嫉妬

新クラスになり、僕は偶然にも未央と同じクラス、しかも隣の席となった。毎朝おはようを交わし合い、授業の合間にもよく話すようになった。こう改めて未央と2人でたくさん話をしてみると、どれ程会話が心地よかったのかを実感した。そして話せば話すほど、もっとたくさん喋りたい、もっと未央のことをたくさん知りたいと思うようになってきた。


新クラスとなり1ヶ月ほどが過ぎたとある日のお昼、僕は新2年のクラスになり仲良くなった東條正志と一緒にご飯を食べていた。


「英之さ、クラスの女子の中で誰が1番可愛いと思う?」


「んー、うちのクラス結構可愛い人多いからな」


「それ俺も思った。まじで可愛い子多いしこのクラス最高」


「てか正志彼女いるだろ?あんまそんなこと言ってるとまた彼女に怒られるぞ」


「またとか言うな。昨日も怒られてなだめるの大変だったんだぞ」


「ちなみに正志は誰が1番可愛いと思う?」


「えーっとあの子、斎藤未央ちゃんって子」


その名前を聞いた時、僕はかなりドキッとした。

「確かに、席隣だけどめっちゃ可愛いと思う」


「そういや英之隣だったわ、ずるくね?」


「毎日喋ってるけどめっちゃ楽しいよ」




「俺は学校ではあんま喋らないけどメールならめっちゃするよ」

そういって正志は僕に未央とのトークを見せてきた。

そこに映る正志と未央との楽しげな会話を目にした時、僕は自分の胸が締め付けられるのを確かに感じた。

正志の性格を僕は知っているので、正志が未央と連絡を取りあっていることで嫌いになると事はない。とりあえず色んな女の子と仲良くしておく。そういう性格だし、はたから見ていてもとても面白かった。

それに正志に彼女がいるという事はそれなりに学年の中では有名な話ではあるので、正志と未央が恋愛関係に発展する事はないだろう。そんな事は頭では充分に分かっている。



分かってはいるがー



未央と正志のトークを見た時、僕が抱いた感情は確かに嫉妬に似た感情だった。


今まで僕は自分が未央に対してどのような感情を抱いているのかがあやふやであった。あまりにも全てにおいて綺麗で醜いところや汚い所が全くなかった。そんな未央のことを僕は今まで天使のようだと思ってきた。清廉で純粋で、そんな彼女を恋愛対象として自分なんかが見ていいいのか、純白な彼女に対する不純となり得るのではないかと思ってきた。


でも、この感情を抱いたときにようやく自覚した。


僕は未央のことが好きだ。自分でもどうしようもないくらいに、一緒に話せば鼓動は高鳴り、その綺麗な肌の輝きで君のことが直視するのが恥ずかしくなるくらいに、そして、君が他の男の人と喋っているのが、たとえそれが親友であろうともたまらなく嫌な気持ちになるほどに。



いつか誰かに未央をとられるかもしれない。席替えをすれば、席は離れ話す機会も減ってしまうかもしれない。


僕と未央との時間は着実に増えてきていて、僕の中での未央の存在も日に日に大きくなっている。しかし関わる機会が減ってしまえば、また前のように僕の中での未央が薄れていってしまうかもしれない。そんな事は絶対にいやだ。こんなにも大切な思いを失いたくなんてない。



僕は、この天使を絶対に振り向かせると心に誓った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る