第92話 それぞれの道

一年半後……




ジリリリリッ!


いつも通り目覚ましが大きな音を立てて鳴っている。

俺は目を瞑ったまま手探りで時計のボタンを押し、音を止める。

そして、ゆっくりと目を開けていく……

外はまだ薄暗い。

ゆっくりと体を起こし、リビングに向かう。

水を飲み、洗面所に行き歯を磨く。

そしてトイレに行って部屋に戻る。

これが俺のルーティンだ。


服を着替え、走りに行く。

上ってきた朝日に照らされる満開の桜を眺めながら心地良いペースで走った。


三十分ほど走り、家に戻る。

軽くシャワーを浴び、リビングに戻ると朝食の準備がされていた。


「おはよう」

「おはよう春樹」

「おはようお兄ちゃん」

「春樹おはよう」


すでにみんな座っていて、俺待ちだったようだ。

急いで席に座る。


「「「「いただきます」」」」


いつものように他愛のない話をし、楽しい時間を過ごした。

歯磨きを済ませ、部屋に戻る。

そしてクローゼットから制服を取り出した。


「今日で最後か……」


三年間お世話になった制服に感謝し、着替え始める。

荷物を手に取り、玄関に行く。


「後で行くからね〜」

「おう!行ってきます!」

「行ってらっしゃい」


扉を開けると、そこには秋大と楓がいた。


「「おはよう」」

「おはよ」

「じゃ、最後の学校行くか〜!」

「おうっ!」


学校に行く途中に七菜美と駿介と合流し、いつもの5人で学校に向かった。


もう卒業か……

みんなと話している時、ふとそう思う。

俺は、驚くことに七菜美と志望校が被っていた。

そして無事俺たちは合格し、もうすぐ同じ大学に入学する。

秋大と楓は違う大学で、秋大は割と遠くの学校に入学する。

遠距離になるけど、あの2人なら心配なさそうだな……

駿介は近くの専門大学に入学する。

そして、藤田さんは無事志望校に合格し、夢に一歩近づいていった。


みんな、それぞれの道に行くんだな……


「おーい、春樹?」

「ん?どうした?」

「いや、ボーッとしてたからどうしたのかなーって」

「その……もう卒業なんだって思ってな……」

「なんかあっという間だったね……」

「いろんなことがあったな……」


「ちょっとそこの2人早く〜」

「朝からいちゃついてんじゃねー」

「はいはい。今行くよ」



無事、卒業式が終わり、最後のホームルームも終わった。

下駄箱前で、みんなで写真を撮る。

その時、後輩たちが駆け寄ってきた。


「今井先輩、相田先輩、卒業おめでとうございます。今までありがとうございました!!」

「「「「「ありがとうございました!!」」」」」


そう言って色紙のようなものが入っている紙袋を、俺と駿介に手渡してくれた。


「ありがとな。頑張れよ!」

「ハイっ!」

「ゔゔゔゔ……」

「いや、泣きすぎだろ」

「だって……だってよぉ……」


急に号泣する駿介を見てみんなから笑いが出る。

楽しい部活だったな……


ほとんどの人と写真を撮り終えた。

家に帰っていく人もちらほら出てきた。


「俺たちもそろそろ帰るか」

「ああ……」


5人で集合して、家に向かって歩を進める。

駿介はいまだに涙をポロポロこぼしている。


「いい加減泣き止めよ〜」

「そうだよ〜一生の別れじゃないんだからさっ!」

「そうだな……たまにはこの5人でどっか遊びに行こうぜ!」

「おう!」


そう言って5人拳をコツンとぶつける。

そして、それぞれ別の道を歩いていく。

俺は七菜美を家まで送った。


「本当にいろいろあった三年間だったね」

「ああ……」

「春樹との再会から始まり、今はこうしてお付き合いできてる……ありがとね、春樹」

「お礼を言うのはこっちの方だよ。ありがと、七菜美。これからもよろしくな」


入学し、七菜美と再会し、駿介と友達になって、七菜美の彼氏になって……

数えきれないほどの思い出がこの三年間でできた。

この思い出は、これからも決して忘れないだろう。

そして、俺は七菜美と新しい思い出を作っていくんだろうな……


そんなことを思い、空を見上げる。

俺の人生一度の高校生活は、幕を閉じた。




〜あとがき〜

読んでいただきありがとうございました!

いきなり卒業まで行ってしまってすみません……

理由につきましては、最後の後書きにて書かせていただきます。

物語は、あと3話か4話で終わりになります。

最後までよろしくおねがいします!

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