ようこそ?……でもないね。

 地上が迫る、それも、砂浜に。

 その際に、落下速度は緩やかに。やがては、柔らかく着地する。

 バックパックも追従して。僕は手に取って、背負い、顔を上げて、見渡す。

 砂浜だけど、夕焼け迫る情景にて。

 また、海の向こうには、瓦解したホテルのような建物だって見える。

 その間、砂浜には、沢山の人影があり。

 「……?」

 僕は、しかし、癖で身を屈めて、姿を隠しつつ、様子を伺うことにする。 

 その沢山の人影、よく見れば。

 僕と同じように、動物の耳や尻尾を持つ、人間?いや、フレンズたちのよう。

 二つほどのグループに分かれていて、なお、両方とも、帽子を被った人?がいる。

 片方は、まるで一仕事を終えて喜んでいるよう。

 片方は、落胆に、泣き崩れていて。

 試合の後?ついそう思ってしまうが、いいや、何か違うような。

 見渡すが、試合とやらがあったようには見えないし。これは?疑問に首を傾げて。

 《あ~あ~!聞こえるかい?》

 「!!わぁ?!……って?」

 そうしていると。

 僕の背中から声が聞こえて。

 つい驚きに飛び上がってしまうが。

 思い出すことには、虎猫から貰った通信機だと。

 冷静になり、僕はバックパックを下ろし、中から通信機を取り出し。

 腕に装着、下ろしたバックパックはまた背負い直すと。

 通信機が点滅して、さも僕を呼んでいるかのよう。

 「……ええと。」 

 どうすればいいかな、思いつつ、半球を撫でるなら。

 「!!わぁ?!」

 立体的に、半球状のすぐ上に映像が投影されて。

 僕はまた、驚きの声を上げてしまった。

 なお、投影された映像は、あの虎猫のようだけど。

 《……ごめんごめん、驚かせたね。》

 「……い、いえ。」

 虎猫は謝るものの、あの虎猫だと僕は分かるなら、安堵して。

 また、冷静になってもいるからか、そんなことはないと、首を横に振る。

 《そうか。……で、その様子だと、ジャパリパークに到着したみたいだね?》

 「!……え、ええ。」

 それならいいかとして。

 虎猫は次に、僕に現在位置のことを聞いてくる。僕は、頷いて。

 《……よぅし。なら、周りを観察してみて?何か、こう、パークの危機らしいことがあるか、ね?俺も見るから。》

 「!う、うん。」

 虎猫は、次には様子を見たいとして。

 僕は頷いて、通信機を向けつつ、そっと、影から例の砂浜を見た。 

 もちろん、変わらず、落胆の夕焼けのまま。 

 「!」

 違いとしては。 

 泣き崩れた人は、そのままフレンズに介抱されているみたい。

 他方のグループは、そうこれからまた、新しい冒険を始めるような。 

 そんな具合。

 「……。」

 だからで、僕は疑問を抱く。

 パークの危機とやらがあるとは、到底思えず。

 《う~ん。何だか物悲しい……ってだけだね。》

 「!……あ、うん。」

 虎猫も、同意。

 「とても、危機が迫っているようには思えないや。」

 同意の次に、僕は感じたそのことを告げた。

 言っている通り、危機が迫っているようには思えないと。

