第88話 戻った日々

家に帰っていく春樹の背中を見送る。

仲直り出来て良かった……

心からホッとした。

また、春樹と一緒にいられる。

そう思っただけで笑顔が溢れる。


春樹の涙を初めて見た。

私はいつも春樹に守られ、支えられていた。

でも今回、初めて春樹の弱さを見た気がする。

守りたい、守らなくてはと思った。

互いに支え合っていくのが恋人なんだ。

そう思った……


春樹の背中が見えなくなり、家に入る。


「ただいま……」

「おい七菜美!どこ行ってたん……」

「お父さん、後で話すから部屋に戻ってください」


扉を開けるといきなりお父さんがいたので驚いた。

お母さんにそう言われると、お父さんは渋々部屋に戻って行った。


「ただいま……何も言わずに出てってごめんなさい……」

「次からは一言言うようにね。……それより、春樹君とは仲直り出来たんでしょ?」

「うん」

「色々とお疲れ様……」


そう言ってお母さんは私を抱きしめた。

お母さんの温もりに、なんだかホッとした。


「お父さんには私が言っとくから、七菜美は早く寝たら?明日学校でしょ?」

「うん!」


自分の部屋に向かう。

とても足取りが軽く、心も弾んでいた。


その日の夜は、久しぶりにゆっくり寝られた気がした。



***

「ジリリリリ!」


目覚ましが鳴った瞬間目が覚めた。

ボタンを押して、音を止める。

いつもは二度寝をしたりするのだが、今日は目がパッチリと開いた。

顔を洗い、歯を磨いて部屋に戻る。

今日は学校だ。

俺の心は朝から弾んでいた。

こんなに学校に行きたいと思ったのは初めてかもしれない。

学校の準備を済ませ、リビングに向かう。

ご飯の準備でもすっかな〜


リビングに行くと、母さんが朝ごはんを作っていた。


「おはよう」

「おはよう春樹。なんだか珍しいわね」

「なんだか朝スッキリ起きれてな〜」

「なんかテンション高くて気持ち悪いわ〜」

「うるせー」

「まあ、元気になって良かったわ……」

「心配かけました」

「いいのよ……これで一つ壁を乗り越えたのかしらね……」

「なんて?」

「なんでもないわ。ご飯持ってって〜」

「はいよ〜」


それから家族みんなでご飯を食べた。

彩美にテンション高くて気持ち悪いと言われたのは察してくれ……


朝練を終え、着替えて下駄箱に向かう。

七菜美に挨拶だけしに教室に行こっかな……

そう思っていると、後ろから誰かに肩を叩かれた。

秋大か?そう思い後ろを振り向く。


「おはよう春樹」

「おはよう七菜美」


目の前には愛しの人が立っていた。

彼女を見ただけで、笑顔になる。

そしてそれは、七菜美も同じようだった。

靴を履き替え、教室に向かう。


「今日久しぶりに5人で昼食べないか?みんなには迷惑かけちゃったし……」

「そうだね!楓ちゃんたちに言っとくから春樹は相田くんによろしく!」

「おう!じゃあまた後でな!」

「うん!」


そう言ってお互いの教室に入っていった。


午前の授業を終え、昼休憩になった。

いつもの5人で食堂に集まる。

なんかこの5人で食べるの久しぶりだな……

みんなが箸を持つ前に、俺と七菜美は立ち上がる。


「「ご迷惑おかけしました」」


3人は、突然の謝罪に驚いたような様子だった。


「いいってことよ〜いつもの2人に戻って良かったよ〜」

「いや、前よりもラブラブじゃないか?」

「それはそうかもね〜」


今までの雰囲気で、なんだかホッとした。


「はいはい。じゃあ、食べようか」

「そうだな〜」

「「「「「いただきます!」」」」」


それからは他愛のない話をし、楽しい時間を過ごした。



〜あとがき〜

読んでいただきありがとうございます!

次回は春樹が動き出します!

お楽しみに!

よろしくお願いします!

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