ばーすでー!
その時僕は生まれた。
そこは、闇夜の空に、星がひしめく場所だった。
僕は、ただ、ぼんやりとその空を見つめているだけで。
「……?」
不思議なことに、星々が煌めきを僕に与えてきて。
何かを、形作っていく。
おぼろげな感覚で、自分が自分じゃなくなっていく、そんな感覚に。
でも、よく分からないや。
―顔を、上げてごらん。
「……?」
そんな時、優しい誰かが、僕に声を掛けてくる。男の子の声。
聞き覚えのあるようで、ないような。
何でだろうかと、首を傾げつつも。
言われた通り、顔を上げるように動かした。
「……?」
上げたなら、銀色の反射を目にして。
そこに、誰かの姿が映し出される。そこにある姿は、縞模様の猫耳に、尻尾。
体には、同じく縞模様を模した風合いの服をした子が映っている。人間の子かな?
それも、そうだね、僕みたいな猫に憧れて、コスプレしちゃう子かな?
不思議に思い、手を伸ばしたら、その人物も僕と同じように手を伸ばす。
「……あれ?」
何でだろう。僕と同じように手を伸ばすなんて、不思議。
「あれ?」
……何でだろう。
僕の手が、その鏡の向こうの子と同じ、人の子の手になっちゃってる。不思議。
首を傾げていると。
―うん!そうだね。そう思っちゃうよね。
「?!ひぅ?!」
そんな子の側に、いきなり虎猫が現れた。
そう、どこにでもいるような、僕も見たことがある、野良猫っぽい、……誰か。
それも、人の子の言葉で、語り掛けても。
悲鳴を上げて、飛び跳ねそうになる。
―……ここまで、驚かれるとは……。
予想外みたい。
虎猫は、キョトンとしていて。
―まあ、その内になれるかな。……そんなことよりも、この、ここ、君が見ているこれの姿。気になるよね?
「!……うん。」
そんなキョトンとしたことも、そこまでにして。
虎猫は頭を振り払って、続けるみたい。
それも、僕が気にしているその子のこと。
―実感ないと思うけど、これ、君なんだ。
「?!えっ?!」
その子、とは?……僕らしい。でも、僕は……。
そう、僕は猫。イエネコ。でも、ただのイエネコじゃないよ。
なんでも、人がヤマネコと交配させて作ったっていう、ベンガルだって。
縞模様で、とても野性味抜群。それが誇りの猫だったのに。
僕は、人の子と同じ姿だって?!……信じられないや。
―〝フレンズ〟って言って、アニマルガールなんだ。サンドスターの力で、動物が、そんな姿になるんだって。ああ、俺はよく知らないけどね。
「……フレンズ?」
―……〝友達〟って、ことかな。まあ、その、皆の友達って感じ?
「!!……うぅ~ん。」
―……。
信じられないと僕は思ったけれど、虎猫も難しいみたい。
挙句、僕が悩むものだから、どう言えばいいか、分からないみたい。
―……まあ、その内慣れるから。そういうものってことで、いい?
「!!……うん。」
致し方ないという様子になるなら、その内慣れると繰り返されて。
それならと、僕は頷くしかない。
―……さて、容姿のことどうこうはもうこれまでにしよう。そもそも、君の姿を説明したくて、この場を設けたわけじゃないし……。ね、そこは、理解して欲しい。
「!!……。」
話を変えるみたい。虎猫は言ってきて。
その口調に、ひっ迫した様子を感じ、僕は聞き入るために、耳を澄ます。
―君を呼んだ、ううん、フレンズとしたのは、理由があるんだ。
「!……う、うん。」
始まりに、僕を呼んだ理由から。
緊張に、僕は唾を飲みこむ。
―端的に言ったら、〝パークの危機〟だ。
「うん……うん?」
理由には、まずは〝パークの危機〟だとされるが。
聞いていて、最初こそ僕は頷いてはいたが。
やっぱり分からないで、僕は首を傾げた。
―……まあ、説明が不足しているから、やっぱり理解していないって感じだね?
「!!あ、うん。ごめんなさい。」
―いや、いいよ。こちらも、説明が不足しているから、ごめんね。
説明不足がために、僕が理解できないと気付くなら、困ったという様子をして。
僕は、何だか悪いと思い、謝罪をするが。
僕がそうする必要はないと言われて。
僕は、それならと頷いて、虎猫の次の言葉を促す。
―ここでいう〝パーク〟とは、〝ジャパリパーク〟ということだ。ああ、君みたいな、動物の特徴をしている人が住んでいる場所だね。平和な世界なんだ。
「!……そうなの?」
―ああ。争いも何もない。誰もが皆、十人十色と認め合う、そんな……。はぁ、まあ、溜息つくのもなんだけど、俺がもし、そこに転生できたなら、なんてね。
「!……。」
促されて、パークとやらを言ってくるなら。
〝ジャパリパーク〟……っていう、所らしい。
それに、聞く話じゃ、平和な所みたい。
平和……ということは、僕で言うなら、いつでもご飯を貰えて。
それで、いつでもどこでも眠れる、そんな安心した世界かな。
天国みたいなところだね。
―……話が逸れたよ。ごめんよ。
「!!……あ、うん。いいえ、気にしていないです。」
僕の想像を悟ってもいて、虎猫はまた、謝ってきて。
なお、僕は気にしていなとして、続けさせようと促した。
―パークの危機についてだけど……。
「うん。」
―詳細は分からない。だけど、予感がするんだ。そもそも、俺が、ジャパリパークに出向けるなら、何とかできないこともないのだけども、生憎と、俺は離れられない。そこで君に頼みたいんだ。
「!!」
その続き、それこそ本題かな。
虎猫が言うことには、詳細は結局分からないけれど、予感がして。
だけじゃない、本当は自分が出向きたいとも。
その懸念。
また、見え隠れする、助けたいという意思。
さらには、もどかしさ。だからこそ、僕に託したいと。
真剣さも感じて、僕はごくりと緊張に喉を鳴らした。
―パークを救って欲しい!
