不器量の初恋
蜂が刺しでもしたみたく、ぱんぱんに膨れ上がった頬肉ににきびがうんと浮かんでいる。それには鼻も目も埋没するようで、けれども、唇だけがいやに立派に張り出しているのだった。
電源を落としたコンピュウタの画面に、そんな、醜悪な顔が映り込んでいた。
左右ひっくり返したって、上下逆さまにしたって、あまりに、気味の悪い面持ちなのだ。こういう時、きっと私は嘆息を吐いてしまうのだ。そして、無いような目の縁が、じんわりと、熱くなるのだった。
瞼をやおら下ろしていった。
そこには、表情も、背丈も、声風も、何もかも……、一切わからない――女の子が居るのだ。
先程、交わした睦言を思い返した。
〇
「俺はね、ミオちゃん、お前のことを愛しているよ……」
「ええ、わたしもよ、幸樹くん」
「なあ、俺は悪い人じゃないって、もうこれだけ長い間話をしたんだ、わかるだろう?」
「そうね……幸樹くんは、悪い人じゃないって、わかるわよ」
「じゃあ――」
「でも、でもね。いいじゃないの、これで。わたしたちはお互いを愛しあっていて、これだけ想いを伝えあっていて、それじゃ――それだけじゃあ、いけないの?」
「いけないことなんて、そりゃあないさ。……でも、俺たちは、もうあまりに精神的に繋がりいあっているじゃないか。それを断ち切るようなことは、何も無いよ」
「断ち切るのは無いでも、擦り減らすのよ。いやよ、そんなの」
「そんな……」
「ほら、みたこと? たったこれだけで、こうじゃないの。だから、いけないのよ。わたしたちみたいなのには、こういうので、いいのよ。ちょうど、いいのよ」
「愛する人だぜ? ちっとも、これっぽっちも気になりゃしないってば」
「そうやって、気にしないようにするんだわ、いい、それは酷いことなのよ? 悪いことを、思っていても言わないことがいいことだって、本気で思ってるの? 駄目よ。そんなの。根っからは、嫌なんだわ」
「俺たちは、人間なのに、この無性に重たい身体を、ただこうやって愛を叫ぶだけに滞らせておいていいと思うのか!」
「いいのよ」
「馬鹿を言え!」
「わたしたちが、この堂々巡りの地獄を終わらせる、先駆者になるのよ、……アダムとイヴのほうが、相応しいかしらん」
「それで、いいって言うのか……?」
「いいか、悪いかじゃないのよ!……そうしなきゃ、いけないのよ」
「俺たちが幸せでなくてもか?」
「いや!……何よ、幸せじゃないっていうの? そんなの、許せないわ。あれだけ私のことを愛していると言ったのに!……あいつらみたい!
「そうじゃない! 違うんだ!」
――『ミオさんが退室しました』
〇
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