第10話 こうして元勇者から笑顔が消えた

「ねぇ、めぐみ。無理しなくていいからね」

 あるとき、友人は言った。

 何度目かの“仕事”を終え、“仕事”に慣れ始めてきた頃のことだ。

「いきなりどうしたの、ゆうき?」

「わたしたち、ロイヤリティを救って、それで終わりのはずだったんだよ」

「……?」

「だから、わたしたちがこれ以上戦う必要なんて、本当はなかったんだよ」

「……ゆうき?」

 めぐみは、ようやく気がついた。

「だから、ごめんね」

 その友人の目が、光を失っているということに。

 明るく、朗らかで、少し抜けていて、愛らしい、そんな友人の目が、希望を失っているということに。

「わたしがあの人にあんなことを言ったから、まだみんなを戦いに巻き込んでる。だから、ごめん。ごめんね……」

「ち、違うよ! わたしたちは、望んで戦ってるんだよ! ゆうきのせいだなんて、思ってないよ!」

「……うん」

 その言葉が、友人に届いていないのは明らかだった。

「めぐみは優しいね。ありがとう」

 その日を境に、友人は笑わなくなった。

 きっとずっと、無理をしていたのだろう。

 そしてきっと、これからもずっと、ひとりで無理をし続けるつもりなのだろう。

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救世後のもう一仕事 ~元魔王軍幹部の担任と元勇者の変身ヒロイン~ 折地成 @tamabk

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