「!!……うぅ?!」
その真剣さとは。
パークの危機とやらを、僕によって救って欲しいと頼み込まれる。
虎猫は、らしく頭を下げてきて。僕は……。
僕は、上手く返事ができないで、ぎょっとしてしまった。
その通りで。
僕は、そもそも今しがたフレンズ、……になったばかり。
残念ながら、言われても自信満々に頷くことはできない。
何せ、何ができるのか、分からないし。
だから、頷くことができない。
―……分かっている。君はまだ、目覚めたばかり。不安なのも仕方ない。そこで、俺が君を支援する。ここからじゃ、戦いに赴けないけども、君の支援なら、何とかできそうだからさ。
「!」
そんな僕に。
代わりとお詫びにか、虎猫は精一杯支援をすると。
「……!」
不安はあれど、虎猫の精一杯の様子に、頷いて聞き入り。
―さて、これから、ジャパリパークに行くだろうからね、いくつか道具を渡しておこうと思う。
「!」
誠意として、まず、道具を渡すと。
―まずはこの〝楯〟だ。
「!」
まずはとして、虎猫が言い示すのは、〝楯〟だとして。軽く虎猫は上を見上げて。
すると、宙に、本くらいの大きさの長方形の何かが浮かび上がり。
装飾を施していき、象っていく。象られた楯は、僕の目の前に浮遊してくる。
楯、まあ、そう形容できるけど。
どちらかというと、防御用のそれではなく、記念楯といった具合。
材質は、木とか、金属とかでできているのではなく、得体のしれない物のよう。
透明度が高く、所々から光が透き通るなら。
フィルムのように何か映像が浮かび上がり。
また、中央には、光源なく輝く、水晶玉が埋め込まれている、不思議な物。
楯……と虎猫が言っているから、そう呼んでおくか。
―ただの楯じゃない。これは、色々なエネルギー源、いやそれだけじゃない、思い出を元に、サンドスターを生成できるジェネレーターになっている。持っていれば、フレンズを形作るサンドスターが枯渇することはない。まあ、ついでに、他のフレンズを助けるためにも役立てるだろう。使い方は君に任せるよ。
「!……あ、うん。」
楯は楯でも、記念楯じゃない。
何でも、サンドスターを生成するとかなんとか。
その辺はよく分からないけれど。
その虎猫が言い示す、支援のための道具であるなら、なるほどと。
―次はこれだよ。
「!」
次にはと虎猫は続けて。
また、宙を見上げたなら。
手持ちの細長い懐中電灯みたいな物が浮かび、形を象って。
また、僕の目の前に降りてくる。
「……?」
はっきり言って、懐中電灯以外の何物でもない。
およそ、不思議な虎猫が示すような、物品には程遠いとも思ってしまう。
それ故に、首を余計に傾げて。
―……まあ、そうなるね。
その反応もさもありなんとされて、虎猫も言葉に窮しているみたいだ。
―まあ、だけど。
「!」
そこで、この懐中電灯なる物を終わらせるのではない、と虎猫はまだ言うよう。
―単なる懐中電灯とか、思わないでよ。これは、サンドスターの光を刃にして扱える武器なんだ。〝サンドスターライトセイバー〟ってね。略称は、好きにしていいけど、俺は〝スターセイバー〟って呼んでるけど。……結構作るの大変だったんだよねほんと。
「!……うん。」
単なるものじゃない。
虎猫が告げるのは、〝サンドスターライトセイバー〟。
略して〝スターセイバー〟なる物だと。
作るのが大変だったと言うが、口調から滲み出る苦労伺えて。
言いはしないが、大切にしないと悲しみそうな。
僕は頷いて応じることにする。
―次はこれ。
「!」
まだまだ、与える物はあるとして。
虎猫はまたまた、宙を見上げては。
合わせて、何かがまたまた形作られていく。
今度は、腕時計のような物のようだが。
象られて、僕の目の前に来ると。
「!」
独特な腕時計……かな。
透明な半球を四角い枠で囲み。
それをベルトを通してあるだけの一見簡易な様子の。
ただし、時計というには、針がなく、時を刻めるのか甚だ疑問。
―時計と思っているようだけど、時計じゃない。これは、一種の通信機だ。俺と君を結び付けるものだよ。もしかしたら、聞きたいことがあるかと思うから、これで通信するといいよ。
「!」
通信機らしい。
僕が何か、疑問に思うことがあるなら、これで話し掛ければいいみたい。
ならと、僕は頷いた。
―あとこれは、ちょっとした物だけどさ、これも用意しておくよ。色々な物を入れるといいよ。
「!」
まだまだと、与える物はあって。
虎猫は宙を見上げるなら。
今度はやや大きい物が象られて。鞄……かな?いや、バックパック?
それが、形成されては先の3点と同じように、僕の目の前に浮遊する。
―これはバックパック。道具を入れるのに使うといい。それなりに大きいから、さっきの3つ入れても余裕があるよ。もし、何か貰ったら、この中に入れるといい。
「!……う、うん!」
虎猫が言うには、バックパックらしい。
その説明に、僕は頷いて。
―……さて、これで渡す物は終った……と言いたいところだけど。
「?」
虎猫はそれを示して、終わりにしようとしたところだったが。
まだあると言い残し。
何だろうと、僕は首を傾げて。
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