今日のおいしそうな給食
「今日の給食、とってもおいしそう」
と投げかけられた言葉に、私は大変に顔を顰めました。
目の前の席の子の、お盆に乗った給食は、まるで、宝石でも詰め込まれたみたいにきらきらと輝いて、おいしそうな匂いをふくらませておりました。それを見れば見るほど、私のぶんは、いったいどんなものがくるのかと、そわそわと膝を震わして、唾をいっぱいのんで、胸をどきどきさして、うつむいておりました。
「ほら、ゆうくんのぶんだよ」
そう言って、大変にこやかに差し出されたようなお盆は、ひと目見て、落書きのようだと思うほどでした。あらかじめストローのさされたパック牛乳は、ぺしゃんこに潰され、ハンバーグを真っ白く塗りたくって、汁物はその殆どがこぼれ、お椀の隅にニンジンの輪切りが張り付き、ご飯の上には消しゴムのかすがちりばめてあり、その上から箸が直立に差し込まれておりました。
「わあ、……おいしそう」
「だろ? みんなでもりつけたんだよ」
すると、私たちの間に割り込んで、女の子が、
「しあげ、わすれてるよう」
と、無邪気な声で、舌をだらんと、垂らすと、その先端がすうっと伸びてゆき、プリンに透明の柱を立てました。柱はどんどんと細まり、シロップとなって、艶めきました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます