攻撃が効かない?!大ピンチ!!

 「?!うぁ?!」

 合わせて、ステージの方から大音量の音楽が流れだし。 

 加えて、観客席から歓声が上がる。思わぬ音量に、僕は耳を倒して塞いだ。

 苦痛も一瞬感じたが、かばんさんを見逃すまいと。

 顔を上げて、視覚だけでも追う。

 追えばかばんさんは、観客席の、それもステージ真下に向かっていて。

 その先には、同じように帽子を被っている子どもと。

 僕と同じような、ネコ科のフレンズが二人いた。

 そうだね。

 昨日の夕焼けに、砂浜で見たグループの一つだね。

 そう、希望に溢れた顔をして、これからも冒険をしようとしていた……。

 かばんさんとは、別のグループ。

 その三人組は、かばんさんが近付いてくることに気付いて、顔を向ける。 

 「あれ?かばんちゃん?」

 その内の一人。

 縞模様が所々見受けられて。

 スカートには斑点模様のある、女の子が不思議そうに聞いてきて。

 「!」

 その女の子、もしかしてと思い出すなら。

 僕が真似させられそうになった、サーバルじゃないかな。

 まあ、その子が、何であれ。

 不思議そうにかばんさんを見つめて。

 でもかばんさんは、答えることはなく、むしろ、必死に。 

 「逃げて!!!」

 叫ぶ。

 色々なフレンズいるけど。

 何よりも、その子はなおのこと大事そうだからこそ、と。

 「?!……来る?!」 

 そのタイミングで、軽く揺れて。

 予感が走った。

 僕は、何事と見渡せば、揺れは次第に近付いてきて。

 その震源が、はっきりと分かることには、ステージまで揺れ出して。

 「に、逃げるわよっ!!」

 「はぇぇ~……。」 

 「やっべぇ!!!」

 「そんなぁ~!」

 「くっ!!」 

 察知してか、ステージ横から、ペンギンみたいな服装の人。

 いや、フレンズが飛び出し逃げていく。

 「!!」

 入れ替わりか、間一髪にか。 

 津波のような大波が迫り、ステージが水没。

 「!わぁ!!……くっ!」

 堰き止められない。

 大波はやがて、観客席にまで迫り、当然、僕がいる場所は、すぐに水没しそう。

 僕は、逃げ出したくもなったけど。

 それでは間に合わないと思うなら、僕は翻って、大波を睨み。 

 「……フォトンシールド!」 

 手を前に突き出し、構えた。

 大波が迫る僕との間に、光の壁が出来上がり。波は堰き止めることはできた。

 つい、驚きに思えるものの、しかし、僕だけでしか効果がないや。

 他は……。

 「!!」

 「わぁぁ?!」

 「きゅ、キュルルちゃん!!」

 「キュルル!!きゃああ!!」

 大波にさらわれてしまう。

 完全に飲まれてしまう。

 なお、飛べるフレンズは、迫る危機に飛び上がり、事なきを得るが。

 僕は、何とかしようと手を伸ばすが、何もできない。

 しまったと思うものの。

 「!」

 「ぷはぁ!!」

 「えうう!しょっぱ~い!!」

 ……流されて、沖まで行くことはない。

 勢いによって倒されてか、その場に座り込んでいて。 

 ただし、海水に濡れている。

 「……。」

 大事ではない、それには安堵したのだが。

 問題は……。

 「し、しまったのです!!」

 「来ました!!」

 アフリカオオコノハズクと、ワシミミズクが叫び示すこと。

 僕は、見渡して、その示されることを探せば。

 「!!」

 その、水没しているステージのすぐ向こうに、巨大で黒い何かがいた。

 また、目玉のようなのをぎらつかせて、睨んでもいる。 

 船のような、形状ともとれよう。

 つまりは、アフリカオオコノハズクや、ワシミミズクが話していた。

 あのセルリアン!

 「!」

 何かに狙い定めるために、一点を見据えてきて。

 捉えたか、軽く蠢いたなら。

 艦首の部分から、黒いドロドロした触手みたいな物を伸ばしていく。

 その狙いは。

 「!!あっ!!」

 「そんな!!」

 向かう先は、かばんさん、キュルルと二人のネコ科のフレンズ。その内の、誰?

