ワンパンの戦いと、おいのり。
「!……?」
漆黒の闇の向こうに、蠢く物を見付けて。
じっと、見据えるなら、仄かな明かりの元に進み出ると。
「?!」
フレンズのような、異形の何かだと分かる。
フレンズのような、動物の特徴をしているけれど、全身黒く、所々蠢いて。
また、顔面は大きな目玉一つだけの、妙な。
それら、明らかな異様。フレンズじゃないと、なぜだか本能的に察してしまう。
そのために、そっと身を屈めるなら、猫のように爪を立てて。
尻尾を伸ばし、膨らます。
《セルリアンだね。》
「!」
その正体を、セルリアンだと虎猫は称する。
本能的に分かり、僕は敵だと感じる。
《……だめだ。あれはフレンズの能力をどうにかしてコピーしたタイプだから、君じゃまともにやり合っても勝てないよ。使うんだ!君に渡しただろう?スターセイバーだ。それを使って!》
「!……うん!」
だが、僕だけでは分析は難しかったみたい。
モニターしてくれる虎猫は、冷静に言ってきて。
何でも、フレンズの能力を持っているからだとか。
だからこそ、僕単独じゃ、相手にするのは難しいと。
「……でも、何で?普通のと違うの?」
《ああ。普通のセルリアンは、そこらの物品を真似るだけだから。でも、君が相対するタイプは違う。あれは、フレンズの能力を持っているからね、君はイエネコのフレンズのようだから、まともにやっても、難しい。ネズミ系統のフレンズなら、何とかなりそうなものだけど、ね。》
「……ぬぅ。」
何でだろうと聞くなら。
通常のセルリアンは、物を真似るだけだとされて。
なお、フレンズを真似た場合は、相手によっては、こちらが不利だとも。
聞き終えて、僕は呻く。通常なら、相手にならないとされると。
そこで、構えを解いて。
僕はバックパックに手をやって、前に持ってきては、まさぐると。
「!」
筒状の物を手にし、出し、またバックパックを背負い直す。
手にした筒状の物を、身体の前に向けて。
「……。」
だが、使ったことのない物に、それこそ違和感があり。
どう使うのかという戸惑いにも僕は動けないでいた。
《大丈夫。君には俺の経験とか、技術を与えている。その、俺の与えた〝輝き〟を信じるんだ。》
「!……うん。」
そこに、虎猫はアドバイスをしてくれて。
まるで、映画みたいな言い回しに、はたして信じていいのか疑問あれど。
今はその言葉を信じるしかないと、頷いた。
そっと、筒状の物に両手を添えて。
「……!」
かっと、瞳を見開いたなら、筒の横にあるスイッチを押す。
すると、独特な音と共に、光の刃が闇の中に浮かび上がる。
光に当てられてか?援軍に沢山のセルリアンが現れる。
フレンズの姿をしたタイプもいれば。
虎猫の言った、そこらの物を真似しただけのタイプも。
《ぬぅ。どうやら、サンドスターの輝きに、他のセルリアンも集まってきたって感じだね。しょうがない、このまま、押し切ろう!大丈夫、君ならできるから。》
「!!……う、うん。」
虎猫の分析では。
スターセイバーの輝き。
……ああ、言っていたけど、サンドスターの輝きに惹かれて。
他のセルリアンまでも呼び寄せたと。
致し方ないけれど、僕がやるしかないならとして。
正直、逃げたくもなったが。
呼び寄せたのが僕だというなら、僕がやるしかないや。
頷いては、剣をやや引いて、飛び掛かるかのように身を引く。
「……っ!!」
軽く息を吐いて、その通り、飛び掛かった。
一閃とは、このことか。
目にも留まらぬようにと、僕は素早く地を蹴り。
間髪入れず、剣を振り抜く。
それだけ、たった一撃のそれだけで。
何と、フレンズの真似をしているとされる、強力そうなセルリアンを、両断。
消滅させたのだ。
「!!」
皮切りに、集まったセルリアンたちも負けじと飛び掛かるか。
身を引き、こちらを見据えてきて。
……どうも、いわゆる逃げるとかいうのはないみたい。
《信じろ。己の力を。》
「!……う、うん!!」
僕は臆しそうになったが、虎猫が言うことには、やれると信じろと。
逃げることは、どうも難しいようだから。
ならと、僕は構え直して、見据える。
剣を片手に、もう片方の手は、猫が爪を広げるようにして。そんな、独特に。
声を吐くことなく、セルリアンたちが突っ込んでくるなら。
「……ふぅっ!!!」
僕は息を吐いて、剣を振り回した。
剣の、光の刀身が触れる度、セルリアンたちは爆散して。
ついには、迫ってきたセルリアンたちは、消滅してしまう。
「……はぁ、はぁ……。」
僕は、その殺陣とも呼べる光景に、息荒げながら。
自分のこととは思えないこれに、驚きさえ浮かんできそう。
……やはり、虎猫が僕に与えた力だろうか。
だとすると、かの虎猫はどれほど強いのだろうかとも思えて。
《どうやら、終わったみたいだね。すごいや!俺が思った以上だよ。やはり、フレンズは只者じゃないな。》
「!……そ、そう?」
様子をモニターしていたであろう虎猫は、逆に驚きの声を上げていて。
耳にして僕は、つい照れてしまう。
《……と、照れている所悪いけど、問題はまだあったね。》
「!」
ただ、虎猫はそこで終わりでもないとして。
《食料だね。寝床も……。結構色々と大変だぁ。》
