連絡先

  未央に振り向いて貰うにはまずどうすれば良いのだろう。今僕らは席も隣で毎日たくさん喋っているが、もう1歩先へ進みたい。やはり正志のように連絡先を交換して毎日メールがしたい。

しかし異性同士の連絡先の交換と言うものはなかなか難しものだ。いきなり「連絡先教えてよ」などと聞いてしまっては不信感を持たれかねない。なにか聞いても不自然ではなくなる繋がりが欲しいところだが……


などとホームルーム中に考えていた僕の耳に、委員長の声が入ってきた。


「それじゃあ学園祭の役割分担を決めたいと思います。皆さん自分のやりたい役割のところで手をあげて下さい」


これはチャンスかも知れない。学園祭準備ともなれば2人で話せる機会も増えるし、何より至って自然に連絡先を交換することだってできる。なんとしてでもここで同じ役割を得なければならない。

黒板に役割が書き上げられていき、それぞれやりたい役割が読み上げられたところで挙手をし役割が決められることとなった。

未央はどこで手を上げるものかと様子を伺っていたが、これまた未央らしいというか、ほとんど人気の無い役割に手を挙げていた。しかもそこは男女両方とも必要とされていたので、未央と同じ役割になれればどんな役割でも構わないと思っていた僕はさりげなく同じ役割を得ることに成功した。意外にあっさりと同じ役割を得られてしまい僕は拍子抜けだった。その時ばかりは僕は神様に絶大な信仰を寄せた。信じるものは救われる。これからもお願いしますね神様。



それから数日後、学園祭に向け始めて役割ごとに集まりがあった。

僕と未央がなった役割は音響、照明係で、学園祭1日目に行われる公演ホールを貸し切ってのクラスや部活ごとのダンスや劇、歌などの演出を担当する。つまり僕らの仕事次第で出し物が成功するか否かが決まってくる。


あれ、意外にこの仕事責任重大だぞ……


音響照明担当のリーダーから仕事内容を聞いていくうちに僕は冷や汗が止まらなくなった。いや、確かに未央と同じでさえあればどんな役割でも構わないとは考えてたけど……音響照明とかめちゃめちゃ大事な部分じゃん。いやこれ絶対僕担当しちゃダメだっただろう。やる気起きないな…


などと考えていた僕に未央が話しかけてきた。


「結構大変そうだね」


「そうだね、しかも責任もなかなか重大だよね」


「お互い頑張ろうね」


「うん、なんか困ったことあったら助け合おう」


「いっぱい頼らせてもらうね」


などと言い未央は微笑んだ。いや、可愛すぎんだろ。めちゃめちゃやる気出たわ。


そうだ、今が連絡先を聞くチャンスかも知れない。そう思った僕は、さりげなく未央に切り出してみた。


「そういえば、一応連絡先とか交換しとこ。今後必要になるかも知れないし」


「そうだね、交換しとこっか」


などと言葉を交わした後に、僕らは連絡先を交換した。その場で僕は、


『よろしくね』


と送ってみた。すると、


『こちらこそよろしく(^ ^)』


と、顔文字付きで返ってきた。そこでお互いの目が合い、なんとなく面白くなって2人で笑い合った。


その日の夜、未央にメッセージを送ってみた。


『音響照明、大変そうだけど頑張ろうね』


すると返信は意外にも早くきた。


『頑張ろう(´∀`)絶対成功させようね』


いちいち顔文字を使ってくるのがとても可愛くて、なんとも未央らしい。その後しばらくメールし合った後僕はどうしても眠くなり寝てしまった。


布団の中で僕は携帯を大事そうに抱えたままであった。

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