第19話 久しき仲間
「『テレポート』!」
テレポートを使って、俺たちは魔王城に戻ってきた。
「よし、アロマ。まずは作戦会議だ。みんなを俺の部屋まで呼んでくれ。
「もちろん!今すぐ呼んでくるわね」
アロマが走って皆を呼びに行く。
「魔王さま。我ら8人衆、全員集合いたしました」
アトラスがそう言った。
「よし、じゃあ単刀直入に言うな」
俺は大きく息を吸い込んだ。
「このままだと、俺たちは勇者に殺される。全滅確定だ」
俺の言葉に、全員ざわつく。
「勇者の中の一人に『自在に操れる何でも斬れる光の剣』を使うやつと、『成長速度とステータスが10倍になる』やつの2人がいた」
俺は続けた。
「一人目も厄介だが、問題は二人目だ」
俺はポケットから戦闘力はかるやつを取り出した。
「これで見たときの戦闘力が、その勇者は3000万もあったんだ。ちなみに、アロマが2300万だ」
その言葉に、全員が驚愕の表情をする。
特に驚いていたのはしずくだった。
「えっ、うそでしょ!?みんなそんなに強かったの!?せめて5万くらいだと思ってたのに……」
「ちなみに、しずくは255万だったぞ」
「え!?あたしもそんなにあるの!?」
もう一度大きく息を吸い込み、俺はしゃべった。
「そこでだ。一旦、みんなの戦闘力とタレントを知っておきたい」
そう言うと、全員が頭を下げた。
「もちろんでございます!我らは魔王さまにお創り頂いた身。いくらでも我らを見ていただいて構いません!」
アトラスのその言葉に、他の7人も頷いた。
「よし、じゃあ早速」
俺は戦闘力はかるやつを一人一人に使っていった。
とは言っても、もうアロマとしずくは使ったことがあるので、他の6人を見ていく。
まずは、ソルトからだ。
レベル:600
戦闘力:2600000
タレント:跳躍
足に力を籠め、普通よりも高く跳ぶことができる。
戦闘力はしずくとあまり変わらない感じか。
タレントもいまいちパッとはしないな。
だが、こういうタレントが案外役に立ちこともある。
使い道を考えておこう。
次はリーンだ。
レベル:700
戦闘力:6700000
タレント:ダブルアタック
スキルや魔法を2個以上同時に使うことができる。
さすがはヴァンパイアといったところか、戦闘力が高い。
タレントもかなりすごい。
スキルや魔法によっては同時に使うと相性のいいものが多く存在する。
例えば、雨を降らせる魔法と氷属性の魔法を使うと氷の雨を降らせることができる。
だから、普通はそれを2人以上で同時に行うのだが、それを一人でできるのはすごいことだ。
まさか、リーンにこんなタレントがあったなんてな。
よし、次はクレアだな。
レベル:750
戦闘力:11000000
タレント:我流剣技
自分で様々な剣技を新たに生み出すことができる。また、一度見た剣技を一瞬で覚えることができる。ただし、このタレントによって覚えた剣技を使うとき、本来の威力の半分の威力になる。
おおっと、一気に戦闘力が上がったな。
1100万か、すごいな。
タレントも、自分で剣技を生み出せるとなれば、その可能性は無限大だ。
おそらく、前に見た光り輝く剣もクレアが生み出したものだろう。
これも、使い道を考えるのが楽しみだな。
次はグライドだな。
レベル:780
戦闘力:11500000
タレント:
一時的に理性を失う代わりに、全ステータスが10倍になる。ただし、効果は発動時から5分しか効かない。発動後は、気絶する。
戦闘力はクレアとほぼ同じか。
問題はタレントだな。
このタレントは、通常時に使うことはできなさそうだな。
本当に困ったとき、奥の手で使うタレントだ。
こんなかわいい見た目で、実は
……いや、ならないか。
次は、瑠璃か。
レベル:800
戦闘力:230000000
タレント:
血を失ったとき、攻撃力と瞬発力が上昇する。10㏄につき1.1倍になる。
驚いた、まさか戦闘力がアロマと同じだとは。
タレントも、戦えば戦うほど強くなれるものだ。
強い相手でも、十分に立ち向かえる。
血を失えば失うほど強くなるからな。
そもそも、素が強いんだ。
普通の相手では、傷一つ付けられないだろう。
これは期待できそうだな。
さて、最後はアトラスだな。
そう思い、表示された情報を読んだ。
「は?」
その情報に、思わずそう言ってしまった。
レベル:999
戦闘力:79000000
タレント:鑑定
相手のタレントが何かを見ることができる。
えっ、いやいや!戦闘力高すぎだろ!
