第89話 俺なりの決意

「明日から夏休みだね〜」

「そうだな〜てか宿題多くね……」

「本当それ……多すぎだよね……」


今日で一学期が終わり、明日から夏休みのスタートだ。

今日は久しぶりに七菜美と一緒に帰っている。

久しぶりと言っても、3日ぶりなのだが……

七菜美と仲直りしてからは、毎日が幸せだ。

前よりも、楽しい日々が送れていると思う。


隣に歩く七菜美をじっと見つめる。

その俺に気づき、七菜美は微笑む。


「どうしたのっ?」

「なんでもねーよ」


すると今度は七菜美が俺の方をじっと見てきた。


「どうした?なんか付いてるか?」

「なんでもねーよ」

「パクリやがって〜」

「逃げろ〜」


俺は七菜美を後ろからゆっくりと追いかける。

その時、カーブミラー越しに人が2人歩いてきたのが見えた。

七菜美は気付いていないようで、このままではぶつかってしまう……

俺は一気に加速し、七菜美の手を引く。


「わっ!」

「きゃっ!」


歩いていた人もこちらに気付いておらず、驚いていた。

間一髪、ぶつからずにすんだ。


「すみません。お怪我はありませんか?」

「だいじょぶだよ〜気を付けて〜」


そう言ってテンションの高そうなギャルっぽい人2人は去っていった。

怪我がないならいいか……


「さっきの人かっこよかったわ〜うちタイプ〜」

「確かに〜紳士感出てて良かったね〜」

「連絡先聞く?」

「いや、彼女いたし〜」

「残念だわ〜」

「しゃーなししゃーなし〜!」


後ろのギャルからはそんな会話が聞こえた。

胸元にいる七菜美を見ると、ものすごく睨んでいた。

こんな顔初めて見たな……

思わず笑いが溢れる。


「七菜美しか興味ねーよ……」


そう呟いて七菜美の頭を撫でる。

七菜美は突然ハッと我に帰り、俺の方を見た。


「助けてくれてありがとう」

「全く。気を付けろよ〜」

「はい……」

「じゃ、帰ろうぜ」


そうして俺たちは再び足を進めた。

そして俺は、七菜美に話を切り出す。


「七菜美」

「ん?なーに?」

「近々さ、七菜美の家に行ってもいいか?」

「えっ?!……」


なぜだか顔を赤くした。

どうしたんだろうと考えると、なんとなくその理由がわかった。


「あ、いや、そう言うことじゃなくてだな……その……ご両親に挨拶したいんだ」

「あっ、そう言うことね……」

「その……お母さんとは少し話したけどお父さんとはまだ挨拶もしてないからさ……」

「お、お父さんか……」

「だから、両親のいる日に行けたらなと思いまして……」

「オッケー!予定聞いてみるね!」


七菜美はとても嬉しそうにそう言った。


「ありがとう……なんでそんなに嬉しそうなんだ?」

「なんか、真剣に考えてくれてるんだな〜って思ってさ〜」

「当たり前だろ。俺の1番大切な人なんだから」

「ま、またそう言うこと言う〜」


顔を赤くし、顔を肩にくっつけてきた。


「私の1番大切な人も春樹だよ……」

「ありがと。大好き……」


恥ずかしそうに、微笑む七菜美が愛おしくてたまらない。

この笑顔は一生俺が守る。

それをお父さんに伝えるんだ。

そう決意して唇を重ねた。

この幸せな日々がずっと続きますように。

その願いを込めて……



〜あとがき〜

読んでいただきありがとうございます!

次回はご挨拶!

お楽しみに!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る