第93話 大切な人

楽しかった高校生活が終わって早一年半年……

俺は警察官になるために公務員の専門学校に入学した。

学校生活は楽しく、とても充実していた。

あいつら、元気かな……


ふと、春樹たちのことが頭に浮かぶ。

春樹と坂石さんは同じ大学に通っており、なんと同棲までしている。

同棲をすると聞いた時はほんとびっくりした……

どちらの両親も反対せず、むしろ勧めたんだとか……

まあ、あの2人ならうまくやってんだろーな


そんなことを思い、俺は普段あまり着ないようなオシャレ?な服を着る。

なぜかと言うと、今日はある人と遊びに行くからだ。

二ヶ月前、学校の友達の紹介で出会った中野咲なかのさきさん。

趣味などが合い、連絡をとる回数は増えていった。

いつしか俺は中野さんに対して、恋心を抱いていた。

そして今日、告白する。


人を好きになるのは高校一年生以来な気がする。

高校の間は、春樹達と一緒にいるだけで楽しくて、後半の方は彼女が欲しいとは思ってなかった。

でも、高校を卒業して、あいつらと離れて……

俺もあいつらみたいに、かけがえのない大切な人が欲しいなと思った。

彼女ができたら、世界が華やかになる。

あの世界を久しぶりに見たくなった。

そう思った時に出会ったのが中野さんだった……


荷物のチェックを終え、俺は家のドアを開ける。


「よしっ!」


頬を軽く叩き、気合を入れて集合場所に向かって行った。



集合場所に早めに着いた俺は、ポケットからスマホを取り出し、今日のプランをざっと確認していた。

そして、決めていた時間の5分前になった頃、遠くから手を振って近づいて来る女性の姿が目に入った。


「相田く〜ん!待った?」

「やっほー中野さん。俺もさっききたとこ」

「良かった!じゃあ、行こ!」

「うん!」


それから時間でいえば長いが、感覚的にはとても短い時間を中野さんと過ごした。

俺は一緒に歩く時間などに、中野さんの横顔に見惚れていた。


カフェでお茶をしようと店に入り、席につく。

注文しようと店員を呼んだ。


「お待たせいたしました。ご注文はお決まりでしょうか?」

「コーヒーを二つと、このパンケーキで」

「かしこまりました。休日はデートデーということで、カップルの方は小さなケーキが一つ付いて来るのですがいかがでしょうか」

「へっ?!」


思わず変な声が出てしまう。

お、俺と、中野さんが……カ、カップル……

まあ、男女が2人でいたらそう見えてもおかしくないのかもな……

中野さんの方を見ると顔を赤くし俯いていた。

こ、これはどういう気持ちなんだ……


「お客様?大丈夫でしょうか?」

「あ、はい……あ、あの……僕たちまだ付き合ってないんですよ……」

「そうでしたか……頑張ってくださいね!」


耳に顔を近づけ、小声でそう言って店員は厨房に向かった。

あれ?俺なんて言った?

ま、まだ……

自分の言った言葉が理解でき、心の中で叫んだ


何言ってんだよ俺ー!!


中野さんをチラリと見る。

すると、さっきよりも顔を赤くし俯いている。

赤くなってるってことは……

いやいや、勘違いするな俺


「あ、その……中野さん?」

「な、なに?」

「いや、さっきの言葉は忘れて欲しいっていうか……へ、変な意味じゃないからね?」

「う、うん……」

「さ、さっきからずっと俯いてどうしたの」

「べ、別に……」


そこからなんだか気まずい空気のまま、パンケーキを食べた……


電車の席に乗る。

カフェの時ほどではないが、まだ少し気まずい感があるというかなんというか……

会話をするのだが、いつものように続かない……


そんな中、俺は決戦の地へと向かっていた。


夕日が輝いてきた頃、俺は中野さんを海に連れてきた。

波打つ音が辺りにじんわりと広がる……


「綺麗だね」

「そうだね……」


微笑む中野さんを見て、俺は腹をくくる。

目を閉じ、深呼吸をする。


「中野さん」

「は、はい!」

「あなたとこれからいろんな思い出を作っていきたいです……好きです。俺と付き合ってください」

「はい!」


そう言って彼女は俺に抱きついてきた。


「私も好き……よろしくね」

「よろしく……」


腕を背中の方に回し、抱きしめる。



こうして、俺にもかけがえのない大切の人が出来たのだった。




〜あとがき〜

読んでいただきありがとうございます!

今回は駿介のお話でした。

次回はみんな集合します!

終わりまであと2話。

よろしくお願いします!

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