第85話 春樹と親友
七菜美と話さなくなってから3週間が経った。
1日1日がとても長く感じた。
毎日がつまらない……
俺が謝ればもしかしたら仲直りできるのかもしれない。
だけど、もし七菜美が別れようって言ったら……
そう考えただけで怖くて前に進めない。
七菜美は最近移動教室ですれ違う時など、俺の方を見ている気がするがどういう気持ちなのかは全く分からない……
なんだか腹が立ち机に顔をくっつける。
そんな時、教室の外で秋大が俺を呼んでいた。
なんだろうかと思いつつ教室を出る。
「どうしたんだ?」
「ちょっといいか?」
「ああ……」
秋大は人っけの少ない裏庭に向かって行ったので俺はついて行った。
「で、どうしたんだよ」
「春樹、坂石さんと喧嘩したんだろ」
「ああ……」
「自分に悪いとこがあるなら謝ったほうがいいぞ……このまま過ごしても溝が深まるだけだろ?」
「……」
「謝りにくい気持ちは分かるけどさ、このままじゃ……」
最近常にイライラしていた感はあった。
七菜美と喧嘩したからか、七菜美と話せてないからか、それはいまいち分からない。
今の秋大の言葉は、俺の苛立ちで燃えている炎に油を注ぐようなものだった。
「お前に、お前に何が分かるんだよ!まるで俺の気持ちを分かったかのように……俺の気持ちの何も分かんないくせに……何様なんだよ!」
言葉を全部吐き出し、頭に上った血が引いていく感じがした。
同時に、自分の言ったこともはっきり理解した。
俺はまた同じような誤ちをしてしまった……
「その……ごめん……」
俺はそう呟いて走ってその場から逃げる。
愛する人を傷つけ、俺のことを思ってくれている親友も傷つけ……
俺はどうしよもないクソ野郎だ……
勢い良く回っていた足は次第に動きが遅くなり、止まっていた。
その場に崩れ落ちる。
「クソッ!」
勢い良く地面を叩く。
後悔、悲しみ、苛立ち……
いろんな感情が溢れ出る。
俺はしばらく座り込み、その日は学校を早退した。
次の日、俺は秋大と会っても目を合わせられなかった。
最近ほんとに自分が嫌になる。
昼休憩、1人で教室で昼食と摂ろうしていた時、
「春樹〜一緒に飯食わね?」
「え?ああ……」
今度は駿介にまで何か言ってしまうのではないか、そう思った。
今の俺は俺を信じれない。
何を言うか分からない自分が怖かった。
駿介はコンビニの袋を持って立ち上がった。
「どこいくんだ?」
「まーついて来いって!」
そう言って教室を出る駿介を追いかけるように、俺も袋を持って教室を出た。
駿介は、階段をどんどん上がっていく。
もしかして……
俺の予想通り、屋上についた。
「屋上ってダメじゃなかったっけ?」
「バレなきゃ大丈夫だって!」
そう言って鎖を掻い潜り、扉を開く。
俺も同様にして扉の外に出た。
「俺さ、嫌なこととか悩んでることがあったらここに来て気分転換してんだよ」
「よくバレなかったな」
「基本先生来ないしバレねーよ!」
白い歯を見せながらそう言った。
ほんとに大丈夫かよ……
フッと笑いが溢れた。
「やっと笑った」
駿介はそう笑顔で呟いた。
そう言えば、最近俺は笑っていなかったような気がする……
駿介は袋からおにぎりを出し、こちらを向いた。
「俺さ、経験ないから春樹が今どんだけ苦しいとか分かんねー。だけどさ、春樹の中ではどうすれば良いのか、答えはもう出てんじゃないのか?」
「……」
「これは春樹と坂石さんの問題だからどうこうしろとかは俺が言う権利はないと思う……だけど、この先後悔のないようにした方が俺はいいと思うぜ!」
なぜだろう、駿介の言葉は暖かく、胸に染み込むようだった。
俺がすべきこと……
それは随分前から分かっている。
あとは、それをする勇気が俺にあれば……
「まあ、自分を責めすぎるなよ。自分を責めたっていいことないんだからさ」
「ああ……ありがとう……」
「よ〜し、おっ!そのサンドウィッチ美味そうだな!一口くれよ〜」
「はいはい」
そこからは何気のない会話をし、笑顔も久々にたくさん出てきた気がする。
〜あとがき〜
読んでいただきありがとうございます!
終盤の話ははずっと前から考えていたので、いつもよりスラスラ書けてとても楽しいです!
タイピングのスピードにも成長を感じれて嬉しいです!
さて、この先春樹は、七菜美はどうしていくのか……
次回もお楽しみに!
よろしくお願いします!
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