 「き、キュルルちゃん!!」

 「キュルル!!」

 「!!」

 「!……っ!」

 「?!わぁあああ?!」

 キュルルのよう。

 触手は、キュルルを捉えたなら、素早く取り囲み。

 締めた後、包み込んで、中に取り込んでいく。

 そうなると、……誰も手を出せない。  

 また、素早くあって、僕の反応も遅れて。二人のネコ科のフレンズも、また。

 かばんさんは、……驚きの表情をするが。

 何だか諦めたような、そうでないような、複雑な表情をしてしまった。

 「!」

 触手が本体に戻っていくなら、キュルルと思しき姿は溶けて。

 虹色の球体になって。

 合わせてか、セルリアンの身体が沸騰するように蠢きだす。 

 唸り声のような音を上げるなら。

 船体の横から、次から次へと、陸を闊歩するためにか脚が生えた。

 同時に、体外に黒い液体も噴き出すなら、本体と同じように蠢き。 

 フレンズのような姿を形成していく。

 「!!」 

 昨日見たような、フレンズ型セルリアン。

 単なるセルリアンではなく、より強力なタイプだと。 

 どうも、キュルルを取り込んだことによって。

 何かセルリアン側に変化が起き。

 次々とそんなセルリアンを生み出すことができるようになったということか。

 それはそうと、囲まれる。

 ……でも。

 「うみゃぁぁ!!!キュルルちゃんを返して~!!」

 サーバルは、これまでのことを呆然と見ていたいが。

 キュルルが奪われたとは気付いていて。

 はっと我に返るなら、吠えて、立ち上がり。

 爪を輝かせては、その巨大セルリアンへと立ち向かっていく。 

 「って、サーバル!!あなただけじゃ無理よ!!」

 追従に、もう一人のネコ科のフレンズも。吠えて、爪を輝かせて。

 「くっ!まずいですね。」

 「まずいですよ。我々も、いいや、我々の群れ一同も、立ち向かわないと。」

 アフリカオオコノハズク、ワシミミズクも追従するみたい。 

 彼女らは、瞳を輝かせて、翼をはためかせ、突っ込もうと。

 「!!」

 長が立ち向かうというならばと、散り散りに逃げていたフレンズたちも。

 振り返り、あのセルリアンに立ち向かおうと吠えて。 

 向かって、駆け出して、群がっていく。

 そうして、大群対大群の、大規模な戦いへなりえるか。

 ……いいや。

 「?!」

 軽い衝撃と共に。

 黒い霧のような物が、巨大セルリアンから放出されるなら。

 「?!みゃぁあああ?!」

 「?!きゃああ!!ち、力がっ!!」

 「?!」

 群がってきたフレンズたちに異変が。

 先ほどまで、勢いよく駆け出していたのに。

 さらには、サーバルみたいに、輝きだって放出していたであろう。 

 だが、その黒い霧が放出された途端、輝きを失って、膝を崩してしまった。

 勢いが、助けようという意思が。

 この場から、消え去るのを感じ取る。

 これは……何?

 《?!……まさか、〝セルハーモニー〟?》

 「?!」

 腕の通信機から、虎猫が驚きの声を上げる。

 「……って、何?」

 僕は、驚きの声に、つい合わせてしまうものの。

 だが、そういうのは知らない僕は、次には首を傾げてしまう。 

 《……あ~と……だな。》

 「!」

 《簡単に言ったら、サンドスターの輝きを奪うもの。……だと通じないね。要するに、フレンズの元気を奪っちゃうんだ。》

 虎猫が言うことには、フレンズの元気を奪う……何からしい。 

 「……。」

 そのうえで、周りを見れば、確かにと僕は頷く。

 虎猫の言葉通り、皆元気を失っている。 

 そうなると……。

 「!」

 大ピンチと、僕の頭に思考がよぎった。

 何もできないフレンズよそに、セルリアンたちは進軍していく。

 その最中に、目に付いたか、かばんさんを見据えてもいる。 

 「!!まずい!」

 反応が遅れる。おまけに、僕から遠く。

 かばんさんがピンチになって、駆け出しても、間に合わない。

 「だ、ダメ!!ダメ!!」

 「!」

 傍らにて。 

 サーバルが叫ぶ。 

 元気を失い、這いつくばるしかできないでいるが、それでも、叫ぶ。

 「……。」

 「?!」

 かばんさんは、だが、応じることはない。

 ただぼんやりと、巨大セルリアンを見つめるだけであり。

 こちらも、元気を失って?いいや、元から。

 ではなぜ?

 やがて、悟ったのか?

