今日のおいしそうな給食

「今日の給食、とってもおいしそう」

 と投げかけられた言葉に、私は大変に顔を顰めました。

 目の前の席の子の、お盆に乗った給食は、まるで、宝石でも詰め込まれたみたいにきらきらと輝いて、おいしそうな匂いをふくらませておりました。それを見れば見るほど、私のぶんは、いったいどんなものがくるのかと、そわそわと膝を震わして、唾をいっぱいのんで、胸をどきどきさして、うつむいておりました。

「ほら、ゆうくんのぶんだよ」

 そう言って、大変にこやかに差し出されたようなお盆は、ひと目見て、落書きのようだと思うほどでした。あらかじめストローのさされたパック牛乳は、ぺしゃんこに潰され、ハンバーグを真っ白く塗りたくって、汁物はその殆どがこぼれ、お椀の隅にニンジンの輪切りが張り付き、ご飯の上には消しゴムのかすがちりばめてあり、その上から箸が直立に差し込まれておりました。

「わあ、……おいしそう」

「だろ? みんなでもりつけたんだよ」

 すると、私たちの間に割り込んで、女の子が、

「しあげ、わすれてるよう」

 と、無邪気な声で、舌をだらんと、垂らすと、その先端がすうっと伸びてゆき、プリンに透明の柱を立てました。柱はどんどんと細まり、シロップとなって、艶めきました。













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