという間に、元の砂浜に戻ってきた。 

 地に足を下ろして、腕に抱えた二つの虹色の球体を下ろすなら。

 振り返り、巨大セルリアンを見る。 

 巨大セルリアンは、再生するよりも早く。

 開けた空間にある光の剣に、ズタズタに引き裂かれていて。

 今にも、崩れ去りそうな雰囲気に思える。

 終わりかと思える時に、僕は手を掲げた。

 応じる。

 光の剣は、その場から飛翔して、僕の手元まで戻ってきた。

 掴み、振り下ろして。光の刃を閉じる。

 同時に、光が飛び散り、巨大なセルリアンは、消滅した。

 「……。」 

 海風が凪ぐなら、静けさに。

 それこそ、僕があんな立ち振る舞いを見せたとは思えないほど。

 最初、僕がこの地に来た時と同じ。

 そこには、そう、まるで何もなかったかのような、静けさだった。

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