 かばんさんは静かに目を瞑る。

 それは、諦めの表情。傷付いた心、晴れることはない。

 このままそう、セルリアンに食べられてしまっても、構わないと。

 応じるように、巨大セルリアンは触手を伸ばし。

 また、助けようにも、フレンズの周辺にはセルリアンたちが囲み、動けない。

 「……かばんちゃん!!!!」

 動けなくても、祈りたい。

 助けようと、叫びたい。サーバルはそういう思いで叫び、途端、涙が零れて。

 「!」

 その情景に、かばんさんははっとなって、目を開き、そんなサーバルを見た。 

 「……。」

 「!!」

 口元が緩み、柔らかな視線を向けているか。何だか、安らかな感じでもあって。

 悲しいかな。その、和らぎを見れないのが。

 悲しいかな。

 無情にもセルリアンの触手は、かばんさんを喰らわんと大きく開き。

 包んでしまう。 

 その際、目元から光る滴が飛び散り。 

 何であるか、確かめようにも、かばんさんは呑み込まれてしまう。

 挙句、溶かされるように虹色の球体になってしまい。

 「だ、ダメ!!!ダメェ!!!」 

 サーバルは叫ぶ。  

 泣き叫ぶ。涙飛び散らせながら。

 「!」

 立ち上がろうとする。元気がないにも関わらず。

 大切な、そう、大切な人だからこそ、失いたくないと動く。 

 次第に、その身体は、よろめきながらも立ち。

 「うぅぅぅうう!!か、返してよぉぉぉ!!」

 大きく、咆哮するようにサーバルが叫ぶなら、地を踏みしめるほどに。

 気付いたフレンズ型セルリアンは、しかし、容赦ない。 

 そんサーバル嘲笑うように、攻撃を仕掛けてくるのだ。

 「!!うみゅあ!!」 

 反撃に出るも、本調子でないサーバルが、敵うわけもなく。

 「?!みゃああ!!」

 あっさりと、砂浜に叩き伏せられてしまった。

 「……。」

 見ていて僕は。見ていることしかできなかった僕は。

 見ていられなくなった僕は。

 視線を睨みへと変えるなら、砂浜を蹴り、疾走する。

 どうやら、僕の方は。

 かのセルリアンによるセルハーモニーに対して、耐性があるのか。

 ああ、そうか。思い出す。

 この背中の記念楯は、サンドスタージェネレーターだったね。

 僕は、だから元気なままなのか。

 ならばと、そっと、求めるように手を伸ばすなら。

 僕のバックパックから光の剣の柄が飛んできて。

 迸らせる。 

 「おぉおりゃああ!!」

 光の剣を迸らせて、斬りつけようと振り抜いた。当たれば、砕けるだろう。

 昨日と同じだ。

 「?!なっ?!」

 だったのに。かわされた?!

 まるで、予期したかのよう。セルリアンに、学習能力なんて、あったのか?!

 その光景に、ぎょっとしてしまう。

 《!!……どうやら、あのかばんさんとやらを吸収したことによって、知能を手に入れてしまったのかも!》

 「?!え、そ、そんな……。でも何で?!」

 《かばんは、人のフレンズだからさ。だから、他のフレンズと比べて、知能が非常に高くある。そんなのをセルリアンが吸収したら、知能を付けてしまったんだ!》 

 「?!で、でも……。は、早すぎない?!」

 傍ら、虎猫からの通信があり。

 こちらも、僕と同じように、ぎょっとしているかのよう。

 その上で、分析して言うことには、かばんさんを吸収してしまったから。

 セルリアンの能力が強化されてしまったらしい。

 だが、僕の感想としては、恐ろしい速度だと。

 強化が反映さるのその速度に、軽く青冷めてしまう。

 《それが、セルリアンという存在みたいだね。……ぬぅ。》

 「!……ぬぅ。」 

 締め括りには、それが、セルリアンという存在なのだろうとして。

 それが厄介であると僕も虎猫も知るなら、同じように呻いてしまった。

 「どーしよ。」

 ……からの、困ったと。

 僕の攻撃が、ああも避けられるとは。

 まさしく、どうしよう。

 救い求めて、通信機を見るが。

 虎猫もまた、困ったかのよう。

 「?!」

 何も思いつかないか。とうとう諦めに、虎猫は祈りのポーズをとっていた。

 「……ぬぅ。」 

 こちらも、それしかないかと、祈りそうに。

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