 《だね。その分析は正しい。……でも、まだ現れていないだけで、危機はこれからだと思うんだ。》

 「!」

 虎猫が僕に対して言うことは、だがまだだからとして。

 《とりあえず、話が分かるフレンズに言っておいた方がいいかも。》

 「?」

 忠告か、警告に。 

 話が分かるフレンズに、通しておこうと提案を。

 なお僕は、それに該当するのは誰か、分からずに首を傾げた。

 「……あの、それって誰ですか?お話が分かりそうな人、思いつかないや。」 

 《!》

 話が進む前に、僕は素直に聞いてみることに。

 虎猫は、悩むように、猫なのに腕を組んでいて。

 《……俺が把握している情報だと、〝かばん〟と呼ばれるフレンズ。ああ、特徴としては、鞄を持ち、帽子を被っている。》

 「!」

 《次には、〝アフリカオオコノハズク〟のフレンズ、〝ワシミミズク〟のフレンズ、かな。……近くにいるか、分かる?》

 「!あ、うん!……ええと、どっちだろう。」 

 答えには、そう示して。 

 言われるままに僕は、夕焼けの砂浜をくまなく探す。 

 眩しさに、その像を捉えることが難しい状況であるが、僕は目を細めて。

 「……う~ん。」

 結果、迷ってしまうことになる。

 今現在、〝かばん〟に該当する人物を探せば。

 両方のグループに特徴のある人が一人いる状態であり。

 ああ、細かい所は違うけれど。

 そう、介抱されている該当人物は、僕と同じ、背負うタイプの鞄だけど。

 これから冒険でもしそうな方の該当人物は、肩掛けのタイプ。

 「分かんないや。」

 僕は虎猫に言い、首を傾げた。

 《……そっか。なら、後に上げた二人はどうだい?ああ、特徴はこれかな。》

 「!」

 その、どちらが〝かばん〟と呼ばれる人なのか分からないままならとして。

 虎猫は軽く悩んだ後、通信機を点滅させて、投影された情報を変えたようだ。

 宙に投影される情報に、後に上げた二人の情報を投じて。

 見れば、頭に鳥の翼を持つ人のよう。

 後は、アフリカオオコノハズクや、ワシミミズクなど。

 元となった鳥の特徴を持つみたい。

 《この二人はどうだい?いそう?》

 「!……あ、うん。……ええと。」

 その情報を提示して、虎猫は聞いてきた。 

 僕は耳にして、改めてグループを見る。

 「!」

 見つかりそう。

 片方のグループは、僕みたいな猫のような雰囲気のフレンズで。

 もう片方は、そう、鞄を持つフレンズを介抱するグループだけど。

 そちらの方は、明らかに鳥の特徴をしていた。

 「……分かったかも!」

 《!……そうか。なら、見せて。》

 「!う、うん。」

 分かったと言うなら。

 虎猫の映像がまた出てきて、頷いて。見せて欲しいと言ってきた。

 僕もまた、了解して頷いて、通信機をそちらの方に向ける。

 虎猫の映像は、向けられた方に身体を動かして。

 猫の座りを見せて、じっと見据える。

 《……彼女たちだ。……でも……。》

 「!……?」

 見据えて、冷静に断定してくれはするが、妙に気に掛かる言い残しがあり。

 そこへ疑問が浮かんで仕方ない。

 何でまた?

