第35話 勝負の行方

ついにテストが返ってきた。

合計点は過去1番良い。

数学はクラスで1番だったが、正直俺にとっては坂石さんに合計点で勝てたかが大事なのでどうでもいい。


放課後、部活がないのでいつものように図書室に行く。

今日はここで互いに得点を発表する。

昼に秋大達に聞かれたが、坂石さんと俺はまあまあ良かったと具体的な点数は出さずにしておいた。

何だか緊張する。

勝てばデートしてもらう、負けたら名前で呼ぶ。

あれ?メリットしかなくね?

そんな事を考えていると、後ろのドアがガラガラと開いた。


「お待たせ今井君。自信はどうかな?」

「あるっちゃあるね」


そう言ってテストの点数の書かれた紙をカバンから出す。

「せーの!」

と言ってお互いテーブルに置く。

結果は……

坂石さんの出した紙に目を走らす。

な、なに!?

わずか1点負けてしまった……


「1点差だね!危なかった〜」

「あと少しだった……」


あの漢字ミスさえ無ければ……


「じゃ、じゃあ約束は守って貰うよ?」

「お、おう……じゃ、じゃあ呼ぶね……」

「う、うん……」

「な、な、なな……」


何故だ!

家でもし付き合えた時にと日々練習をしていたのに!

本人を前にすると言えない……

今井春樹、そんなんじゃいつまでもチキンだぞ!勇気をだせ!


「な、七菜美」

「は、はい……」


ヤバい、恥ずかしすぎる。

羞恥で頭がおかしくなりそうだ。

心臓の音が耳まで響く。

顔を真っ赤にした七菜美が恥ずかしそうに喋る


「あ、あのさ……わ、私も名前で呼んでいいかな?」

「お、おう……」

「は、は、春樹……」

「おう……」


ヤバい、何がヤバいのかは分からないがヤバい

顔がこれでもかと言うぐらい赤くなるのが分かる。

坂石さんは男子友達を名前呼びするのに憧れていたのかな……

しかしこの調子だとまとも学校で話せそうにない

我ながら情けないと思うが、ある提案をしてみる


「あ、あのさ、良ければ名前呼びはとりあえず2人きりの時にしない?その……恥ずかしくてさ……」

「そ、そうだね。慣れるまでは2人きりの時だけにしよっか」


とりあえず納得してもらって良かった……

テストが終わったばっかりだし今日くらいは休みたいな……

そう思っていたら、


「今日は帰ろっか。勉強疲れたし!」

「同じこと思ってたよ!じゃあ、帰ろっか。……そ、そのさ、今日時間早いし良かったら一緒に帰らない?」

「うん!」


勇気を出して良かった。

こうして俺は七菜美の家まで一緒に帰ることになった。


帰りはテストの話だったり、部活の先輩の話だったりいろんな話ができた。

少しの時間だったが、最高に幸せだった。

そして、いつの間にか七菜美の家の前にいた。


「あ、じゃあ、送ってくれてありがとね!バイバイ、は、春樹!」

「おう!バイバイ、な、七菜美!」


何だかぎこちない挨拶を告げ、俺は家に帰った




**

春樹に家まで送ってもらった私は、彼の背中が見えなくなるまで眺めていた。

それにしても、七菜美って呼んでくれた!

もうニヤニヤが止まらない。

幸せすぎて少し怖いくらいだ。

ほんとに勉強した甲斐があったと感じられた

「ただいま〜」

と家に入ると、今日は会社が昼までだった母がエプロンを着けてやってきた


「おかえり。テストはどうだっ……その顔は勝ったみたいね、おめでとう!」

「えへへ バレちゃった。ありがとう!」


私の母は小さい時からどんな相談にものってくれた。

入学式の後、春樹の事を話すと

「頑張りなさいよ!」

と言って応援してくれた。

母には、今回のテストの事も相談にのってもらっていた。

ちなみに父は親バカっぽくて、好きな人の話なんかしたらうるさくなるのが目に見えているため言っていない……


相変わらずテンションのおかしな私は、スキップしながら部屋に向かった。


夜ご飯など済ませ、気づけば10時を過ぎていた。

テストの疲れもあり、少し早いがベッドに入る


「春樹……大好き……」


そう独り言を呟き、深い眠りに入っていった。





~あとがき~

勝者は七菜美でしたね!


次は体育祭へと話は進んでいきます!

お楽しみに!

これからもよろしくお願いします!

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