第12話 ラッキーハンドタッチ

クラスに着き、坂石さんに挨拶をする。

まだドキドキはするが、挨拶なら割と平常心でできるようになった。

そして今日の俺はいつも以上にワクワクしていた。

お昼に4人でご飯を食べられるのも楽しみだ。

そして今日から部活動を体験できる!


俺がこの日をどんなに楽しみにしていた事か!

どうやら顔に出ていたらしく、坂石さんは不思議そうに話しかけてくれた。


「なんか凄い楽しそうだけどなんかあった?」

「な、なんで分かったの?」

「だってなんかニヤニヤしてるし」


くすくすと笑いながら、彼女はそう言った。

え?ニヤニヤしてる?

キモすぎかよ俺!

最悪な所を見せてしまったと思いつつも、何故楽しそうにしているかを彼女に話した。


「今日から部活動体験できるじゃん?それが凄く楽しみなんだよね〜」

「なるほどね!確か陸上部だったよね?」


俺は陸上部と言う事を自己紹介の時に話した。

それを覚えてくれているだけでとても幸せだった。


「そ、そうなんだよ。坂石さんはテニス部だったっよね?」

「そうだよ〜 私も今日から部活体験やってくよ!とっても楽しみだね!」


微笑みながら話す彼女に俺の目は釘付けになっていた。

先生の板書が再開されたので、再びノートをとる。

その時、坂石さんの消しゴムが落ちた。

拾おうと腰を丸め、消しゴムに手を伸ばす。

すると誰かの手に触れた。

そう、坂石さんの手だ。

一瞬何が起こっているのか理解できなかったが、坂石さんに触れていると理解した瞬間顔が真っ赤になり、心臓が飛び跳ねた。

慌てて手をどけ、謝罪する。


「ご、こめんね。」

「い、いやこっちこそごめんね」


彼女は顔を赤くしながらそう言った。

ごめんねと言われているが、俺からしたら嬉しい出来事だ。むしろありがとうと言いたい。

ラッキースケベがあるのなら、これはラッキーハンドタッチだな……


そこから何だか気まずい感じになり、お昼を迎えた。

秋大と楓が俺たちの席にやってくる。


「おーい お昼行くよ〜」


楓の呼びかけに答え、俺達は食堂に向かった。


「何があったんだよ」

「お前のニヤニヤにここまで人をムカつかせる力があったとはな……」

「悪い悪い。春樹の珍しい感じを見ちまうとついついなっちまうんだよな〜 で、何があった?」

「ラッキーハンドタッチが起きた。それだけだよ」


腹を抱えながら笑うもんなので、ケツに1発蹴りをかました。


そしていつも通りご飯を4人で食べ、雑談をしていた。


「村上君と楓ちゃんは何部に入る予定なの?」

「俺はバスケ部だな〜」

「私もバスケ部だね〜 七菜美ちゃんは?」

「私はテニス部だよ!」


今日は主に部活の話で盛り上がった。

ラッキーハンドタッチがあったせいか、俺はいつも以上に緊張していた……


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