いこうよっ!じゃぱりぱーくへっ!
―これは、物じゃないけれど、俺が得た知識、経験、技術、君に与えるよ。君の力になるさ。……俺が行って、どうにかできたらよかったけど、でも、できない。なら、せめて君に、力を与えて、ね?
「!」
―頼むよ。
それは、物じゃない。
僕に、いわゆる力を与えると。
俺に浮遊して接近するなら。
そっと、虎猫は手を挙げて。
「!」
額にその手を当ててきた。
柔らかい肉球の感触がして。
同時に、頭の中に、色々な情報が頭を駆け巡ってくる。
僕の経験したことではないけれど。
虎猫の経験。なお、その虎猫は、情報の中では僕みたいな人の姿であって。
そして、皆から尊敬される、〝勇者〟のようだった。
虎猫が英雄となる時。
歓声の中、腕を突き出して応じる。口元に蓄えた笑みには、誇りさえ感じた。
そんな虎猫の経験は、思い出だけにとどまらない。
数々の死線、それでいて、手にした光の刃の剣を持って、薙ぎ払っていく。
疲れさえ感じさせず、ひたすら終わるまで戦い抜く。そんな経験。
それが、さも自分のことのように僕の中へと入っていった。
「……!!」
やがて、手は離れて。
情報の奔流は、やんで。
僕は、目を丸くしながら、虎猫を見つめている。
―それじゃ、頼んだよ、猫耳英雄!
「!」
僕がそうしている中、そう言って虎猫はまた浮遊していく。
入れ替わりに、与えられる物品を寄せていき。
また、手を振って僕を見送るなら、僕の身体は、落とされるように離れていく。
思わず叫びそうになったが、……不思議と大丈夫だと思えてくる。
それは、虎猫の力が成せるからか。
いいや、僕に与えられた、経験、知識、力が、自信を呼び起こしている。
「……。」
口元に、余裕の笑みを浮かべて、僕は落ちていく。
すっと、身体を反転させて、落ちていく先を向いて。
そう、さも猫がそうするように。
自分のようで、自分じゃない、だけど、自分である。
頭の中では、色々と交錯しているけれども。
そうして僕は、落下の先に見える、情景へと向かう。
ジャパリパークへと。
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