なっ、7900万!?
あっ、圧倒的だ……!
タレントはこの戦闘力はかるやつのせいでもはや無意味だが、それでもこの戦闘力……。
……いける。
アトラスのこの強さがあれば、あの勇者に勝てるかもしれない!
「よし、じゃあ全員見たことだし、早速―――――」
作戦会議をしようと俺が言いかけたとき。
『ピンポーン』
そんな、クイズに正解したときみたいな音が聞こえてきた。
「なんだこの音?」
「ああ、これはね?魔王さまとアロマが王都に行ってる間に、この城に取り付けておいたんだよ、インターホンを」
しずくがそんなことを言った。
「インターホン?っていうことは誰かがこの魔王城に来たってことか?」
「そうみたいだね。『投影』を使ってみたらどうかな」
「そうだな。『投影』!」
俺は投影を使い、魔王城の外に繋げた。
投影したところにいたのは一人のタキシード姿の老人だった。
「何の御用でしょうか?」
老人に尋ねる。
『失礼。あなた様がフォート・アレイス様でしょうか?』
なッ!?
こ、この人、今俺の名前を……?
「……あなたはいったい何者ですか?なぜ俺の名前を知っているんですか?」
「これはこれは失礼しました。自己紹介をしておりませんでした」
老人はそういうと、お辞儀をしてこう言った。
「私は『セバス』といいます。あなた様の名前は、私の主人からお聞きしました」
主人から聞いただって?
俺の名前を知っているやつがいるだと?
「ま、まさか!?あなたの主人というのは……!?」
『はい。私の主人の名は『ドングラス・ルートリア』といいます』
嘘……だろ……!?
「魔王さま、そのドングラス?って誰なの?」
「……ドングラス・ルートリアは、昔の俺の仲間だ」
「ええっ!魔王さまの仲間ってまだ生きてたの!?だって、たしか何人も前の魔王に……」
「やめろアロマ!それ以上言うな!」
「ご、ごめんなさい……」
アロマが余計なことをしゃべろうとしたので声を荒げる。
「……で?あいつの使者さんが、俺に何の用でしょうか?」
『はい。あなた様には、急いで王都のご主人様のお屋敷に来ていただきたいとのことです』
「はい?あいつは屋敷なんて持っているんですか?」
『はい。今は国を救った英雄として大きなお屋敷を構えるほどの貴族になられました』
嘘だろ、あいつが貴族に?
「分かりました、屋敷に行きましょう。……で、なんであなた以外誰もいないんですか?」
そう、この人の周りには誰もいなかったのだ。
この人をここまで連れてきた馬車はいったいどこにあるんだ?
『ああ、私は王都からテレポートでここに送ってもらいました』
「……え?テレポートって……、帰りはどうするつもりなんですか?」
『あなた様のお仲間がテレポートを使えるはずだから、それで送ってもらえと言われております』
マジかよ、あいつアロマのことも知っているのか!?
たしか、アロマはあいつとパーティを解散した後に創ったはずだから、あいつがアロマの存在を知っているわけがないんだけどな……?
だが、もし本当にあいつが王都にいるのなら是非とも会いたい。
……よし。
「アロマ!テレポートだ!もう一度王都に行くぞ!」
このとき、俺は知らなかった。
このとき、俺が王都に行くことを決めたせいで、俺は新たな厄介ごとに巻き込まれるということを。
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