「あ……。」
忘れかけていたけれど、ご飯も食べないといけないし、寝床も。
「どーしよー……。」
僕は虎猫の言葉に、困ったと感じてしまった。
どうしようか。そう、アイデアは浮かばないまま。
救いさえ求めようと僕は、周辺を見渡すが。
せいぜい、かばんさんが住む建物ぐらいで後は暗闇ばかり。
「……。」
この時へのアドバイスは、虎猫もできないらしく。
こちらも困ったと腕組んで唸ってもいるようだ。
静かにするしかなく。
なら僕がするのは、……お祈り。
跪いて。
そっと、両手を合わせて目を瞑った。
《……君もそうするか。ほんと、俺と似ているな。まあ、そうするしかもう方法が思い浮かばないし……。》
「……!」
傍ら、虎猫もまた言っていて。似ているとも言われて。
その声聞いて、少しだけ目を開けると。
虎猫もまた、座って祈るかのように手を合わせてもいた。
……似ているね、ほんと……。
「……。」
とは言っても。
それで、どうにかなるとか思えないのだけど……。
《……あ、ちなみに、だけど……。》
「!」
ちなみにとか、余談話をついでに虎猫は言ってくれるようで。
何だろうと、耳を傾けるなら。
《……俺ってね、祈ると何かいいことがあったんだ。そう、助けられることがあったりとかね。もしかしたら、……なんてね、あはは……。》
「!……え~……。」
どうやら、以前にもやったことがあるみたい。
虎猫は、照れながら笑みを浮かべるけれど、僕の方は懐疑的になり。
ジト目でそんな虎猫を見てしまった。
そう思っていたら……。
「誰かいるのです、助手。」
「セルリアンの大群がいたはずなのですが……。どこにいったのですか?変ですね、博士。」
「!!」
何か、そう、助けることがあるみたい。
誰かが僕の近くに来ていて。
周辺に何が起こったのかを、探っている。
僕は、顔を上げて、見渡して。
誰であるか見れば、暗がりで。
ほとんど光のない中。
幸い、猫の瞳であるがためにその造形が掴めるなら、鳥のフレンズのよう。
「……フクロウ!」
また、夜目の利く様子に、特徴に、フクロウであると僕はピンとくる。
「……。」
なら、これは、このフレンズたちは……。
「!!」
もしや、あのかばんさんを介抱した……!
そう思考が辿り着く前に、盛大に僕のお腹が鳴る。
「!この音は!」
「誰かのお腹の音です。博士ですか?」
「違います。私のお腹は、あんな獣のような音を立てません。他のフレンズに違いないです。」
「そうですか。」
「……。」
流石は、フクロウのフレンズ。
僕のお腹の音まで的確に聞く。
でも、言われようが何だか傷付きそうで、僕は耳を垂らしてしまった。
《……どうやら、接触できそうだね。》
「……うん。でも、皮肉な気がする。」
《……あはは。俺も皮肉なことはよくあったし……。》
なお、幸いはこのまま行けば、上手く接触できるかもしれないと虎猫は言って。
僕は、素直に頷けないで、そう、皮肉だと。
虎猫は、苦笑した。
経験があったらしく……。
「む!声が聞こえるです!」
「フレンズがいるのですね。行きましょう。」
「!」
また、虎猫との会話は、フクロウのフレンズたちを呼び寄せることにも成功し。
僕らの存在を察知して、接近しているよう。
ほとんど音を立てないでいるが、感覚が鋭敏となっているか、僕は察知できる。
そうして、僕の眼前へと現れる。
二人のフレンズ。
片方はアフリカオオコノハズク。
もう片方は、ワシミミズク。
両者とも、夕暮れの時、かばんさんを介抱していたフレンズだ。
「!」
僕は、気付くなら、垂れた耳を跳ねさせて、見据えて。
「なんと!」
「博士。このフレンズは……?」
「猫……。イエネコ……ですか?しかし、このような姿では……。」
「イエネコのフレンズ……。分からないですね。」
一方で向こうも反応があり。
それも、僕の姿に、驚いてもいるみたい。
向こうが知っている姿とは違うらしく、混乱も見受けられる。
「……。」
「……。」
「……?」
その驚きから、僕と二人が、対峙する形になり。妙な沈黙が流れて。
「……あ。」
音を与えるとすれば、僕のお腹の音だ。
派手に鳴り、僕は顔を赤くする。
「ふむ。」
「……事情はどうであれ、お腹を空かせていますね。この際、詳しく調べるついでに、食事を与えるのはどうでしょう?」
「いいですね、助手。」
「!」
おかげか。
僕は二人に受け入れられそうな雰囲気となる。フ
クロウの二人は、互いを見て、頷き合い、やがて僕を見据える。
「お前、お腹が空いているですか?」
「なら、案内するですよ。」
「!」
見据えた上で、僕に提案してくる。
お腹が空いている以上、また、寝床も確保しなくちゃいけない状況も相まって。
僕には選択肢は少なく。
「……う、は、はい。」
頷くしかない。
「……。」
頷いた際に、通信機を見て。
思うに、虎猫の言った通り、案外効果があるみたい。
虎猫は、苦笑を返して、答えとした。
「では、ついて来るです。」
「!」
言われて、顔を上げるなら。
言われるがまま、僕は二人について行くことにした。
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