 《……接触は、難しいかもしれないね。今、かばんさんは、心を痛めているから。今、危機を伝えても、多分彼女は動かない。……ぬぅ。》

 「!……はぁ。」

 虎猫が言うには、かなりショックがあったらしく。

 あの精神状態では、お話を聞くのも厳しいかもしれないと。

 懸念に、虎猫は唸った。

 僕は、そうかと思い、頷く。

 《……接触は今はしない方がいいけど、彼女たちの家くらいは把握してもいいかもしれないな。》

 「!」

 《後々訪ねる際に、その方がいいかもしれない。まあ、その、かばんさんのあんな状態俺たちで解決しようにも、どうにもできないからね。時間を置くべきだね。》

 「……あ、うん。分かった。」

 ただし、このまま何もしないままというわけにもいかず。

 虎猫が言うには、後のために場所の把握はしておこうと提案してきた。

 そも、精神状態も悪いと見抜いていて。

 解決に僕らでは力不足、他に任せるしかないとして。

 僕は、それならと頷いた。

 「……。」

 一方、かばんさんは、介抱されながら移動していて。

 僕は、静かに見るしかない。

 なお、そうであっても、本能的に耳を澄まして、聴覚で姿を追う。

 「!……。」

 ふと、何かの所に止まるなら、乗り。

 入れ違いに、ええと、エンジン音かな、妙に甲高い音が上がり。

 予想されるのは、乗り物かもしれない。

 そうなると、僕の足で追いつけなくなるかも。

 「……追うね、僕。」

 《!……ああ。こちらもモニターしておく。切るよ。》

 思い僕は、追おうとする。もちろん、虎猫にも伝わっていて。

 虎猫は、僕のアイデアを聞き、頷くなら通信を切った。

 通信機から光は消え、静かになる。見て僕は、見失いまいと駆け出した。


 「……。」

 置いて行かれまいと駆け出したが……。思った以上に乗り物は遅いみたい。

 その場所まで行けば、乗り物は動き出したばかりで。

 その乗り物、トラクターみたいだった。

 僕が歩いても追い付けそうな、そんな速度である。

 引かれる荷台に、かばんさんはいて、でも、俯いたまま。

 その側には、例の二人がいてどうしようもないと、静かに見ている。

 僕は、接近しようとも思ったが。

 かばんさんがとても話を聞いてくれる状態じゃないと言われていることから。

 過度に接近もできないで。

 付かず離れずの距離を保ちつつ、トラクターを追う。

 その時だけど、あんまり気付かれなかったのは、僕が猫だったからかな。  

 フクロウの仲間の二人にも、気付かれないでいた。

 そうやって、追跡していくなら、やがて周辺は夜の闇に落ちていき。

 灯りない周辺は、星明りだけが頼りの、漆黒へとなる。

 ああ、光源はもう一つあったね。

 物悲しく灯る、トラクターのヘッドライト。

 乗っている人が、静かにしているために、寂しさが余計に感じられた。

 そんな寂しい漆黒の旅路も、終わるみたい。

 ある場所に来るなら、トラクターは止まる。

 仄かな明かりに照らされた先は、人工的な建物のよう。

 そうだね。

 人が住む家、ってところかな。

 主の帰りを察してか、口を開くように、門を開けていく。

 開いたならトラクターは、またその足を進めていった。

 「!!……。」

 僕は、見失うまいと駆けだそうとするが。

 《待って。……ここまででいいよ。残念だけど、今会っても、心を閉ざしている今、話を聞いてくれるとは思えないから。時間が解決するのを待つしかないよ。》

 「!……そっか。……そんなものなの?」

 《それが、人って存在かな。そう、思い悩む、そんな……。》

 「へぇ。」 

 待ったが途端掛かり。また、通信機からその像が浮かび。

 虎猫は手を出していて。それも、先に聞いていたのを繰り返す形。

 人の、思い悩む様子だとも。不思議に思うものの、それが人なのだと。

 言われて僕は、閉じていく門を、見つめるしかない。

 「……。」

 門が閉じたら、静かに。

 光も、通信機から漏れる明かりだけに。

 ついで、僕らではどうにもできないというこの状況に、小さく鼻息を。

 溜息を漏らした。

 「……美味しいご飯を食べたり、寝たりしたら、回復するかなぁ?」

 《……俺や君なら、それでもいいけど、ね。あの様子じゃ、……難しいかも。》

 「……ぬぅ。」

 元気になる方法、この静かな空間に投じる。

 けれど、それは僕らなら、って虎猫に突っ込まれてしまい。

 挙句、難しいとまで言われると、何とも言えなくなり、僕は唸るしかない。

 「……あ。」 

 唸ったら、反発にか。

 僕のお腹が鳴った。

 《……。》

 虎猫は、沈黙していて、聞かなかったことにしているけれど。

 僕自身が、言ったことに身体が正直に反応してしまったみたい。

 「……どーしよ。」

 《……俺も今、忘れていたと思ったよ。道具は渡したけど、食料は……。あ、ごめん、それの転送とかは無理だった……。》

 「……。」

 どうしようと呟くなら。 

 虎猫に謝られてしまう。どうも、道具を渡すことはできても。

 食料は難しかったみたいで、しまったといった顔をしていた。

 僕は、お腹は空いていても、それは虎猫のせいじゃないと首を横に振る。

 《!……いや~な予感。》

 「!……。」

 さらに悪いことには、虎猫は何かを察していて。悪い予感がするとまで。

 お腹が空いたのに、その問題を解決するよりも前に、ね。

 なお、僕は虎猫の察しにはっとなって、身構えて周辺を見る。

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