第94話 集合

ピピピピッ!ピピピピッ!

スマホのアラームが俺を夢の世界から現実に引き戻す。

半分しか開かない目でアラームを止め、上半身をむくりと起き上がらせる。

もう7時か……

隣では、七菜美が可愛い寝顔のままスースーと寝息を立てている。

そんな彼女を少し見つめる。


七菜美と同棲して早3年。

生活費は2人がバイトをして、やりくりしている。

家事などは分担して、効率よく行っていた。

バイトで帰りが遅くなった日などは、帰ったら七菜美が玄関で待っていて迎えてくれる。

愛しの人が帰ったら迎えてくれる。

そんな日々がとても幸せだ。


そして今日は、久しぶりに5人揃う。

いや、今日集まるのは6人か……

駿介が俺たちに彼女を紹介したいと、今日一緒に来るらしい。

どんな子なのか少し楽しみだな……


集まるのはお昼などで、早めに朝食を取らないといけない。

俺は七菜美の肩をゆっくり揺らす。


「今日はみんなで集まるだろー起きろ〜」

「もう少し……」


そう言って布団に再び戻りそうになる七菜美の腕を引っ張って上半身を起こす。


「おはよう七菜美」

「おはよう……」


七菜美はそう言って目をゆっくりと開ける。

まだ眠そうだ。

まあ、昨日バイトだったし疲れてるよな……


「朝ご飯作るから準備とかしてて」

「ありがとう〜」


寝ぼけているのか、そう言って抱きついてきた。

俺も負けじと抱きしめ返す。

七菜美の暖かさが感じられる……

充電完了!

七菜美の頭を撫で、俺はキッチンに向かった。



そしてお昼の時間になった。

俺と七菜美はみんなよりも一足先に集合場所についた。

俺たちが着いて数分経って、秋大と楓がきた。


「久しぶり〜」

「楓ちゃ〜ん!」

「よう!」

「元気だったか」

「ああ!そっも相変わらずみたいだな」

「ああ、元気にやってるよ」


かなり久しぶりに会ったので、とても嬉しかった。

まあ、元気そうで何よりだな……


「あとは駿介らだけだな」

「そうだな……どんな彼女か知ってる?」

「いや、彼女ができたしか言ってこなかったからわかんねーな」

「なんか楽しみだな」

「そうだな!」


集合時間5分前を切った頃に、手を振りながら走って来る2人が見えた。


「おっ!来たきた」


「お待たせ〜久しぶりだな〜!」

「久しぶり!元気そうだな」

「おう!」

「隣の方が……」

「駿介とお付き合いさせていただいてます。中野咲です!」

「駿介の親友の今井春樹です」

「村上秋大です」

「九条楓です」


それぞれ順に名前を言っていったのだが、七菜美だけまだ言っていない。

どうしたのかと七菜美の顔を見ると、とても驚いた顔をしていた。


「七菜美?」

「さ、咲……ちゃん?」

「あれ……も、もしかして七菜美ちゃん?!」

「うん!咲ちゃんほんと久しぶり!!」


なにが何か俺たち4人は全く分からなかった。


その後話を聞くと、どうやら七菜美と中野さんは昔家が隣で毎日のように遊んでいたらしい。

でも、幼稚園を卒園するとともに、引っ越して2人はそれっきり会えなかったらしい。

こんな再会もあるもんなんだな……


そこからはみんなで楽しく話しながら昼食をとった。

中野さんはとても人柄が良く、なんだか安心した。


「ちょっとお手洗い……」

「あ、俺も……」


俺がトイレに行くと、駿介がついてきた。

よくこうしてトイレに行ったよな〜

なんだかおかしくなり、笑みが溢れる。


「なに笑ってんだよ〜」

「いや、なんか懐かしいな〜って……仕事はどうだ?」

「上手くやってるよ」

「良かった……いい彼女だな」

「そうだろ?……春樹の方はどうなんだよ?」

「どうって?」

「結婚だよ。もう同棲もしてるし、考えてるんだろ?」

「まあ、そのつもりで同棲してるし……でもまだいつとかは全然考えてないな……」

「そっか……秋大は卒業して就職したらプロポーズするつもりなんだろ?」

「らしいな〜」


こういう話をすると、自分たちはもう大人になってってるんだな……

そんなことを実感する。


「なんか、俺たち大人になってってんだな……」

「俺も今それ思った」

「さすが春樹!」


駿介とこうして直接会って笑うのもほんと久しぶりだな……


楽しい時間とは過ぎていくのが早く、気づけば辺りは暗くなっていた。

もう別れか……

悲しさがこみ上げてくる……


「中野さん、駿介をよろしくお願いします」

「はい!……って言ってもいつも私が助けてもらってばっかりなんですけどね」


中野さんはそう言って微笑んだ。

この人が駿介の彼女で良かったな……


「じゃあ、また会おうぜ!」

「おう!」


みんなで拳をコツンとぶつけ、別れていく。


結婚か……

そんなことを考えながら七菜美と手を結ぶ。


「どうしたの?悩み事?」

「なんでもねーよ。帰ろうぜ!」

「うん!」


そうして俺と七菜美は家に帰っていく。

月明かりが、俺たちの明るい未来を照らしている。

なんだかそんな気がした。




〜あとがき〜

読んでいただきありがとうございます!

ついに次回最終話!!

ラストの1話、ぜひ読んでください!

よろしくお願いします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る